【インタビュー vol.3】松岡充、SOPHIA復活を振り返り30周年を語る「ここからまた始めよう」
SOPHIAが、2024年のバンド結成30周年に続いて、2025年にデビュー30周年を迎える。2022年10月に9年ぶりの復活を遂げたSOPHIAはこの2年間のうちに着実に確実にバンドとしての技量と意識を根底から固めてきた。ある意味では復活祭を終え、現在進行系のバンドとして今を生きるために。
◆SOPHIA 画像
古巣のレーベルTOY'S FACTORYと再びタッグを組み、デビュー当時のライヴハウスツアー再現、セルフカバーを含むミニアルバム『BOYS and』リリースなど、1995年デビュー当時のSOPHIAをオマージュするような活動の裏には、松岡充のどんなメッセージがあったのか。原点回帰に思えた一連のステップは、この先の未来を見据えたものであり、5人が乗り越えなくてはならない壁だったのかもしれない。
加えて言えば、HYDEや清春など、同時代を駆け抜けてきたアーティストとの再会も、松岡を奮い立たせる要因のひとつになっていたようだ。インタビュー特集vol.1およびvol.2に続く最終章は、新しいシーズンを歩み出したSOPHIAについて、フロントマンであり司令塔の松岡充にじっくりと話を訊いた。
◆ ◆ ◆
■僕がベクトルを向けたのは
■SOPHIAのメンバーだったんです
──9年の時を経て活動再開したSOPHIAは、約束の場所・日本武道館での復活公演、大阪城ホールでの凱旋ライヴを経て、活動休止前にやむなく中止となってしまった伝説のライヴシリーズ<獅子に翼>の神奈川・Kアリーナ横浜公演を開催して、“SOPHIA復活“を掲げたタームを終了しました。そのKアリーナ横浜公演でアナウンスされたのが古巣TOY'S FACTORYとの再タッグと、新曲「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」のリリースです。
松岡充:はい。
──改めてうかがいたいのですが、なぜここでTOY'S FACTORYと再びタッグを組もうと思ったのでしょうか?
松岡:TOY'S FACTORYは、SOPHIAにとってなくてはならない存在だったんです。SOPHIAの創世記、トイズのディレクターが、SOPHIAのフィロソフィーを僕らと一緒に創ってくれましたから。その方はもう亡くなられてしまったんですが、その方とは違う部署でMr.Childrenやゆずを担当していたのが、現社長の稲葉(貢一)さん。SOPHIAが復活するとなったときも、僕は手紙で報告してたんです。
──継続してお付き合いがあったんですね。
松岡:はい。そしてその後、<獅子に翼>を開催するとなったとき、僕のほうから「SOPHIAの新曲を創っています。もう一度一緒にやってもらえませんか?」という話をしまして、結果、タッグを組むことになったんです。ただ、新曲「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」に関しては、もう作業が進んでいたので、トイズとしては「全面的にバックアップはするよ」という理想的なスタンスで参加してくれた。だからKアリーナ横浜でCD無料配布ができたんです。
──これ、レコードメーカーさんは普通許可しないんですよね。
松岡:TOY'S FACTORYとして “これから本気でSOPHIAとやっていくぞ”という決意表明だったんですよ。
──ほほぉ。
松岡:TOY'S FACTORYには無料配布のためのCDの盤の製作を、そしてこれまで僕がずっとニコニコ生放送などでお世話になってきたドワンゴにはミュージックビデオ制作を担当してもらい、あのKアリーナでの新曲発表が実現できた。ミラクルでしたね、<獅子に翼V>開催までにすべてが間に合ったのは。新曲が生まれ、トイズとドワンゴも参加してくれて。当日は僕の出身専門学校の後輩となる在校生たち100人以上が集まって、ダンスとコーラスでSOPHIAのステージを盛り上げてくれた。そんな力がすべて集結して、あの<獅子に翼V>ができたんです。僕は、9年間の活動休止から復活して、活動休止前の約束をやりきったSOPHIAが、次に向かう第一歩を踏み出す起点となったのが<獅子に翼V>だと思ってます。
──なるほど。
松岡:その次に、僕がベクトルを向けたのはSOPHIAのメンバーだったんですよ。
──えっ…メンバーですか?
