【インタビュー】Shou(ALICE NINE.)ソロプロジェクトVerde/ 、1stアルバムリリース「辛い思いをさせてしまったファンに寄り添いたい」
◼︎「胸にぽっかり穴が開いてしまいました」という人に対するアンサー
──ここからはそのアルバムについて聞いていきたいと思います。Alice Nine.では歌詞を書き、作曲は数曲しかしていなかったShouさんが、じつはこんなに様々な楽曲作れる人だったのかというのにまず驚かされました。
Shou:自分は音楽の理論とかそんなに詳しくないですけど、メロディーメーカーという意味では、Alice Nine.大半の楽曲でも作曲に参加していたので。“いいメロディーを作れる人“という部分は、本作で実証はできたかなと思ってます。
──そのためにも、全曲作詞・作曲を自身で行なう必要があった訳ですね。制作はどんな感じで進めていったんですか?
Shou:最初、僕はミニアルバムにしようとしてたんです。でも、優介(G/摩天楼オペラ)に「フル(アルバム)いきましょうよ」といわれまして。まじか、と(笑)。優介はひと回り年下なんですね。だけど、すごい努力家で勉強家で、人間的に驚くほどちゃんとしてるんです。だから、そんな彼の夢を壊したくないじゃないですか。優介がいると、普通の何倍も練習してスタジオ行かなきゃいけないって気持ちになるんですよ、ちゃんとやってくるから(笑)。
──こっちもちゃんとやらなきゃ、とモチベーションを上げてくれる存在なのですね。
Shou:そうそうそう。そんな優介に「せっかくだからフルアルバムいきましょうよ」っていわれたらね、それは応えなきゃいけないでしょう。そこで、ぬるい兄貴の背中は見せたくないないんで。
──フルアルバムになった理由がそんなところにあったというのも驚きです(笑)。
Shou: Alice Nine.のメンバーは年齢が近いから、 例えば俺がライブでキーが苦しそうだなと思ったら「キー下げようか」「無理しないでいこう」みたいな感じの優しい対応をしてくれるんですけど、やっぱり優介みたいな一回りも下のメンバーとやってると、常に「もっといきましょうよ」みたいなテンション感なんですよ。そこはまったく違いますよね。
──なるほど。
Shou:俺、性格が体育会系なんですよ。だから、先輩にはビシッとして接するのが当たり前だし、後輩にはダサいとこは見せられないというのがあるんで。後輩には、ちゃんとカッコいいところを見せたいんですよね。
──なかなかそういうところは、Shouさんの外見からは想像できない部分ですよね。
Shou:本当ですか? 俺は体育会系の塊ですよ(笑)。ただ、どうしてもお客さんに対してとなると感謝がめちゃくちゃ湧いてきちゃう。忙しいのに、遠いのに、電車賃も高いのに来てくれてありがとう……!みたいなのが、なんか人一倍出過ぎちゃうんですよね。
──はははっ。やさしい王子様みたいなキャラクターに思われがちだけれども、本当は体育会系の男らしい人なんですね。
Shou:そうです。好きな言葉は友情、気合、努力、根性(笑)。
──わかりやすくいうと、『週刊少年ジャンプ』みたいな人(笑)。目上の人は立てつつ、仲間を大事にして、回りの期待には全力で応えて、後輩も大事にする。筋の通った男気のある硬派な性格なんですね。
Shou:そうやって生きるのが1番しっくりくるんだというのが、ここ10年ぐらいで分かりました。元々自分は高校生の頃はメタルコアとかが好きで。日本ではBRAHMANや山嵐が好きだったんですよ。
──けれども、アルバムはそういうShouさん本来の人間性が浮き彫りになるものではなく、優しくてファン思いな、ある意味パブリックイメージ通りのShouさんの姿が思い浮かぶ作品になっていると思いました。
Shou:今回Verde/で楽曲を作るにあたって、LM.CのAijiさんに相談したとき「Alice Nine.でこういうことやるべきだったよねと思ったことを吐き出しな」とアドバイスをされまして。それを聞いたときに「確かに」と自分でも思って。いきなり僕は新しくなりました、いままでのことはもう関係ありません、ここからソロで歩き始めます、みたいな感じでこれまでのお客さんを突き放すようなことはしないほうがいいというお話しだったんですけど、すごく納得感があって。僕のなかにもバンド凍結によって辛い思いをさせたファンに寄り添いたいという思いがあったから、今回のアルバムはひたすらそういう内容にしたんです。楽曲はAlice Nine.でやりたかった曲調をメインにして、歌詞はファンに寄り添ったものに徹するという。凄く辛いことがあったけれども、涙を拭いて一緒に歩んでいこうという思いに終始しています。いまの時代、もう昔みたいに歌詞カードをじっくり読みながら音楽を聴くという文化はないので、しつこいぐらいにずっと同じことを歌って、やっと相手に通じるんじゃないかなと思っているんですよ。
