【対談】千秋(DEZERT) × 葉月(lynch.)、<This Is The “FACT”>直前に語る異色の存在感「ずっと謎で、だからこそ怖い」
■ヴィジュアル系のボーカリストとして
■一番強いタイプですよね、千秋君は
──先ほどの千秋さんの発言に「DEZERTというバンドが当時行き詰まっていたのもあるかもしれないし。それも発端となって、今回の<【This Is The "FACT"】TOUR 2024>にもつながるんです」という言葉がありましたが、“今だったら最高なのに!って思える”という気持ちを果たすのが、<【This Is The "FACT"】TOUR 2024>ということなんですね?
千秋:<This Is The FACT -EXTRA->から6年の間に、僕ら自身にもいろんなことがあったし、lynch.先輩は日本武道館ワンマンを経験したり、コロナ禍でお互いにもがいている部分もあった。そんななかで、それでもバンドは続いていて。俯瞰で見てもシーンにはいろんなことがあって。というので、やるならここしかないだろうって。
──このタイミングで再び先輩たちとのツーマンを、と。
千秋:lynch.の地元・名古屋で、Sadieの地元・大阪で、東京ではMUCCとやりたいと思ったんです。で、lynch.先輩はいつスケジュールが空いてるのかを、早めの段階でSORA (Dr)君に聞き出してもらって。lynch.先輩からは二つ返事で快諾いただきました。それも一番最初にOKしてくださったのかな。僕は嫌われてると思ってたから、意外だったんですけど。
葉月:ははは! そんなことないから。
千秋:すごくありがたく思っています。
▲lynch.
──お二人共フロントマンでありボーカリストですが、そういう視点で、千秋さんは葉月さんのスタイルについてどう感じていますか?
千秋:葉月さんはシャウトが独特っていうのが、最初に聴いたときの第一印象としてありましたね。僕のなかでは、lynch.の葉月さんはひとつの技術としてシャウトを使っているという感じがあって。…これは媚び売ってるとかでなく、僕のシャウトの仕方は葉月さんの真似からでしたね。だから、シャウトがすごくカッコいい人っていうイメージ。
葉月:へええ。
千秋:特にlynch.は最初から、サビでシャウトするっていう海外バンドみたいなことをしてたと思うし。
──たしかに葉月さんにはシャウトのイメージがあります。
千秋:うん。あとはまず、手足が長いなっていう。
葉月:はははは!
千秋:ボーカリストとしてノースリーブでステージに出られるのがすごい。たぶん、これはいろんなボーカリストが感じてると思うんですけど、出れないんですよ、ノースリーブでステージに。カッコつかないから。
葉月:そう?
千秋:ノースリーブが似合う人と似合わない人がいて。本当は僕もノースリーブで出てみたいんですけど、ちんちくりんになっちゃうから出れないっていう(笑)。手足長いなぁと思ってます。
──スタイリッシュですよね。逆に、千秋さんというボーカリストを葉月さんはどう見ていますか?
葉月:ヴィジュアル系のボーカリストとして、一番強いタイプですよね。言い方を変えれば、変わったタイプというか。千秋君本人はどう思っているかわからないけど、いい歌を歌おうとか、そういうことへの興味はもうなさそうで、そんなことよりも“ステージでバンドをやってる俺を見ろ”みたいな、そういうタイプに見えて。それがすごく美しい、というかね。
──なるほど。
葉月:言葉は悪いですけど、ただ歌が上手いだけの人って、ものすごくたくさんいるんです。だけど、その逆というか、圧倒的な存在感を見せられる人は少ないから。そういうタイプなのかなっていうのは、勝手に思っていましたね。もちろん上手くないとかじゃないですよ、そういうことを超えている。一番怖いタイプです。
──バンドのフロントマンとして、お二人の存在感は強烈です。それに加えて、お互いがそれぞれのバンドでのメイン・ソングライターというところで、バンドの世界観を作り上げていると思うのですが、それぞれのアプローチについてはどうですか?
葉月:千秋君がメインコンポーザーなの?
千秋:そうです。
葉月:DEZERTももう結成から13年やってきて活動歴が長いけど、今のところ曲には困らない感じ?
千秋:そうですね。僕、あまり書きたくて曲を書いてるわけじゃないので。
葉月:ん? 面白い話きた。
千秋:自然とそうなったんです。たぶんメンバーが、そういうバンドにしようって言ってくれたのかな。俺が持ってきた曲で、俺の説明付きでアレンジをして、歌詞も全部俺が書いて、みたいな感じなんです。なので、特に困らないですね。
葉月:なるほどね。千秋君のイメージがそのまま投影されているから、困らないということか。lynch.も僕がほぼ音源と変わらない状態まで作って、それをみんなに渡して。「変えたいところがあれば変えてもらってもいいですけど、ここだけは変えないでください」っていうところをメンバーに伝えたり。で、みんなに覚えてきてもらって演奏するっていうパターンなんです。仕上がりはそんなにデモと音源は変わらないと思いますね。
──変わってもかまわない?
葉月:バンドらしさみたいなものはlynch.はステージで出ているから、そのほかは別にいいかな、という感じでやっているんですけどね。ただ、lynch.は活動が長いっていうのもありますけど、“もうこれ、曲できねえぞ”っていう時期もあって、結構困りましたね。今は、二周くらい回って大丈夫になってきたんですけど。新しいものを生み出そうとし過ぎた時期があって。そのときは無理でしたね。
千秋:そういうときはどう乗り越えたんですか?
葉月:“今までやったものをやってはいけない”という考え方をやめようと。それが自分たちが作ってきた“らしさ”でもあるはずだから。それをいじくりまわしながらやっていくのも、別に悪くないなという思いがあって。だから今のほうが、もがいていた時期よりもファンの人も楽しめていると思うし。いい感じだと思いますけどね。
▲DEZERT
──DEZERTでも制作面での大変さはありますか?
千秋:うちはまず、別の問題があるというか。曲作りや音楽面に関しては、みんな信頼してくれてる自信があるんですけど。まあ、僕の性格面だったりは…。
葉月:ははは!
千秋:という部分を乗り越えた上での、武道館ワンマンだと僕は思っているんです。
──12月27日にDEZERT初の日本武道館ワンマン<DEZERT SPECIAL ONEMAN LIVE at NIPPON BUDOKAN「君の心臓を触る」>が開催されます。
千秋:だから、僕らの武道館も前途多難になるはずなんですよ。順風満帆じゃないっていうか。武道館って、さっとやるか苦しんでやるかのどちらかだと思っていて。lynch.も後者だと思っているんです。
葉月:そうですね。一度中止になりましたし(2021年2月3日に開催予定だった<15TH ANNIVERSARY THE FATAL HOUR HAS COME AT 日本武道館はコロナ禍の緊急事態宣言で中止に。<“THE FATAL HOUR HAS COME” AT 日本武道館>を2022年11月23日開催)。
千秋:2018年に幕張メッセをやったときの話も聞いていて、“何人も入ったんだ、すげえな!”みたいな。そこから決まっていた武道館ワンマンがコロナ禍の影響で流れてしまったり、というストーリーがあるじゃないですか。lynch.が歩んできた道は、わりと他のバンドと違うんですよね。セルフマネジメントや、メジャーデビューの仕方とか、その後の歩みもそう。言うてもDEZERTって、自主でやってから事務所に所属してっていう、実はど真ん中を歩いてきているバンドなんですよ。僕にとってlynch.はずっと謎で、だからこそ怖い(笑)。lynch.が対バンにいると、誤解を恐れず言えば、“ええっ…”てなる。
葉月:はははは。
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