【インタビュー】逹瑯(MUCC)、ソロ初ミニアルバム『MONOCHROME』に虹色のストーリー「赤橙黄緑青藍紫に向かって」
■7曲の並びを虹の配色にしたくて
■モノクロームだけど中身はカラフル
──では、歌詞は楽曲が出来上がってから書いていったんですか?
逹瑯:楽曲が出来上がって、曲順を決めて、そこから歌詞を当てていきました。
──歌詞より先に曲順を決めたというのは?
逹瑯:虹の配色って、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫という並びが決まっているんですよ。7曲の並びをその順番にしたくて。それぞれの色に当てはまるイメージかつ、アルバムの流れとしてもちゃんとハマる曲順を先に考えて。その配色に向かって歌詞を書いていきました。色のイメージがある時点で曲の方向性も決まってくるから、書きやすかったですね。あとはどういう言葉を乗せていくか、だけなので。
──緑だから「Cat's Eye」で、紫だから「アメジスト」と。
逹瑯:そうそう。緑といえば黒猫の目でしょ!って。
──『COLORS』と対になるような『MONOCHROME』というタイトルですけど、虹というカラフルなテーマがあったんですね。
逹瑯:最初、アルバムタイトルを『VIVID COLORS』にしようと思ってたんですよ、結構マジで。
──聞き覚えのあるタイトル(L'Arc-en-Cielの2ndシングル)です(笑)。
逹瑯:ちょっとチョケすぎてるかなと思ってやめました。『COLORS』の続編というところと、タイトルは『MONOCHROME』なんだけど中身を開けたらカラフル、というほうがいいかなと思って。
▲ミニアルバム『MONOCHROME』
──アレンジはカラフルでありつつ、歌詞には切なさや苦しさが感じられて、逹瑯さんらしい世界になっていますよね。それこそホーンが華やかな「黄昏のエレジー」もどこか哀しさが漂っていて。
逹瑯:「黄昏のエレジー」は、何とも言えない空気感にしたかったんですよね。モヤモヤ感というか、哀しいと言えば哀しいんだけど、じゃあ不満かと言ったら不満でもない。満足してると言えばしてるんだけど、何か足んない……みたいな温度感にしたかった。
──「青の刹那」は先行シングルですが、この時から色のテーマがあったんですか?
逹瑯:当時はアルバムのことはなんとなくしか考えていなかったけど、うまくまとまれば全部虹色で統一させていきたいなとは思ってました。この曲はシンコペーションのロック曲をやりたいというテーマから始まっていて。「イメージで言うと、THE BACK HORNの「コバルトブルー」とかだよね」みたいな話をしていたんですよ。そのあと、この曲のギターのプリプロをしていた日が8月15日の終戦記念日だったんですけど、「コバルトブルー」は特攻隊モチーフの曲だから、すごい偶然だなと思って。そこから、(菅波)栄純が特攻隊にインスパイアされて「コバルトブルー」の歌詞を書いたなら、その特攻隊にいた別の仲間の歌にしようと思って書いていきました。だから「コバルトブルー」の隊の中にいる別の仲間の歌。
──聴いた時に「コバルトブルー」が浮かんだんですけど、本当に繋がっていたんですね。THE BACK HORNはもっと生々しく血の匂いがする雰囲気ですが、「青の刹那」はまた違う視点で。
逹瑯:そこまで男臭く全部割り切れてない人というか、女々しい部分というか。“本当はイヤだけど口には出せねぇしな”みたいな気持ちや場面を書きたいと思ったんです。
──「黄昏のエレジー」の話にも通じますが、逹瑯さんは歌詞を書く視点として、綺麗にまとめすぎず、なんとも言えない、割り切れない感情を表現されますよね。
逹瑯:そういうものが好きなんでしょうね(笑)。なんとなくじんわりくるような感覚とか。“あれ? 今日はこの曲の聞こえ方が違うな”と思えるような。その時の精神状態で変わるくらいのものが好きかもしれない。
──たしかに、ふとした瞬間に自分の経験とリンクして聞こえ方が変わったり、言葉が刺さったりする印象があります。逹瑯さんご自身は、歌詞を書く時に経験や気持ちを掘り起こしている感覚なんですか?
逹瑯:いろんなパターンがありますね。曲を聴いてくすぐられるところを言葉にしていくなかで、曲と自分の過去の体験がハマった時は、そのことをバーッと書くこともあるし。現在進行形のことをベースに“これがなくなった時にどんな気持ちになるんだろう”と想像しながら書くこともある。親しい人がそういう状況になった時にどういう気持ちになるのかなと思って書いたりとかね。リアルなテーマから順序を追って想像して、どうなるかを考えていく感じです。
──喪失や別れの曲が多くなるのは、結果的にですか?
逹瑯:すげえ楽しいなっていう歌詞を書いても、あんまり歌いたいと思わないから。楽しいな〜って時は、まあ楽しんどけやって気持ちになる(笑)。
──ははは。そして、ミドルテンポのバラード「藍⻘症」は、調べて知ったんですがチアノーゼの和名なんですね。
逹瑯:はい。読み方も“藍⻘症=チアノーゼ”です。この曲はアルバムのラストかラスト前のどちらかだろうなと考えていて。ラスト前だとすると虹色の順番的に藍だから、藍色のつく言葉を調べた時に、“チアノーゼってこうやって書くんだ”と知って。“ドンピシャにハマるぞ”と思って、そこから広げてきました。チアノーゼだから、溺れていく曲にしたいというイメージでしたね。
──最後の「アメジスト」は楽曲も歌い方も明るくポップな方向に振り切っていますね。アレンジやリズム感のテーマはなんだったんですか?
逹瑯:最後の曲は、それこそモヤモヤしてるものがパーッと開ける感じがいいなあと思って。テーマとしてはストレートな明るめのロック曲。わかりやすく言うと、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの「世界の終わり」みたいな曲を作りたいというところから始まって。練りまくっていたら、なぜかフー・ファイターズになりました(笑)。足立からは2000年代のアンドリューW.K.っていうキーワードも出てたな。
──個人的にはTHE YELLOW MONKEYとか吉井和哉さんの空気も感じて。
逹瑯:吉井さんがフー・ファイターズ大好きですからね。吉井さんのソロにはフー・ファイターズ好きの趣味全開な曲もたくさんあるし。俺は吉井さんが好きだから、そういう雰囲気の曲に歌詞をつけて歌うと吉井さんの匂いがもっと出ちゃうんだろうけど、曲のベーシックを足立が作ってるからちょっと違う感じになってて。それもいいかと思って、そのまま進めました。
──納得です。歌詞には、誰かを好きになった時の理想と現実とか、ちょっとシニカルな目線を感じました。
逹瑯:恋愛のLOVEというよりは、本当に好きなもの、大事なものに対する憧れや夢みたいなほうのLOVEですね。夢と理想と現実のギャップのモヤモヤが晴れていけばいいなって。ギャップばっかり気にして悲観的になっていてもどうにもならないし、それだとつまんないよねっていう気持ちかな。
──聴き心地としてはスッキリ楽しく終わる締めになりましたね。
逹瑯:「アメジスト」と「藍⻘症」が逆だったら、アルバムが全然違う印象になっていたでしょうね。色のイメージと楽曲の流れを決めていったらこの順番になったので、うまくまとめられたなと思います。
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