──アルバム『Deep Calm』を作り終えた手ごたえは?
yuri:昨日(1/15)手元に来たんですよ。すごいタイトなスケジュールで録ったんで“あー、できたー!”って(笑)。(レコーディングの)後半けっこう辛くって、スケジュールもそうだし、毎日歌ってたんで喉とかも。そういうのいろいろ思い返して。
──アルバム全体のトータル・コンセプトはどの辺りでしょうか?
motsu:前のミニ・アルバム(『DECADANCE』)のテーマが“破壊と再生”だったので、その先にあるものを何か。なんて言うのかな……“move第二章!”みたいな。ずっとダンス・ミュージック主体でやってきたんですけど、前作からロックとのハイブリッドな世界に突入してきて。一昨年の12月にベスト(『move super tune -BEST SELECTIONS』)を出して、ダンス・ミュージックをやり終えた感があって、何していいのか分からなくなっちゃった。そんな中で去年のミニ・アルバムがあって、さらに高い山の頂上が見えて、そこに登ってみたくなった。そんなアルバムですかね。
──じゃあ、ロックということがひとつのキーワードに?
motsu:ロックというよりは、ロックとダンス・ミュージックのハイブリッドなものかな。ダンス・ミュージックをやってるころから、アンダーグラウンドでヒットしているものを取り入れたりしてて、それをポップなものに翻訳していくのが僕たちの使命だと思ってたんです。それで、ダンス・ミュージックを掘り尽くして、次は何かというときにロックと、そしてダンス・ミュージックの境目を取っ払いたいな、ってのが出てきて。海外だとリンプ・ビズキットとか、アンスラックスぐらいまで遡るのかな? ヒップホップとロックの融合みたいな試みが。そういうのがアメリカで大きくなるのを見ていて、“僕たちも日本でこういうのをやったらおもしろいんじゃないかな”って。
──サウンド面でオルガン、ストリングス、スクラッチ音などさまざまなエッセンスを取り入れていますが、逆にギター・オリエンテッドな方法論に限界を感じることはありますか?
motsu:うーん、木村氏(t-kimura)的にはどうなんだろうなぁ。限界を感じているというよりは、ギターを“がーん”と入れるとなんとなく様になるじゃないですか? それはそれで認識したうえで便利な道具として使っている。あの余力でストリングス・アレンジやオーケストレーションに力を注ぐってやり方なんじゃないですかね。けっこうグレゴリオっぽいのがあったり。
──ゴスっぽい曲もありますよね。
motsu:ゴスって彼(t-kimura)が若いころ通ってきた音楽なんで、すごくノリノリでやってましたよ。
yuri:あはは、そうそう(笑)。
──そうしたトラックの歌いやすさってどうですか?
yuri:今回yuriが歌うところは結構静かだったりして、motsuさんの激しいラップの部分とは違う感じで。それがあたしにはよかったかなぁ。一曲通して聴いてみるとドラマチックになるし。歌いやすかったですね。
──サウンド的にインダストリアルの影響を感じたのですが?
motsu:うん、僕もそうだし、彼(t-kimura)が昔やっていたバンドもそういう所を通って来ていて。だから、ルーツを恥も外聞もなく出した音楽っていうのかな。今までのダンス・ミュージックでは、技法の部分でたとえばトランスだったり、新しい旬のものを使っていく。でも、ようやく最近、もう何年も前の、自分の本当に好きな音楽ってのを、スパイスとして使えている状況です。
──以前木村さんの方からポップさがmoveとしての重要なテーマとの発言がありましたが、moveの考えるポップさとはどの辺でしょうか?
motsu:やっぱりメロディかなぁ。あとは詩の世界もそうですけど。詩とメロディは普遍のものだと思うので。ただ、木村氏は自分でメロディ書いてるから言いにくいかもしれないけど(笑)。
──今回のアルバムではかなり自分たちのやりたい音楽をやってるなという感じがしたのですが?
motsu:それはそうだよねぇ……。詩とかもあんまりyuriちゃんのダメ出しが出なくなったし。
yuri:詩がねぇ、ダンス・ミュージックやってるときから結構変わって。シンプルで、割とポジティヴだったりして。普通に共感できるものが多かったですね。
──前はダメ出しが多かったんですか?
yuri:ふふ(笑)。この言葉、あたしは使わないでしょう……ってのがちょっと。
motsu:より普遍的になっていった感じかな。あとは戦争についての歌が多かったりするんだけど、普段感じていることが歌えている。J-POPのカテゴリに置いたときに、“戦争は重いから止めようかな”みたいな自主規制なく、やれているっていう。
──自分たちのやりたいことをやることによって、以前のファンに違和感があったり、分かりにくいものになる心配はありませんでしたか?
yuri:それはあった。今回とくにガラっと変わったことで……賛否両論なんですけど、まあでもそれは仕方ないよいねぇ。
──曲作りやレコーディングの部分で以前と変わった部分というのは?
motsu:それが実はあんまりないんですよ。実際、ギターが入ったりとか、そういうことぐらいですかね。昔からうちはインターネットすごい使ってるんですよ。ストレージサービスとかあるじゃないですか? あれに歌った順番にどんどん上げて行くんですよ。木村スタジオ、motsuスタジオ、yuriスタジオから。そこに行くと、完パケできた表みたいな感じで工程が分かる。普通にディレクターが仕切るよりすごいやりやすくて。効率いいですよね。
──スタジオでみんなで顔を合わせて、というのは?
motsu:ときどきあるよね。
yuri:ときどきですね。木村さんとはまずほとんどない。motsuさんはありますね。motsuさんが詩を書いているので。英語の発音聞いたり。
──じゃあ、即興でジャムるなんてのは……。
motsu:ジャムらないバンドですね(笑)。ライヴでは相当ジャムってるけど。
──そのライヴですが、昨年(2003年)行なったツアーの手ごたえはいかがでしか?
motsu:よかったよねぇ、すごく。
yuri:うん! ライヴ・ハウスであんなにやったの初めてだったし。全然違いましたね、クラブ(でのライヴ)とは。
motsu:うん、ダンス・ミュージックと決定的に違うなと思いましたね。そこが。いい悪いじゃなくて、クラブでダンス・ミュージックをやると、一番大事なのってDJなんですよ。パフォーマンスじゃなくて。で、踊っている人にDJがぽんぽん曲を投げていく。ロックとかライヴ・ハウスでは、観客とパフォーマーがガチンコで1対1になる。そこが違うと思いましたね。ロック・バンドの意味っていうのがやっと分かった気がする(笑)。やりやすいし、ノリやすいし、踊りやすい。
──では今後どんなライヴをやって行きたいですか?
motsu:そうですね。前回関東中心だったので、南の方にも行ってみたいし。あとは、ライヴだとみんな前に、前にって行くので。バック・バンドのみんなも、木村氏も。だから前に出たい(笑)。
──moveとして今後目指す音楽性というのはありますか?
motsu:よりハイブリッドな、クロス・オーバーなものをやって行きたいです。よりポップで、よりアンダーグラウンドな。