観客の熱狂にストレートな演奏で応えた単独公演

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観客の熱狂にストレートな演奏で応えた単独公演


 

スコットランド出身のTravisは、Oasisのオープニングというショウビズの世界でも最も耐え難く、つらい仕事のひとつから一夜のオフをとって、ソールドアウトの大盛況となったEl Rey Theatreで演奏を行なった。そのパフォーマンスは多かれ少なかれ、ブリティッシュロックの将来像が大きく形作られつつあることを、その日の観客に保証して見せるものであった。

Andy Dunlop (G)、Neil Primrose (Dr)、Douglas Payne (B)、Francis Healy (Vo/G)からなるバンドは、みんな微笑みながらステージに飛び跳ねるように登場し(おそらくLiamやNoelと2人に伴うエゴに楽屋で対処する必要がなかったからだろう)、'N SyncBackstreet Boysのファンかと思わせるほどの、つんざくような黄色い声援を受けた。まずはデビューシングル「All I Want To Do Is Rock」でスタートし、壮大で絶望に満ちたポップの素晴らしい夕べという当夜のムードを決定づけた。Dunlopは果てしのないエネルギーと性急な熱情を鼓舞しながら、フィードバックでアンプをよがらせるというギターヒーローのポーズを何度も繰り返し、Healyは情熱的なヴォーカルで空間を切り裂いた。これはローカルなステージでは数ヶ月に一度見られるかどうかの、最良かつ最も印象的なセットオープニングの瞬間に数えられるだろう。

もちろんTravisのファンは、この1stシングルのタイトルが彼らが2枚のアルバムで発表してきた荒涼とした音楽をまったく表してはいないことを充分に知っている。'97年のデビュー作『Good Feeling』はSteve Lillywhiteのプロデュースによるもので、'99年の第2作『The Man Who』はアメリカでは、このライヴの直前にリリースされている。メインソングライターのHealyは、的を射ない楽観主義や眉をひそめる期待に関する歌を作る才能に恵まれている。それにRadioheadならびに北部ブリテン島の陰鬱な天気から借用した放射状のウォール・オブ・サウンドが加わることで、彼らの歌はまるでカナダのクルーナー歌手、Gordon Lightfootが作った悲惨な難破船のバラードが、Beach Boysのようなサウンドで奏でられているように聴こえるのだ。

こうした音楽はレコードでは精巧かつムードがあって、賛歌のようにさえ響く。だがTravisはライヴではこれら苦悶の物語をストレートなギターロックの形で表現することを選択した。サポートのキーボーディストが最小限の背景的サウンドを提供してはいるが、彼はほとんどの時間をステージの隅に張り付いたままで過ごしている。El Reyでのショウでは、ときどきデビューアルバムからの曲を折り込むことはあったものの、Travisがまさしく新ミレニアムにおける最強の音楽勢力であることを証明したのは、英国ではマルチプラチナのモンスターヒットになった『The Man Who』からのマテリアルであった。神々しいほどメロディアスな「As You Are」「Driftwood」「Why Does It Always Rain On Me?」などは、もちろんそれだけでもこの仮説を証明してくれる傑作だが、「Writing To Reach You」と「The Fear」は、Travisのサウンドが'70年代のソフトロックバンド、Breadの境地にまで達しつつあることを示している。ただ、バンドのファンの大半は意図的な理由で、この比較を受け入れないものと思われるが。

Healyはヒステリックな聴衆の容赦ない絶叫の間に、スコットランド訛りのきつい語り口でいくつかの曲紹介を何とか挟み込んでいたが、ほどなく「Luv」(彼はハーモニカを首から提げてすっかりNeil Youngモードに入っていた)や、内省的な「Slide Show」といったアコースティックナンバーで事態は沈静化した。その夜のTravisは2曲の新曲を気前よく披露するほど親切だった。まず最初は「Coming Around」でジャカジャカしたスコティッシュ・フォークポップを聴かせたが、これはHealyによると、次のTravisのアルバムからの1stシングルになるという。もう1曲はアンコールで披露された「The Cage」で、こちらはより馴染み深いアコースティックな鎮魂のバラードというモードに立ち返った作品だ。他のアンコール曲は、Britney Spearsのショッピングモール向けロックの名曲「Baby One More Time」のヴァージョンと、The Bandの「The Weight」が取り上げられた。前者は観客に対するちょっとしたウインクのようなものだが、最も魂のない子供のポップスですら、適切に演奏すれば楽しめるブリットポップに転換できることを証明するかのように誇り高く披露された。後者は彼らの敬愛する音楽的先達へのトリビュートであり、会場で絶叫していたファンの大半よりも古くからある音楽の形態で演奏されたのだった。

ショウのラストは、デビューアルバムから快活なバブルガム風味のグラムロック「Happy」が騒々しくバタバタと演奏されて幕を閉じた。その途中でDunlopとPayneは曲のビートに合わせて飛び跳ねながら、ステージ中央に歩み寄ってお互いの口へとキスを交わした。このことでイギリスで最も喧伝されたバンドはユーモアのセンスを失ってしまったかもしれないが、同国で最高のバンドがありのままの自分たちをさらけだすことにかなり慣れつつあるのを証明するものであった。

By Jim Freek/LAUNCH.com

 

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