【インタビュー vol.2】SOPHIA、新作『BOYS and』を語る「ここで終わらない。繋がって続いてるということです」

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2024年に結成30周年、2025年にデビュー30周年を迎えるSOPHIAが本日10月23日、ミニアルバム『BOYS and』をリリースした。同ミニアルバムは、1995年のデビュー作『BOYS』をオマージュしたもの。オリジナル作品としては11年ぶりのリリースとなる。

◆SOPHIA 画像 / 動画

新作『BOYS and』は、サウンド&アレンジやアートワークを含め、“SOPHIAがもう一度デビューする”をテーマとして制作された。初期代表曲のセルフカバーに加え、2023年に横浜Kアリーナで初披露された「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」、まっさらな新曲「I&I Wish」といった全7曲を収録。このほか初回限定盤にはデビュー当時限定販売されたVHS『blue on blue』を初DVD化した映像作品も付属するなど、原点も現在進行形も感じられる仕上がりだ。

インタビュー特集vol.1に続くvol.2は、当時のマル秘エピソードを振り返り、現在のメンバー5人が投影された『BOYS and』を詳細にわたって全曲解説。メンバー全員参加のロングインタビューから、SOPHIAの未来が見えるテキストとなった。


   ◆   ◆   ◆

■「State of love」「Like forever」は双璧
■僕の中ではこの2曲があって成立する


──アルバムタイトルの『BOYS and』の“and”の意味から教えてください。

松岡:ここで終わらないということです。『BOYS』という作品から繋がって続いていくという意味ももちろんあるし、今回の作品から“あなた”に繋がるという意味もある。とにかく“繋がって続いてる、一緒に”という意味の“and”です。過去に「-&-」という曲もありましたし、アルバム『ALIVE』のツアーに“そして僕らは老けて行く…”(philosophy-III TOUR'98「ALIVE」"そして僕らは老けて行く...")というのもありましたから。なので、作品単体で成立しているのではなくて、その前後を感じてもらえたらいいかな。

──そうなると、この先に『GIRLS』に繋がる可能性も?

松岡:あります。出しますよ、来年『GIRLS and』を。

──おぉ〜! ではまず、『BOYS and』収録曲について。ここには『BOYS』から「Kissing blue memories」「Secret Lover’s Night」「Like forever」のセルフカバー3曲が収録されたほか、3rdミニアルバム『Kiss the Future』から「State of love」、3rdシングル「Believe」のセルフカバーに加えて、復活後初の作品「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」、そして新曲「I&I Wish」の全7曲が収録されました。選曲の基準は?

松岡:これが面白いんですよ。まず、僕らの過去の歴史にまったく関わりがなかったけど、今トイズファクトリーでSOPHIAを担当してくれてる方。それと、僕らが'90年代中盤から'00年代初期までのトイズファクトリー在籍時に関わってくれて、SOPHIAを誕生から知ってる方。選曲は、そのお二人にお任せしました。10年ぶりの新曲「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」を入れることは最初から決まってましたけどね。


▲松岡充(Vo)

──なるほど。確かにふたつの視点を感じる選曲かもしれません。では、そもそも『BOYS』はSOPHIAにとってどんな作品だったのでしょうか? 当時のエピソードを含めて教えてもらえますか?

豊田:今でこそアルバムを作るとなったら、まず曲を作って、それらを集めてというプロセスを踏んで作りますけど、『BOYS』は当時のライヴハウスで育てた楽曲を集めた作品集という感じかな。当時を振り返ると、自分は演奏能力もなかったし、メジャーでのアルバムの作り方やレコーディングノウハウもまったく知らなかったから、制作は大変でしたよ。今ではサクッとできることも、当時はもがいてもがいてましたからね。たとえば、そのときのレコード会社の人とかスタッフから「ロックバンドは一発録りで演るもんだ」と言われて、ベーシックは一発録りだったんですけど。その時点から苦労しました。

黒柳:事務所が決まったときにあった曲は、デモテープに入ってた4曲だけ。ライブでやってた曲を全部出すしかないという感じで、持ち曲のほとんどをレコーディングして作ったのが、当時の『BOYS』と『GIRLS』だった。

赤松:当時はシングルデビューするのが主流の時代だったんですよ。だけど、「たった1曲で自分たちが表現したいものを伝えるには無理があるから、ミニアルバムでデビューしたい」と松ちゃんが言って、『BOYS』でのデビューになったんです。

都:現代とは違って、知りたい情報をすぐ見つけられる術もなかったし。分かりやすくいうと、東京に出てこないとメジャーデビューもできないような時代だったわけですよ。その夢が叶って『BOYS』でメジャーデビューしたんですけど、華やかなお祝いとかすごい騒ぎが待ってるのかなと思いきや、そんなものはなにもなくて(笑)。アマチュアの頃に抱いていたメジャーのイメージとは違うな、と思ったのを覚えてる。

──『BOYS and』に『BOYS』収録曲を含め、“初期曲をセルフカバーしよう”というアイデアを聞いて思ったことは?