松岡:はい。それまでは“SOPHIAが復活します”ということを掲げて、いろいろな人の力を借りてリスタートの第一歩が踏み出せた。次はメンバー各々が自分の力で第一歩を踏み出す、それを実感しなければいけない。そう思って、周りのいろいろなサポートをここで一度オフにする必要があったんです。5人が動き、5人でやることを5人それぞれが感じることで、SOPHIAの核を固めたい。じゃないとこの先、いろんな人が先回りしてメンバーをサポートしてくれたり、ファンがグッズやチケットを買ってSOPHIAを支えてくれたとしても、メンバーがその有り難さを理解できない…そうなったら元も子もないんです。そういう意味も込めて、ライヴハウスツアー<SOPHIA TOUR 2024 “Dear Boys and Girls and”>を実施したんです。
──えー! デビュー当時のツアーを、3,090円というチケット代まで再現して開催したあのツアーの裏には、松岡さんのそんな意図が隠されていたのですね。
松岡:はい。“復活したぜ、やったー!” “大きな会場でできたぜ、やったー!”で舞い上がってたらそこで終わると思いました。だからこそ、なにもサポートがない状態の5人だけに一度戻ろうと。この5人でSOPHIAなんだということを、イチから協力し合って、信じ合って、手を取り合って実感しないといけない。このまま浮かれ続けていたら、自分たちがどこに向かえばいいのかさえもまた分からなくなるから。
──要はバンドのリスタートが必要だったと。
松岡:はい。“チケット代は当時のまま”というのは企画っぽく見えたと思うんですが、実際にはそうなると、こちらは何にも予算が割けないわけですよ。
──普通に考えたら今の時代、大赤字ですよね?
松岡:「今のSOPHIAの規模感で、3,090円でライヴハウスツアーをやったらウン千万円の赤字が出る」と最初に言われました。その赤字を削るためにはどうしたらいいのか。自分らでだけでやればいいんです。
──そういうところに自分たちを追い込んでいく意図が最初からあったわけですね、あのライヴハウスツアーには。
松岡:そうです。最初にメンバーに言いました。「このツアーは現地集合、現地解散だから。自分の機材は自分で持ち運べ」と。今はスタッフに機材を運んでもらって、弦の張り替えからチューニングまでやってもらえるから、メンバーは現場に入って弾くだけ。ライヴが終わった後は、楽器をそのままにして帰ることができるんです。でも、最初はそれを自分たちで全部やってた。今改めて「それをやろう」と伝えて始めたんですが、まぁ結局周りのスタッフがやってくれるんですよね。
──SOPHIAが気持ちよく音楽に専念できるように、という心遣いですね。
松岡:それはそれで“ありがとう”なんですが、本音を言えば、なにもサポートしてくれなくてよかった。5人がただただ自分の歌、自分の演奏を責任持ってやる。たったひとり誰かの調子が悪いというだけで、その日のステージが左右される。そういうところに立ち返って、この5人でSOPHIAだということを体感してもらいたかったというのが本音です。
──復活後、日本武道館や大阪城ホール、Kアリーナ横浜など、大きなステージばかりで立て続けにライブしてきてましたから。
松岡:そうそう。自分たちだけの力でやれば分かるんですよ。SOPHIAが大きなステージに立ったとき、どれだけの人たちが関わって頑張って、自分たちをサポートしてくれていたのかが。
──よりリアルにそのことを想像できるようになると。
松岡:このライブハウツアーを通して、感謝の気持ちを自然と抱きながら、自分ができることを精一杯提供しよう、そういう気持ちを持ったアーティストになれると思ったんです。もともとSOPHIAは、そういう気持ちがあったから周りがサポートしてくれて、ここまでバンドとして続いてきたんだと思うんですね。その気持ちが欠けてきたときに、活動休止に繋がったわけで。だったら復活した今、それをもう一度再確認して、ここからまた始めようよという想いだったんです。
──大事なものがなんだったのかを思い出さないと、SOPHIAはまた転んでしまうよという警告でもあった。
松岡:そう。じゃないと、復活祭りが終わったら、また止まってしまいますから。
──バンドの原点であるライヴハウスで、メンバーがSOPHIAの核にあるものを確認する。それがライヴハウスツアーの狙いだったわけですね。
松岡:まさにそうです。そして、この『BOYS and』のCDリリースもそうです。ライヴハウスツアー同様、面白い企画に見えるけど、それだけではない。
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