『OPEN LETTER』 DEF JAM JAPAN UICD-6022 1,890(tax in) 2001年5月3日発売 1 Missing You 2 Shine 3 A Song for Skye 4 Not Your Friend 5 Driving 6 Sex Games 7 Conversate 8 Love Of My Life 9 Wishful Thinking 10 Crooked Letter 11 Already Have 12 No Regrets 13 Even Though | | 「俺は黒いAxl Roseなんだ」とCaseは言う。
妙な名前を引き合いに出すものだ。彼はニューヨーク在住の20代。3rdアルバム『Open Letter』には、ダウンテンポやミッドテンポのメロディックなソウルがずらりと並んでいるのに。このアルバムを構成する主題は、一方通行の恋と失った恋、予感する恋と倒錯した恋。それを彩るのは、アコースティックギターとFender Rhodesのキーボード、ストリングス、そしてStevie Wonderのようなコード進行(“Love Of My Life”)。すべてに甘い香りが立ちこめている。Caseのヴォーカルが連なるのは、Stevie WonderやGuyのAaron Hall、The Gap BandのCharlie Wilsonを源流とするソウルの偉大な系譜である(実際、Caseはベテラン歌手Wilsonとのデュエット曲を書いて、昨年のWilsonのソロアルバムに収録された)。 で…、なぜAxl Roseなのだろう? 「ずっとGuns N' Rosesが好きなんだ。俺は、ステージにいるときのほうがワイルドな面が出るんだよ、もうひとりの自分が」とCaseは言う。Caseの音楽を形容するには、WonderやDonny HathawayなどR&Bの大御所の名を挙げないわけにはいかない。だが、Case自身が気持ちを高めるためにステージ出演前に聴いているのは、Led ZeppelinやGuns N' Rosesのアルバムだという。 「俺は流行の音楽が嫌いで、流行の音楽をやってると思われるのが嫌なんだ」「それはリアルじゃないし、俺の本質と全然関係ない。実際、俺はその正反対で、流行に逆らうのが好きなんだ。これまで、ずっとそうしてきたと思う。あえて常識に逆らうのが性に合ってるんだ」 Caseは常に常識に逆らってストリートを生き抜いてきたソウルマンだ。Destiny's ChildのBeyonceとビデオで共演('99年のシングル“Happily Ever After”)したかと思えば、不遇だった子供の時代以来の近所の不良たちといまも付き合っている、というタイプの男である。反逆児を自認する彼(だから黒いAxl Roseなのか?)は17歳で家を出て、その後の2年間をニューヨークのストリートで過ごした。好きなとき、可能なときに寝て食べて、ときにはサウスブロンクスの無法地帯にある狭い廃墟のアパートで夜を明かしたりもした。19歳になって彼は渋々家に戻り、ニューヨーク住宅公社に就職する。そして夜はレコーディングスタジオにこもってデモテープを作り始めた。 下積み時代のCaseは、UsherやChristopher Williams、Al B. Sureの曲を共作したりバックヴォーカリストを務めたりした。彼の名が広く知られるようになったのは、Foxy Brownのミリオンセラーシングル“Touch Me Tease Me”(『The Nutty Professor/ナッティ・プロフェッサー』サウンドトラック収録)で彼が歌ったのがきっかけだった。その後彼は、Def Jamからデビューアルバムをリリース。プロデューサーはKenny Smooveだった(当時Caseは彼の制作会社と契約していた)。ところが、このアルバムはなんの痕跡も残さずにまもなく消え去った。Caseはしかし、いつものように舞い戻って来る。Smooveと別れた彼は、2ndアルバム『Personal Conversation』をリリース。このアルバムからのロマンティックな1stシングル“Happily Ever After”は、'99年度の結婚式で定番ソングとなった。彼のソロ活動が加速するにしたがって、シーンには彼の分水嶺となる3rdアルバム『Open Letter』を受け入れる下地が出来上がってきた。 「このアルバムを『Open Letter』と名付けたのは、それぞれの曲で現実にいる人間のことや実際にあった状況を歌いたかったからなんだ」。シングルになった“Missing You”などのこのアルバムの収録曲の半数は、彼と2人のプロデューサー、Tim & Bob(Sisqoの“Thong Song”で有名)との共作である。「このアルバムは、これまで出会った人たちに書いた手紙みたいなもんだよ。だれが聴いてもいいんだけど。このアルバムで俺は、みんなに言えなかったことを言ってるんだ」 ニューアルバムで最も感動的な“No Regrets”は伝説のプロデューサーチーム、Jimmy Jam & Terry Lewisとの共作である。「この曲は、俺が長いあいだ付き合っていたある人のことを歌ってるんだ」とCaseは語る。「この歌で俺が言ってるのはこういうことだ。『俺たちは別れて今はもう会ってないけど、もう1度だけ会いたい。このまま年をとったら、おまえとのことを振り返って後悔しそうだ。あれはもう終わったことだとはっきりしておきたい』」 “No Regrets”のモデルになった女性は、この歌を聴いたのだろうか。「いや、まだ聴いていない」とCaseは簡潔に答える。できれば関係を修復したいと思ってるんですかと尋ねると、彼は困った笑いを浮かべる。「いや、そういうことじゃない。俺は、胸のつかえを取りたかったんだ。この曲をJimmyやTerryと作ってよかったのは、2人がまさに俺といっしょに作業を進めてくれたことだ。俺とTerryは向かい合って座って、俺の言いたいことが歌詞に全部入ってるかどうか、2日がかりで話し合ったよ。曲作りの点で大いに勉強になった」 最近、Caseは昔のR&Bの英雄たちと比較されることが多く、Axl Roseと並び称されることはまだ少ない。しかし彼は気にしていない。「俺が比べられるのは、いつもそういう人たちだ」と彼は肩をすくめる。「けど、それはそれでいいんだ。たしかに、俺は彼らの影響を受けてるわけだし、彼らと同列に見られるのは嬉しいよ。Charlie(Wilson)は、いまでも俺の師匠だ。そっちの旗を振れと言われたら誇りを持ってそうするよ。けど、そういう昔のミュージシャンから俺が学んだのは、いつも自分に正直な音楽をやってなきゃいけないってこと。それが、アーティストの証だ。音楽活動をしていくっていうのは、そういうことなんだ」 By Jeff Lorez/LAUNCH.com |
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