ライヴパフォーマンスの先陣を切ったのはゲストの妄走族。若々しく勢いのあるステージングでいきなりキッズたちを圧倒すると、負けじとフロアも大爆発。なかでも鬼気迫るフリースタイルを披露したのは般若(ハンニャ)だ。「矢面に立つのはオンナコドモ/戦争なんてクソくらえ」。江戸っ子訛りに癖があり(そこが彼の魅力だ)、聴きとれたのはほんの一部だったということもあるが、それが米イラク攻撃に対するディスだということを理解するのにしばらくの時間を要した。
「俺たちは見てのとおりイケイケだけど、来年もこうやって遊んでいたいから戦争なんてクソくらえだ!」。良心ある反戦デモ参加者を偽善者と評するクソ・メディアは一つや二つじゃない。日本の右傾化が進むご時世に、妄走族のような真性の不良の口からこんなにも真っ当でリベラルな正論が聴けるとは!
続いて登場したUZIはいつも通りの男クサいパフォーマンスで客席のテンションを落とすことなく、BOY-KENは”F●CKブッシュ”のコール&レスポンスを仕掛け、会場は大合唱。客いじりの巧妙さを見せつけた。
そしてステージは本題に突入。DJ YAS、DJ AMEKEN、DJ MISSIEの3DJがえん突つオールスターズを呼び込むというスタイルに変わり、ステージの真ん中に据えられた煙突からはケムリがモクモク…。
トップはYOU THE ROCK★。ステージ最前部に飛び出し、被っていたハンチングを投げ飛ばす。今やすっかりTVスターとなった彼だが、いつもよりハーコーにきめたファッションで「EMCDAZ」を披露。自らの原点をしっかり提示すると同時に、彼の口からもPEACEなメッセージが発せられた。続いて収録曲と同じくSHINNOSK8、CHOKE SLEEPER…若手のパフォーマンスが続き、DELIとMACKA-CHINから成るチカチカ病院&MO、D.O。さらにTWIGY、G.K.MARYAN、GAMAといったベテラン勢も次々に収録曲を披露していった。
そして最後のゲスト、NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDで、ステージ前には観客が殺到! 彼らの人気の高さを再確認させられたが、S-WORD、MACKA-CHINの絡みなどの見所はあったものの、あくまで客演といった控えめな印象の短いステージだった。
一曲ずつ披露するというファンにとってはやや物足りない感があることは否めなかったが、RINO LATINA IIの余裕なステージの後、呼び込まれた雷による「カミナリ」「夜ジェット」でそのフラストレーションも吹き飛んだ。
再登場したTWIGYは全身黒づくめのモードファッションから白いフーディット・スタイルに衣装替えし、いつもよりアグレッシヴなラップを聴かせたのが印象的で、それがあくまでえん突つクルーの一員であるという初心声明のように思えた。
ラストの「証言」ではなんとDEV LARGE、ZEEBRAも登場し、オリジナルメンバーでのパフォーマンス! 当時の肌触りもそのままに日本語ヒップホップの金字塔がここに再現された。DJ YASの深海を思わせる深く淀んだ美ビートと覇気あるマイクリレーは圧巻だ。
「俺たちは世の中に不満があるときしか活動しないんだよ」。これはおそらく主催者の意図しないところであろうが、RINOのこの言葉がこのパーティの持つ意味を決定づけた。停滞・迷走する世相に対するヒップホップ側からの異議申し立てだ。
大ラスはMARY J. BLIGE「DANCE FOR ME」のトラックにのせてRINOの「はじける一夜」を全員でパフォームし、大団円。
なお、雷は新譜をリリースすることも決定! キングギドラ同様、今後のチャートにも波乱を巻き起こすことは必至だ。