Noelが語る“コトの真相”

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『Be Here Now』のツアーが終わったら、バンドをやめようと思ってた」とNoel Gallagher。OasisのシンガーLiamの兄で、バンドのリーダー/ギタリスト/ソングライターである。

ウンザリしてたんだ。バンドのメンバーに嫌気がさしてさ。これ以上続けてもしょうがないと思った。ソロ・アーティストになったほうがよっぽど有意義だってね。それでドラッグを絶ち、また曲作りに没頭して…活力を取り戻した」

全世界に注視される立場にありながら、Noelには無分別な言動が目立つ。

たとえば数年前、Oasisの出世作となった2ndアルバム『What's The Story Morning Glory?』を売り込むためアメリカにやってきた際、好評だった全米ツアーの真っ最中に、突然コンコルドに飛び乗って帰国し、後先を考えずに計画を水の泡にした。
酔っ払って受けたインタヴューで、ライバルのブリットバンドBlurを名指しし、奴らはAIDSで死ねばいいと発言して、ひんしゅくを買ったこともある。
また、3rdアルバム『Be Here Now』では、あらゆる音楽的理想を実現してほしいというOasisファンの期待を無視し、全曲をわずか2週間であわただしく書き上げた。

このように、Noelは必ずしも賢明な振る舞いをしてきたとはいえない。しかし軽率に見えるこうした決断も、それほど悪い結果を呼ばなかった。Noelが言うには、『Be Here Now』のあと1年間オフをとったおかげで、Oasisをやめないですんだし、『What's The Story Morning Glory?』の全米ツアーを中断したことは、当時のOasisを分裂させないためのやむをえない手段だった。

あの全米ツアーを途中でやめなかったら、バンドは解散してたよ。忘れてもらっちゃ困るのは、俺たちはあれからさらに2枚のレコードを作って…しかも前作よりニューアルバムのほうがはるかにいい出来だ…シーンに戻ってきたってことさ。何度だって戻ってくるぜ。だから俺とすれば、すべてを正当化できるんだ。あのときチケットを買った人たちには悪かったけど、世の中そういうもんだろ

彼は今、サンタモニカの海岸に建つホテルのすばらしく立派な部屋にいる。窓の外にはすばらしく美しい夕映えが赤々と燃えている。こんなロケーションで、Oasisの新作『Standing On The Shoulder Of Giants』(タイトルはアイザック・ニュートン博士の言葉を引用したもの)について語る彼は、いかにも満足げだ。
バンドの4作目となるこのアルバムに、彼は自信を持っている。酒屋へ牛乳を買いにいったというような日常的なことまで話題にされるOasisだが、それにまさる注目を集めて当然の作品である。

これまでの3作をOwen Morrisと共同でプロデュースしてきたNoelが、このアルバムで起用したのは、プロデューサーのMark“Spike”Stent(U2Spice GirlsMassive AttackMansun)と、エンジニアのPaul Stacy(Oasisの『Be Here Now』ツアーにキーボードで参加し、ストリングスのパートを弾いた)。その結果『Standing On The Shoulder Of Giants』では、Oasis本来のロックンロール・メンタリティにテクノロジー感覚がプラスされ、今までよりも現代的なアルバムに仕上がっている。

StentがOasis陣営に加わるきっかけになったのは、もともとNoelとStentの妻同士が友達だったことだ。
Noelが自宅の寝室で作った大ざっぱなデモテープを聞いて、Stentは興味を示した。Noelが人選をするにあたって、決めてになったことがいくつかある。

