前作のサイケデリアをさらに拡張し、ひたすら美しいアルバムを完成

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前作のサイケデリアをさらに拡張し、ひたすら美しいアルバムを完成
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「今の僕らはずっと自信を深めたし、余裕も出てきたよ」

最新 Album

All Is Dream
V2 Records V2CI-111
2001年8月18日発売 2,520(tax in)

1 The Dark Is Rising
2 Tides Of The Moon
3 Chains
4 Lincoln's Eyes
5 Nite And Fog
6 Little Rhymes
7 A Drop In Time
8 You're My Queen
9 Spiders And Files
10 Hercules
11 Cool Waves(日本盤Bonus Track)



「Nite And Fog」のビデオ・クリップはこちら

気分まかせに歩いていると、ちょっと奇妙な場所にたどり着くことがある。Mercury Revは特定の目的を持ったバンドでは決してない。ロックミュージック界のキャリア至上主義者の多くとは違って、Mercury Revのコアメンバー(Jonathan Donahue、Grasshopper、Dave Fridmann)は、一風変わった夢を追求する手段としてサウンド探訪の旅をスタートさせたのだ。彼らの夢は金、女性、名声(もちろん適量であれば、メンバーも嫌いじゃないだろうが)などではなく、サウンド、ヴィジョン、そして超越である。

そんな言い方は極端かもしれないが、実際のところドラマーのJeff Mercelが加わって4人組になったバンドのうち3人は、不滅で役立たずなヒッピーサイケデリアの聖地、ニューヨーク州ウッドストックからそう遠くない場所に住んでいるのだ。RevのGrasshopperはそんなふうには考えていないのかもしれないが(私はそう思う)、彼はバンドの立ち位置について極めてクリアに認識している。

Captain Beefheart的なサイケデリックのことを言っているのなら、握手しよう」とGrasshopper。

「でも、Phishのことだったら、ノーサンキューだ。Gram Parsonsがコズミック・アメリカンミュージックについて語っていたことのほうが、僕の考えに近いんだ


バンドの最新アルバム『All Is Dream』は、批評家に絶賛され驚くほどの成功を収めた'98年の作品、『Deserter's Songs』の続編の役割を充分に果たした作品である。Grasshopperによればバンドは“勢いを保ち続ける”ことに集中し、過去数年間のうちのツアーに出ていないときには、このフリークたちの緩やかな連帯が集中力を失わないようにするための体制を堅持してきたという。

その方法としては、Dave Fridmannのスタジオを例えばひと月に10日間みたいなかたちでブッキングするのさ。そうすれば休みなしって気分になって、2週間以内にやらなくちゃいけないことを念頭に置くようになるだろ。でも合間には熟慮するような時間もあるけどね

また、彼らはもう少しで伝説的プロデューサー、Jack Nietzcheと仕事をするところでもあった。Phil SpectorやNeil Youngとの仕事で彼が聞かせた見事なオーケストレーションには、Revの面々も大きな感銘を受けていたのである。

彼もすっかり乗ってくれて、“Spiders And Flies”と“Nite And Fog”のオーケストレーションを書く準備をしていたんだ。1週間ほどして彼はJonのところに電話をしてきて“何日かメキシコに行くから、戻ってきたらスコアを届けるよ。もう一部はできているからね”って言ったのさ。それから数日して、彼は死んでしまった

予定が狂ってしまったMercury Revは、もうひとりの有名レコードプロデューサー、Tony Viscontiとスタジオ入りすることになった。David BowieT. Rexとの生産的な仕事を考えれば論理的な選択である。Viscontiはオーケストラの指揮をし、いくつかの曲のアレンジも手がけ、Revのサウンドのパノラマに重要な色付けを施した。

夢のようなサウンド・スケープを再現するようなレコードを作るという哲学が、常に僕たちの原動力だった」とGrasshopper。「僕のお気に入りのレコードはBrian EnoにしてもVelvet Undergroundにしても、そういうタイプの作品だったよ。どこか遠いところへ連れていってくれるのさ。音楽にはドラッグのような作用があるんだ。聴き手の状態を変えてしまうんだよ。逃避じゃなくて、現実としてね

グループの中での変化に関しては、成熟が現れてきただけだという。

歳を重ねていけばプライオリティも変化し、いつでも演奏していたいみたいなエゴはなくなっていくものさ」とGrasshopperは認めている。

今の僕らはずっと自信を深めたし、余裕も出てきたよ。“この曲では俺は2音しか弾いていない”なんてことでケンカする必要はもうないんだ

By Rob O'Connor/LAUNCH.com

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