──あえて、ファンに寄り添った歌詞の内容にフォーカスしたと。
Shou:はい。僕もAlice Nine.が凍結する前の最後のツアーで、2回ぐらい涙が止まらなくなったときがあったんです。それはバンドが凍結して悲しいとかじゃなくて、目の前にいるファンを悲しませていることが不甲斐なくて……。だから、男泣きみたいな感じ。それに報いるようなつもりで、今回の歌詞を書きました。
──傷つけてしまったファンに向け、Shouさんなりに作品を通してけじめをつける必要があったのですね。
Shou:そうです。仕方がないこととはいえ、結果論として、傷つけたり、悲しんだり「胸にぽっかり穴が開いてしまいました」という声をたくさん聞いたので。そういう人に対するけじめというか、アンサーですね。
──そこは、真面目で誠実で責任感があるShouさんらしさが出ているところですね。ここからは収録曲から数曲ピックアップして話を聞いていきたいと思います。[ kei ]さんとコラボした「Lunaris/」。こちらはヴァンパイアーをモチーフにした作品ですけど、ダンスビートなんですよね。そこにのせたメロディが煌めいていて、オクターブ重ねのサビハモまで美しいんです。
Shou:ヴァンパイアーといったらゴシック、メタルみたいなイメージになりがちですけど、いかにそことは違う世界にするかっていうことを考えた曲です。オクターブ重ねの声は、A9時代にL’Arc-en-Cielのkenさんにプロデュースしていただいたときがあって。kenさんはL’Arc-en-Cielの曲でもオクターブ下をよく入れる方なので、その影響です。しかも [ kei ]ちゃんとkenさんも仲がいいので、このチームでやってると、そういうkenさんイズムが出てくるのかもしれません。
──<可不可>のライブで初披露した衝撃作「Deus/」は、そのドラマティックな展開に驚かされました。
Shou:元々は女性声優さんに提供するゲーム音楽として、オーダーを受けて作った曲なので、こんな展開になってるんです。女性だからキーも高いし、ゲーム音楽ならではの戦ってる感じもすごい入ってるし。自分が歌うとは思ってないから、やりたい放題作ったんですよ(笑)。でも残念ながら、ゲーム会社の意向で別の曲になっちゃいまして。この曲はフリーですよという契約だったので、自分のアルバムに自分で歌って入れたんです。
──作った当初から、組曲みたいな展開になっていたんですか?
Shou:そうです。僕のデモの段階からこういう感じだったんですよね。
──そんな濃厚な楽曲に対して、「Stars/」は、Shouさんの柔らかくて甘い声が耳心地よく響いてきて。曲の後半、ドラムンベースに展開していく直前のコーラスの処理。声を飛ばしたりする音像のエフェクトがまた、星空を見ているような美しさなんです。
Shou:嬉しいです。この曲は“スタイリッシュな宮沢賢治”というイメージだったんです。
──なるほど! だから星が流れるように、声が飛んでいくんですね。
Shou:はい。(「銀河鉄道の夜」の)カンパネルラって感じです。
──こんなスタイリッシュなサウンドに英語ではなく、バキバキの日本語を乗せてるところも面白かったですね。
Shou:英語ってある意味、楽なんですよ。リズムが勝手に生まれるから、かっこいいことをやってる雰囲気が出るというか。けど、2023年ぐらいからめちゃくちゃYOASOBIってカッコいいなと思うようになって。リファレンスにしているというのではないんですが、アティテュードっていうのかな。日本人じゃないと作れないような曲のまま、世界に打って出てることがめちゃくちゃカッコいいなと思って。それから自分でも日本語と、日本の歌謡曲的なメロディーを多く採用するようになりました。
──そして、今作のハイライトとなる新曲のバラード「Lily/」。せつないのか明るいのかわからない、その間を繋ぐ優しいメロディーは歌謡曲の要素も感じられながらもどこか独特で。それを徹底して美メロに落とし込んでいるところが素晴らしいと思いました。
Shou:僕はSHINeeというグループがめちゃくちゃ好きなんです。彼らは本国では挑戦的な楽曲にチャレンジしながら、日本で出すものはJ-POPを意識した曲をちゃんと歌ってるんですね。この「Lily/」は、韓国の作家が日本人の好みに合わせて“日本人はこういうのが好きでしょう”と書いた曲……をイメージして作った曲ですね。
──1番最後の「Overture/」は、インスト曲ですが、ここにはShouさんのどんな意思表示が込められているんでしょうか。
Shou:全曲僕が作詞・作曲した作品ですが、アレンジなどにはいろんな人の力を借りているんです。だからこそ、すべてをワンオペで完成させるトラックが1つぐらいあってもいいかなと思って。たとえば[ kei ] ちゃんは全曲ミックス、マスタリングまで自分でやってて凄いなって思うんですよ。
──そういう[ kei ]さんに触発されてやってみようと?