俺が思ったのは“彼は今ふうの現代的なレコードを作ってきた。俺たちと仕事するのに恐れをなすことはないだろう”ってことだ。なにしろ“Gallagher兄弟と? 一緒にスタジオにこもる? 正気かよ?”って奴がほとんどだからな。それに彼は、音楽をすごく気に入ってくれた。それがいちばん大きかったね。俺も最初からいい感じを持ってたんだ。彼はドラッグとかそういうもんとは無縁だったしさ。“いいか、わかってるな、ちゃんとレコードを作るんだ”って言ってくれる責任者がいたら助かるじゃないか。前は俺たちみんな、スタジオに集まると、まずパブに行って、グデングデンになって、それからレコーディングをしてた。でも今度は、まずレコーディングして、酔っ払うのはその後だった。いいことだ。彼とはまた一緒にやりたいよ

『Standing On The Shoulder Of Giants』の制作中、オリジナルメンバーの2人、リズムギターのPaul“Bonehead”ArthursとベースのPaul“Guipsy”McGuiganがバンドを離れた。
彼らの脱退後、Noelは思いきりよく2人のパートを録音しなおした。ベースに関しては、6曲をNoel自身が、あとの4曲をPaul Stacyが担当。Boneheadのリズムパートも、すべてNoelとStacyが改めて録音した。
Noelよりもずっと熟練したミュージシャンであるStacyは、リードギターも一部弾いている。

(Stacyは)たいしたエンジニアだ。特に「Who Feels Love?」は彼の腕の見せどころさ。俺んちのベッドルームで彼と作った曲なんだけど、1つのコードから始まって、自然になんとなくできちゃった。逆回しのとこなんか全部彼がやってるんだ

Noelの口調に熱がこもる。

一緒にいるとほんと楽しいよ。のめりこむタイプでさ。エンジニアとして、とりたてて大げさなことはしない。エンジニアにはつい無理言っちゃうもんだから、“冗談じゃない、これこれのバンドではこんなことはなかった”なんて言われがちなんだけど、彼は全然そういう感じじゃないんだ。自分からのめりこんで、一生懸命やる。こういう相手だと仕事がやりやすいよ。今回は彼がずっとそこにいてくれてよかった。(ベーシストとして)バンドに入ってくれと頼んだら、ツアーが嫌いだからって断わられて、“このヤロー、(俺たちとツアーするのが)そんなにイヤなのか?”って思ったけど、彼はエンジニアとしての活動にもっと力を入れたがってたんだ。こんなふうに人とかかわって、いつも気心の知れた同じ人たちと一緒にやっていけたらいいな。次も絶対彼と組むよ。まちがいない

Heavy StereoのGem(リズムギター)とRide/Hurricane #1のギタリストAndy Bell(ベース)をOasisの新メンバーに迎えたNoelは、有能なミュージシャンを集めることができたと感じているようだ。

リハーサルをしてても、なんかみんな礼儀正しくってさ。“このパートをこういうふうに弾いてくれないか”とか、“ごめん、途中でさえぎって悪いけど、僕のプレイはこれでいいのかな”とか

自分のマンチェスターなまりとは大違いの、彼らの優雅なロンドン風アクセントをまねて、Noelは笑う。

メンバーに会うといつでもそんな具合なんだ。みんなで酒を飲んだらどうなるんだろう? お互いを侮辱するときも、もってまわった言い方になるのかな? そのうち彼らに悪態つくときが来たら、どんな反応が返ってくるかな? とにかく、メチャクチャ楽しくやってる。彼らは最高だ。好きなレコードも同じだし、ユーモアのセンスも同じ。それに誰かと仲よくなるときは、控えめな髪型が大いに役立つのさ。(BoneheadとGuipsyの)脱退にはガックリきたけど、チキショウめ、彼ら2人が入ったことで、新しいバンドに生まれ変わったみたいだ。この顔ぶれで実際にレコードを作ったら、なおさらそういう気がすると思うよ。そいつはすっげえレコードになるはずさ!

 すでに半分は曲がそろったというOasisの5枚目のアルバムは、2001年の初めにレコーディングが予定されている。一見場当たり的なNoelの行動こそが、結局は正しい決断なのかもしれない。

by Lily Moayeri

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