『Cake & Pie』 UNIVERSAL INTERNATIONAL 2001年11月21日発売 UICA-2004 2,548(tax in) 1 The Way It Really Is 2 Bring Me Up 3 Underdog 4 Everyday 5 Someone You Should Know 6 Drops Me Down 7 We Could Still Belong Together 8 Kick Start 9 You Don't Know Me 10 Payback 11 Too Fast Driving 12 She's Falling Apart 13 Look Me In The Eye(ボーナス・トラック) | 『Firecracker』 UNIVERSAL INTERNATIONAL 2001年11月21日発売(オリジナル1997年発売) UICA-3245 1,835(tax in) 1 I Do 2 Falling In Love 3 Truthfully 4 Let's Forget About It 5 How 6 Furious Rose 7 Wishing Heart 8 Dance With The Angels 9 Jake 10 This 11 Split Second 12 Firecracker 13 Guessing Game (ボーナス・トラック) 14 Eno Ambient (ボーナス・トラック) 『Tails』 UNIVERSAL INTERNATIONAL 2001年11月21日発売(オリジナル1995年発売) UICY-3244 1,835(tax in) 1 It's Over 2 Snow Day 3 Taffy 4 When All The Stars Were Falling 5 Do You Sleep? 6 Hurricane 7 Rose-Colored Times 8 Sandalwood - Acoustic 9 Alone 10 Waiting For Wednesday 11 Lisa Listen 12 Garden Of Delights 13 Stay 14 Sandalwood - Band(ボーナストラック) | | 美しい歌姫にインタヴューし、彼女の音楽活動の原動力について話を聞くことのできる私は、確かに幸せ者なのだろう。私が心優しく機知に富んだシンガー・ソングライター、Lisa Loebといくばくかの時間を共有できたのは、彼女の長年の恋人がDweezil Zappa(故Frank Zappaを父に持つギタリスト)であり、私も10年以上前からZappaファミリーの一員だったからだ。最近、Gail Zappa(故Frank Zappaの妻)が素敵なバースデイ・パーティを開いたときにも、Lisaと私はマリブ・ビーチをずっと散歩しながら、女の子の話題に話を咲かせたり、昔話に耽ることができた。 3rdアルバム『Cake And Pie』でLisaは多彩なかたちの自己実現を探求しているが、主として中心になっているのは、重要な相手との関係を通じて自分が何者なのか気付くことの、悩ましくもロマンティックな側面に関するものである。つまり重要なのは、すべてをグルーヴィな感覚で維持したいと思うのならば、自分自身に忠実でいなくてはならないということなのだ。 「何も押し付けたくないと思うような関係まではたどりつけるの。でも物事には変化とか前進、発展が必要なのよ」と、浜辺に打ち寄せる波の音を背景にLisaは言う。「“Kickstart”という曲には追悼のムードがあるわね。だって一方が前に進むことを話しているのだから」 このスウィートで快活なチューン(私の個人的なお気に入りの1曲)は、パンチを緩める気配もない。“カウチに腰掛けてテレビを見ている私たち/電話が鳴ることもなく、完璧なシチュエーション/こんなままごと遊びはもう退屈なのよ/毎日毎日同じことの繰り返し、昨日も、今日も、そして明日も/私たちはやり直す必要があるわ/素早い解決が求められているの/次のステップに進まなくちゃ/2人が本当にうまくいっているのなら” 男と女はどうやって気持ちを通じさせればいいのだろうと私が考えていると、Lisaは笑って言った。「私が育ったダラスのような現実の世界では、物事はもっと伝統的なのかもしれないわ。人々はみんな同じことを心に抱いているの。成長したら大学に行って、仕事に就いて、結婚して、子供や孫をもうけることになってるのね。それが私が育ってきた世界なのよ」 だが、彼女はそこに留まったわけではなかった。Lisaの友人の大半がミュージシャンになりたがっていたが、そのことを真剣に考えたのは彼女だけだった。「女友達が2人いて、みんなでPoliceを目指すことにしたの。1人はベースを、もう1人はドラムを練習することになって、私はギターを引き受けたわ。