【速レポ】<REDLINE>tricot、ストイックなパフォーマンスと変幻自在の演奏で会場を魅了

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SOUL STAGEのトリを飾ったtricotは、唯一無二と言えるサウンドに加え、ロックフェスのセオリーに縛られないと言うか、それを踏襲することにそもそも興味がないと言うか、はっきり言ってしまえば、完全に無視したパフォーマンスで独特の世界観を作り上げ、観客を圧倒したのだった。

◆ライブ写真

ライブは中嶋イッキュウ(Vo, G)の伸びやかな歌声から始まる「右脳左脳」でスタート。リズミカルな歌が心地いいダンスポップナンバー…と思わせ、キダモティフォ(G, Cho)によるフリー&フリーキーなギタープレイをはじめ、バンドは中嶋の歌と対峙するような演奏を繰り広げる。そこから吉田雄介(Dr)のキックで繋げた「OOOL」も歌メロそのものはシティポップにもなりそうな魅力を持ちながら、バンドの演奏は「右脳左脳」同様、歌の伴奏という概念を逸脱している。それがtricotの基本形。曲の前半で効果音的にギターを鳴らしていたキダは付点8分ディレイで音色を煌めかせたり、頭は振りながら激しいコードカッティングを交えたりしながら、1曲の中で変幻自在のプレイを繰り広げていく。

続く「18,19」は手数の多いドラムが演奏をリードするマスロックナンバー。ハードコアの延長線上にあるようにも聴こえるアップテンポの演奏がすこぶるカッコいい。しかし、そう思ったのも束の間、テンポダウンしてサイケデリックになった演奏は、そこから展開の読めないテンポチェンジを繰り返して観客を翻弄する。



シューゲイザー的なインプロからなだれこんだ「アナメイン」はテンポチェンジを繰り返す演奏を、“ハァ〜”あるいは“オォ~”とスキャットする中嶋の幻想的な歌声が包み込むサイケデリックナンバー。曲の終盤、キダの激しいカッティングに煽られ、白熱していったバンドの演奏はガッ、ガッとブレイクを加えたことで、マスロックに変化する。

ドカスカドカスカと吉田がダイナミックに鳴らした「秘蜜」は、キダがバリバリと鳴らしたガレージロック風のギターリフと中嶋が歌うメランコリックなメロディの組み合わせの妙が聴きどころ。ギターリフと歌メロ、どちらが先にできたのか分からないが、“それにこれを組み合わせるか!?”と演奏を聴きながら思ってしまうのは、筆者が凡人だからだ。そんな「秘蜜」が途中にシューゲイザー的なインプロパートを挟んで、最後、メランコリックでノスタルジックなボーカルナンバーに着地したのは、中嶋のボーカリストとしての力量があればこそ。「potage」は愛を求める切なさを歌ったバラードだが、アンニュイな歌の魅力と天才的な閃きに満ちたキダのギタープレイが拮抗する。

ちなみに、ここまで観客とコミュニケーションを取って、一体感を作り上げるためのMCは一切なし。と言うか、メンバーがこの日発した言葉は「tricotです。よろしくお願いします」と「tricotでした。ありがとうございました」という中嶋が最初と最後に言った二言のみ。あとは、ただひたすら演奏することだけに全神経を集中させていたメンバー達はストイックの一言。ファンを増やすことに興味がないわけじゃないのだと思う。観客におもねらなくても気持ちは掴めるという自信があるのだろう。

少なくとも筆者は、ラストナンバーの「體」がキダのギターソロからなだれこんだインプロでエンディングを迎えたとき、“あーっ、もっとtricotを聴きたい!!!!”という強烈な衝動に駆られたのだった。ブルージーなギターリフと、中嶋の歌が渦巻くようなグルーブを作るその「體」。中嶋は最後、囁き声で〈バラバラにしたい〉と繰り返したのだが、何を〈バラバラにしたい〉のか? タイトルから連想すると、ぞっとするではないか。そんなところにも抗しがたいtricotの魅力を感じずにいられなかった。


文◎山口智男
写真◎Kohei Suzuki

セットリスト

[SOUL STAGE]
1.右脳左脳
2.OOOL
3.18,19
4.アナメイン
5.秘蜜
6.potage
7.體

■JMS主催<REDLINE ALL THE FINAL>

12月7日(土) 千葉・幕張メッセ 国際展示場 9-11ホール
12月8日(日) 千葉・幕張メッセ 国際展示場 9-11ホール
open9:00 / start10:30 / 終演予定22:00

▼12月7日(土)出演アーティスト
ACIDMAN、Age Factory、ALI、ASP、Awich、bacho、FAT PROP、FOMARE、go!go!vanillas、HERO COMPLEX、KOTORI、MONGOL800、MY FIRST STORY、PEDRO、RIZE、SATOH、SIX LOUNGE、THE FOREVER YOUNG、TETORA、tricot、w.o.d.、WurtS、04 Limited Sazabys、クリープハイプ、サンボマスター、ハルカミライ、東京スカパラダイスオーケストラ、優里
▼12月8日(日)出演アーティスト
AFJB、BLUE ENCOUNT、coldrain、Crossfaith、Crystal Lake、CVLTE、Dragon Ash、dustbox、EGG BRAIN、ENTH、FACT、Fear,and Loathing in LasVegas、FOR A REASON、HEY-SMITH、MAN WITH A MISSION、MONOEYES、MY FIRST STORY、NOISEMAKER、Northern19、Paledusk、ROTTENGRAFFTY、SHADOWS、SHANK、SiM、The BONEZ、SPARK!!SOUND!!SHOW!!、TOTALFAT、WORSTRASH、マキシマム ザ ホルモン

■REDLINE ALL THE FINAL PROJECT “REDLINE DREAM BAND”

2024年12月6日(金)配信開始
※デジタルシングル
▼Vocal
Adam Graham (FACT)
AG (NOISEMAKER)
GEN (04 Limited Sazabys)
Hiro (SHADOWS / FACT)
細美武士 (MONOEYES)
庵原将平 (SHANK)
Jean-ken Jhonny (MAN WITH A MISSION)
Jesse (The BONEZ / RIZE)
JOEY (EGG BRAIN)
Jose (TOTALFAT)
Kaito (Paledusk)
笠原健太郎 (Northern19)
Kenta Koie (Crossfaith)
Kj (Dragon Ash / The Ravens)
MAH (SiM)
Masato (coldrain)
N∀OKI (ROTTENGRAFFTY)
NOBUYA (ROTTENGRAFFTY)
Suga (dustbox)
▼Guitar
Kazuki (SHADOWS / FACT)
YD (Crystal Lake)
Daidai (Paledusk)
▼Bass
チヨ (SPARK!!SOUND!!SHOW!!)
▼Drums
Tatsuya (Crossfaith)
▼Special Thanks
169 イチロー, タクマ, タナカユーキ (SPARK!!SOUND!!SHOW!!)



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