都:僕は単純に面白い企画だなと思いました。

赤松:僕もぶっちゃけ嬉しかったですよ。昔録った曲へのリベンジ…これはどのアーティストも絶対にやりたい気持ちがあると思うんです。そのリベンジの気持ちがライヴアレンジとして表れたりするんですけど、再び作品として残せるのは嬉しいことで。

──実際にレコーディングしてみていかがでしたか?

赤松:昔と同じように演奏しても今のテイストが入る、という意味ではやはり昔とは違う。それは、今回の変化ではなくて、『BOYS』リリース当時から現在まで、ライブを積み重ねていくうちに得た成長だと思うんです。だから、ありきたりな言い方をすると、お客さんと一緒にライヴで育てたアレンジですよね。つまり『BOYS and』に収録したセルフカバーはお客さんと作った、というのが僕の感触です。


▲豊田和貴(G)


▲黒柳能生(B)

──では、初期曲をセルフカバーするにあたって一番心掛けたのはどんなことでしたか?

松岡:今までのレコーディングではディレクターやプロデューサーが常にいて、その方と僕が中心となって作品の方向性やアレンジを創っていたんです。だけど、今回はそういう立場の方を置かずに、作曲者のやりたいことが第一優先。アレンジをあまり変えないのであれば、音色やフレーズを進化させたとしても、あの頃に聴いて感じたことを思い出せるものに。アレンジを大きく変えるのであれば、その曲が持つすべての思い出を包括して表現できるものに、というテーマで進めました。

豊田:自分が心掛けたことは原曲の良さを最大限に生かすということ。長い音楽経験で培ってきたものを使って調理して、曲をブラッシュアップした状態で収めるということですね。

黒柳:今、普通に弾いたらどうなるか、それをやった。俺は小節の中であっちに行ったりこっちに行ったりするようなフレーズを組み立てるんだけど、『BOYS』を作った当時そんな発想はなかったし、思ってもできなかった。今は普通に8ビート刻むだけでも当時とは全然違うし。

赤松:今の俺が過去に戻って、これらの曲を叩いてみたらこうだった、という答えかな。当時はここまで考えられなかったし、俺自身SOPHIAを離れて気づいたことがたくさんあって。活動休止の9年間のうちに培った、メンバーに寄り添えるドラムや歌心。それをモットーに叩きました。

都:僕は、“大人の音楽”。SOPHIAが年相応のロックバンドに見られるようなサウンドやアレンジを意識して創っていきました。今までのSOPHIAの概念にとらわれずに。

──と言いますと?

都:復活公演となった日本武道館や大阪城ホールであれだけの種類のキーボードを並べたり、<SOPHIA Premium Symphonic Night>でグランドピアノを弾いたのは、年相応の本物の音を鳴らしたかったからで。今回のレコーディングもその延長線上なんですよ。昔の『BOYS』を改めて聴いたら、“これはダメだ”っていうところが僕なりにいっぱいあったんですけど、それはそれでいい。デビュー作は、ほとんどのアーティストにとってそんなものだし、当時聴いてたファンにとっては、それが今も宝物だから。ただ、みんなが言ったように自分もその間、成長してきた。そこは今回、前面に出したかったし、そうでなければ年相応の音楽にはならないわけで。だからこそ今回僕は、全て手弾きにこだわったんです。音色ではなく音符で広げて、ハーモニーを豊かにすることも意識して。


▲都啓一(Key)


▲赤松芳朋(Dr)

──では、ここからは収録曲のひとつひとつについて解説をお願いします。1曲目は「State of love」。

松岡:僕の中で「State of love」と2曲目の「Like forever」は双璧なんです。1995年にメジャーデビューするとき、“俺らは無敵だ”と思っていた、だけど阪神淡路大震災があって、自分らの無力さを思い知らされた。そんな中でツアー<SOPHIA TOUR '95 もしもあなたに届くなら…>で全国7ヵ所を回ったんです。ボロボロになって助けを求めている地元を感じながら、俺たちは夢に向かって“イェー”って拳を上げて盛り上がってる…そこにすごく違和感があって。そのときに創ったのが「State of love」と「Like forever」。僕の中ではこの2曲があって成立するので、曲順もこうなりました。

豊田:「State of love」はデビュー前からあった曲なので、懐かしかったです。青春です。最初に開催した無料ツアーから演ってましたね。

黒柳:5曲目の「Kissing blue memories」とか、『BOYS and』には入ってない「Early summer rain」もそうだけど、頭っからパーンとキーボードが鳴るSOPHIAらしい曲だよね。ギターのジャーンではないサウンドアレンジは、当時からSOPHIAにあったな。

都:そのイントロからしてキラキラしてますね。これは、少しファンクな感じで、ロックンロールなピアノアレンジにしました。

赤松:僕は技術が全くない状態でSOPHIAに加入しちゃったというのもあって、ドラムがすごく難しい曲でした。頭打ちや16ビート、どれも当時の自分がちゃんと叩けなかったビートのオンパレードで、悔しい思いをしたのを覚えてる。

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