【対談】千秋(DEZERT) × 逹瑯(MUCC)、<This Is The “FACT”>直前にV系シーンへの提言「嘘でも“武道館、行ってらっしゃい”と言ってほしい」

ポスト
no_ad_aritcle

■他がやってないことをやろう
■そういう先輩たちの背中を見てきた


──フェスやイベント主催者としての立ち振舞の話、興味深いです。

逹瑯:千秋もいろんなところに顔を出したらもっとわかってくると思うけど、自分たちの名前でイベントを主催するとしたら、もてなす感じでいくのもアリだと思うんだよね。バンド主催フェスとかに行くとそれがよくわかる。例えば<氣志團万博>なんかは、全楽屋、アーティストごとに翔やんから“今日はありがとうございます”みたいな直筆の手紙が置いてあったり。10-FEETの<京都大作戦>とかROTTENGRAFFTYの<響都超特急>もそうだけど、メンバーが必ずどのステージも観ていて、「いってらっしゃい」ってステージに送り出して、ステージが終われば「お疲れさま、よかったよ」って迎えてくれる。そういうことで“このイベントいいな、また出たいな”って思うし、そう思ってもらえるようにみんながめっちゃ気を遣ってるんだよね、ホストのバンドが。

千秋:僕も気を遣いましたよ。全部のステージに行ったし。

逹瑯:あとは会話だよね。演者が“このイベントにまた出たい”ってリスペクトしてもらわないと、いいイベントには育っていかないから。それは言葉にして、相手に伝えないとわからないと思うな。

千秋:僕は向いてなかったかも…(笑)。

逹瑯:向いてないよ(笑)。だって千秋は、周りに気を配るよりも、自分がかまってほしいかまってちゃんなんだから。

千秋:はい(笑)。でも楽しかったんです。お客さんが集まってくれたし、それが一番嬉しかったので。それは大きかったですね。


▲MUCC

──またやりたいという思いにもつながっていますか?

千秋:もちろんあるんですけど、向いてないので。

逹瑯:いや、絶対やったほうがいい。千秋は当日の気配りというより、前もって思いを伝えるという方向でいいんじゃない? 「こういう思いがあってこうなんだよね」っていうことを各バンドに伝えた上で、当日のケアは他のメンバーに任せるとか。

──実際、言葉にして伝えていくこと、自分発信でコミュニケーションを取っていくことは難しいところもありますか?

千秋:まず、それができないから社会不適合者になりつつあったのを、バンドが救ってくれたっていうのはありますからね。ロックバンドって横のつながりがあって、歴史を継いできたと思うんですけど。僕らはもっと横のつながりを大事にしなあかんのかなと思いつつ、それは向いてないからなと思いつつ。でも、お客さんが楽しめるものを作るには、演者が楽しいのが一番なので。勉強になりましたね。


──バンド同士の横のつながりを増やしていくことは、今後のシーンで新たな土壌を築いていくためのいい機会になりそうですが。

千秋:一番むずいのが、フックアップしてくれたのってMUCC先輩しかいなくて。僕は器がちっちゃいので、受けた恩は返すけどっていう感じが出ちゃうんです。土壌を僕らが作るとか、そんな大それたことはできないし。どうなんですかね、そこはMUCC先輩のほうが逆に考えてる気がします。

逹瑯:考えてるっていうか、自然なことだったんだよね。それこそうちらは、地元の先輩のラヴィアンローズとかcali≠gariとかが当たり前のようにイベントに出させてくれたりとか、ツアーに連れて行ってくれたりとかしたから。うちらが東京に出たばかりの頃に、cali≠gariが東京でやっていたcali≠gari主催イベントに「今度うちで面倒みることになった若いバンドだから、よろしくね」みたいな感じで出させてくれたり、あちこちに紹介してくれたりね。“もっと楽しいことをやろう”とか“他がやってないことをやろう”っていう先輩たちの背中を見てきたから。それが、酸素を吸って二酸化炭素を吐くくらいの自然な思考になってるのかもしれない。

──なるほど。だから意識してフックアップしているわけじゃない、という発言につながるわけですね。

逹瑯:そう。そもそも楽しそうだし。“みんなやってないんだったら、今やれば話題にもなってくれるかな”とか“どうせやるなら最初がいいな”っていうくらいですね。今回のツアー<Love Together>も、そもそもはワンマン用に押さえていたハコだったんですよ。でも途中から、「こういう企画がやりたい」って無理矢理通したから、スタッフは大変だったと思う。「この会場で、ツーマンで、MUCCの物量だと、転換がマジでしんどい」とか、「リハの時間もこれくらい取らなきゃいけない」とか、「やってみないとフォーマットが作れないから、とりあえずこれだけの時間をくれ」って言われたり。で、いつもワンマンで回るよりも、開場開演時間を遅くしたんです。結局蓋を開けてみたら、間に合いそうだったので、次回は時間も早められるねっていうのは思ったし。スタッフには結構無茶してもらいましたね。


──こうした次につなげるための試行錯誤やステップアップは、<【This Is The "FACT"】>にもありそうですね。

千秋:今回の<【This Is The "FACT"】TOUR 2024>はまた別物ではあるんですよね。初回の2017年当時は、“自分らがこの階段を上がるために”という思いが一番デカかったんです。もちろん楽しむっていうのも大事ですけど、僕らが頭打ちしていた時期なので、“何かしなあかん”という思いがあって始めたものが、<【This Is The "FACT"】>。“ヴィジュアル系を背負っていく”っていう覚悟は別にないんだけど、“背負っていったほうがいいんちゃう?”って、そんな気持ちで始めて年月が経って。“今は、背負っていくんだ”っていう感覚が変わったというのかな。

──バンドも大きくなっていますし。

千秋:いや、おじさんになったというか、結構フラットな人間になってきたんですよ。“潰してやろう”とかそういうのもないし。だからこの<【This Is The "FACT"】>っていうのは、武道館ワンマンが終わってからも、何かしらの形で続けていきたいタイトルでもありますし。続くためには僕らも力をつけないといけない。もっとより良くしていこうっていう、そんな気持ちなんですよね。ただ、この規模でのツーマン3本っていうのは、なかなか実現できない。むずいんですよ。労力もいるし、スタッフも大変だし、もっとぽんぽんできないもんですかね?


▲DEZERT

──そこはバンド同士の関係性だけでは成り立たない部分ですか?

千秋:もちろんそれはあるんですけど、それ以上にみなさんも背負っているものがあると思うので。むずいんですよ。だから、どんどんどんどん若手を起用してくれたら、やりやすくなると思うので、MUCCにはもう一度<Love Together>をやっていただきたいなと。

逹瑯:はははは。まぁまたやると思うよ。

◆対談【3】へ
◆対談【1】へ戻る
この記事をポスト

この記事の関連情報