Shou:はい。それでDTM、打ち込みのインスト音楽だったらできるかなと思ってやってみました。入ってる声とか、わざと自分のiphoneで録って音質を悪くしてみたり。遊ぶ感じで作りましたね。
──Shouさんが打ち込みで音楽を作っているイメージは、みなさんのなかには……?
Shou:ないと思いますよ。
──歌詞、デザイン、アートワークに加えて、打ち込みをやっている姿や、メロディーメーカーとしてのセンス。いままで知らなかったShouさんの魅力がいろいろと浮き彫りになったアルバムにもなりましたね。
Shou:そうですね。Alice Nine.では、他のメンバーの制作進行管理をしているうちにアルバムの制作期間が終わるという感じだったんですね(笑)。だけど、そういうものがなくなったから、せっかく商品として世に開け放つのなら僕のいままでとは違った価値観を感じてもらおうと。
──Verde/の始まりとなった「The Wanderer/」自体、ミュージックビデオを含め、楽曲、音色、サウンドアレンジすべてが、いままでとは違った価値観、その扉を開けるような曲でしたからね。
Shou:アルバム全曲、とにかく緻密にやってるんで、ちゃんと集中して聴いてくださったら「面白いことやってるな」と感じていただける方もいらっしゃると思うんです。が、一聴して「これはヤバい」ってなるところにたどり着くには、まだまだ。それでも今回は結構いい感じのものができたんで、ここからもっと世の中が変わるぐらいのものを作っていく──そのスタートラインには立てたかなと思ってます。
──11月からは全国ツアー<Verde/ Hybrid Tour 2024〝Wanderlust/〟>が始まります。福岡公演では武瑠さん、郡山公演ではHIROTOさん、横浜公演では[ kei ]さんとツーマンライブを繰り広げていって、それを12月7日、新宿ReNYでツアーファイナルとVerde/始動1年を記念したワンマンライブへとつないでいく。
Shou:V系シーンのなかで、ソロアーティストとして売れるって、結構無理ゲーというか難しくて。かなり難しいからこそ、なるべくソロアーティストと一緒にやっていったほうが、シーンとして活性化していって面白いかなと思ってツーマンを企画しました。それとともに、Verde/単体としても他のバンドとやりあっても負けない存在になりたいなと思っているので<DEZERT PARTY Vol.16>にも出て、ツアーファイナルとなるワンマンを迎えたいと思います。
──今後のVerde/の活動として、考えていることがあれば教えてください。
Shou:静と動で、1度メタルに振り切ったアルバムを作ろうかなと。あとは、MUCCの逹瑯さんに文学とか朗読とかやったら面白いんじゃない?といってもらえたので、それを融合させたコンセプチュアルな作品を作るのも面白そうだなと思ったり。来年になったら全然違うことをやってるかもしれないですけどね(笑)。
──では最後に、ツアーに向けて抱負をひとことお願いします。
Shou:聴いていただきたい素敵な音楽ができたので、ぜひこのお手紙を受け取っていただいて、ライブのほうにも足を運んでいただけたら嬉しいです。絶対に幸せにするので。よろしくお願いします。
取材・文◎東條祥恵
写真◎Takuya Ohashi(ZeLa Inc.)
ライブ写真◎Hayato Watanabe
1st フルアルバム『V/』
◼︎初回限定盤
品番:REG-0001 税込¥9,680
◼︎通常盤
品番: REG-0002 税込¥3,300
[CD収録内容]2TYPE共通
01.Red/
02.Kafka/
03.Lunaris/
04.Hope/
05.Deus/
06.Vengeance/
07.Stars/
08.Lily/
09.The Wanderer/
10.Overture/
[Blu-ray収録内容]
01.The Wanderer/(Music Video)
02.Hope/(Music Video)
03.Lunaris/(Music Video)
04.Stars/(Music Video)
05.Red/(Music Video)
06.Kafka/(from Verde/ 1st ONE-MAN SHOW「可不可」)
<Verde/ Hybrid Tour 2024〝Wanderlust/〟>
11.17(日)京都FAN J ONEMAN
11.23(土)郡山HIPSHOT JAPAN w/ HIROTO
11.24(日)宇都宮HEAVEN'S ROCK VJ-4 ONEMAN
12.1(日)横浜Bronth. w/ [ kei ]
-TOUR FINAL-
12.7(土)新宿ReNY ONEMAN
Support member
G:優介(摩天楼オペラ)
B:燿(摩天楼オペラ)
Dr:KEN'ICHI