私たちにはそれぞれお気に入りのメンバーがいて、MargaretはSting、AdrianはStewart、そして私はAndyだったから、ギターの練習を始めたというわけなのよ」 '90年代の初めにニューヨークのクラブで演奏し始めたLisaは、そこで俳優のEthan Hawkeに気に入られ、彼女の曲「Stay」は、彼の出演したジェネレーションX映画のヒット作『Reality Bites(リアリティ・バイツ)』のサウンドトラックに使用されることになった。サントラ盤からシングルカットされた「Stay」はナンバーワンの座に輝き、1枚もアルバムが出ていないにもかかわらず、75万枚も売上げたのだった。音楽産業の大部分が粗製乱造と使い捨てに明け暮れる状況の中で、プリーツ・スカートとトレードマークのサングラスを身につけた陽気で可愛いLisaは、ユニークなスタイルでポップシーンの一角に確固たる場所を築いたのである。 それ以降も彼女は2枚目のフルアルバム『Firecracker』から「I Do」をヒットさせたほか、3年連続でLilith Fair(女性ミュージシャンによる大規模な北米ツアー)に出演して観客を魅了した。グラミー賞にもノミネートされた彼女は、Chris Isaak、Wallflowers、Lyle Lovett、Emmylou Harris、Counting Crowsといったアーティストとツアーを行なってきたが、彼女のように健康的で健全な少女がツアーで多くの時間を過ごすのは大変だったのではないだろうか? 「まるでパジャマパーティみたいだったわ」とLisaは主張する。「バンドのメンバーは素晴らしい連中で、私たちは映画を見たり、ピザを食べたり、散歩したり、本を読んだりして過ごしたの。みんなすごくユーモアのセンスがあってね。それにツアー中もボーイフレンドが尋ねてきてくれたし」 規則正しい生活を続けることで、彼女は正気を保つことができたという。「きっちり8時間眠ったし、食事にもずっと気を遣ったわ。だって自分で厨房に入るわけにはいかないから、市場へ行って小さなニンジンの切れ端を買ってきたりしたのよ」 なるほどそれがツアー生活の秘訣というわけだ。でも、孤独にはどう対処したのだろう? 「できるかぎり携帯電話を使って、しょっちゅう友達と話をしてたの。1カ月に2000時間ですって、クレイジーね」 私たちは足を止めて、色とりどりの貝殻をいくつか眺めたりしたあとで、砂の上に腰を下ろして数分間おしゃべりした。「本当は悲しいヴァケーションって感じだったの」と、ついにLisaは残念そうに認めた。「読書をしたり、泥パックを顔に塗ったり、クロスワードパズルをしたり、ストレッチをやったり。私は旅行や観光の好きな家庭に育ったから、内心でプレッシャーを感じていたのよ。ある町にいて充分に自由時間があったなら、美術館にでも行ったほうがいいんじゃないかしらってね。それで公園を見物したり、外出しようとしたわ。そうでなければ、Target(米国の大型スーパー)やドラッグストアに出掛けたり、映画を見に行ったりして、できるだけ普段の気分で過ごすようにしたの」 今回ばかりはLisaも、自宅にあるこじんまりとしたキッチンを懐かしく思うことだろう。そこで彼女は友人や家族のために、たくさんのおいしいケーキやパイを作って多くの時間を費やしてきたからだ。私が自分のアップルパイを完璧なものにしたいと話したとき、彼女は一緒に作ろうと熱心に誘ってくれた。「家に来てよ! 私も自分でアップルパイを2枚焼いたばかりなの! 砂糖抜きで作ったから、甘すぎたりしないわ。今度からCriscoを使うつもり、そのほうがサクサクした生地ができるでしょ。この3週間、ずっとシナモンロールを作ってたってバンドのみんなにからかわれてるの。ツアーの中盤ではトーストしたアーモンドを乗せたチョコレートケーキとか……、甘いものが大好きなのよね」と彼女はため息をつく。「でも食事のバランスを考えて、いつも茹でたブロッコリーをサイドオーダーしているわ」 実際に彼女はステージにまでオーヴンを持ちこみかねない勢いだ。「もっと複雑なお菓子作りに挑戦したいな。すごくインタラクティヴなパフォーマンスなるわよね!」 『Cake And Pie』のカヴァーで真珠貝のように大きく口を開けたLisaは、まるで愛するデザートをいくつも食べる用意ができているみたいだ。「本当は顔のクローズアップにしたかったの、タイトルを食べちゃうくらいにね」。彼女はにやりと笑う。では、どうしてそうしなかったのだろう? 最近のLisaのモットーは“どうして全部食べないの?”である。つまりケーキとパイを目の前にして、食べない手はないということだ。「誰かにケーキとパイどちらにしますかって訊かれたら、ケーキとパイとどっちも食べたいって答えるべきよ」と彼女は笑って言った。でも、ブロッコリーは忘れないでね。 By Pamela Des Barres/LAUNCH.com |
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