【ライブレポート】Eins:Vier、<Risk from Inside 1994>ファイナル大阪公演で「たとえ声が出なくなっても」
梅雨明けが宣言され、猛暑になった関西・大阪。この時期にライブを行うことが定例になってきたEins:Vierは、2023年から自身の過去のマイルストーンとなったコンセプトライブを開催している。2024年はメジャーデビュー直前の1994年に行われた<Risk from Inside>ツアーのセットリストを模したもの。<Eins:Vier LIVE2024「Risk from Inside 1994」>のファイナル公演が7月21日、大阪・心斎橋ANIMAで行われた。同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。
◆Eins:Vier 画像
1994年と言えば、ヴィジュアルインディーズシーンを語るうえで欠かせないEins:Vierの名盤『Risk』がリリースされた年であり、今も最前線で活動を続ける多くのバンドがデビューした年でもある。互いにしのぎを削り合い、切磋琢磨し合うなど、シーンが活発化していたのもこの時期だ。東京2daysと大阪2daysで開催された<Eins:Vier LIVE2024「Risk from Inside 1994」>の最終日は、1994年当時の背景も併せ持った2024年のEins:Vierのライブの最終日でもある。
定刻に場内が暗転すると、お馴染みのSE「the Pink opaque(Cocteau twins)」が流れ、おもむろにメンバーが登場すると赤い照明が交錯。激しいギターのフィードバックから「Everything moves for me」でライブの幕が開いた。サングラスを掛け、所狭しとアジテートし動き回るHirofumiにフロアの熱量は一気に沸点間近まで上がる。続く「In your dream」では一転して、一気に彼らの世界へと誘われ、オーディエンスは当時を思い出すかのように身振り手振りで曲を全身に受け止め、感情を表現しているようだ。
7月21日はEins:Vierが1995年にメジャーデビューした日とあり、MCでは「29年前の今日、メジャーデビューしました。このデビュー日に地元大阪でライブができることを本当に幸せに思います」とHirofumiが改めて感謝を伝えると、コロナ禍で歓声が自重されていた反動か、ひときわ大きな歓声が上がった。
ライブ中盤には「Kiss is sleeping pilles」「Nusary tale」「Shy boy」「Notice」といったメディアムテンポの楽曲でじっくり聴かせ、「My only girlfriend」と彼らのライブでは欠かせない代表的な楽曲「Not saved yet」が披露されると、多くの歓声が湧き上がる。「For love that is not love」ではシンガロングが巻き起こり、Yoshitsuguのスペイシーで幻想的なイントロを挟んだ「and I’ll」、「The Hallucination for this only night」と続き、本編ラストは、バンドで最初に作った曲でありEins:Vierの方向性が決まったという「I feel that she will come」で締めくくられた。
Lunaの激しいベースのかき鳴らしから始まったアンコール1曲目は「The Prayer」。魂を削るかのような渾身のプレイが観るものを魅了していく。続けて披露された永くライブの大トリを担ってきた「In a void space」は既にこの頃から存在、キャリアという年輪から滲み出る渋みを纏い、更に壮大かつ荘厳な楽曲に進化しているように感じる珠玉の名曲だ。こういった楽曲を生み出し昇華させ続けることができるのがEins:Vierの強みであり唯一無二の存在たる所以であるということは間違いない。
しばしのインターバルを経て、ダブルアンコールに応えるためにステージに再び姿を現したEins:Vier。Yoshitsuguはビールを片手に登場し、ファンの声援が心地よいようで、充実感を漂わせている。Eins:vierのサウンドの象徴的存在かつ根幹でもあるディレイを効果的に使ったYoshitsuguのギターサウンドは、エモーショナルな部分と、時に“ギターおばけ”と称されるほどの正確性とサウンドメイクを併せ持ち、数々のアーティストのサポートを担うなど職人堅気な印象もある。一方でEins:Vierでは気心の知れすぎたメンバー達がいることもあり、自由度が増している様子も感じられる。
そのYoshitsuguと抜群のコンビネーションと阿吽の呼吸を生み出しているのがサポートドラマーの岡本唯史だ。メンバーに変わり、自身のSNSでの広報活動もお馴染みで、リユニオン後のEins:Vierには欠かせない存在であることはメンバーのみならずファンも認めるところだろう。そしてMCでLunaが本ツアーを総括した。
「今回はあえて大阪をファイナルにしました。今後のことは何も決まってないけど、なるものはなるし、ならんもんはならん。この4本すごく楽しめたし、本当にありがとう」
近年、思うように身体の調子が上がらないというLunaではあるが、今回のツアーもかなり身体に無理があった模様で、彼としては少々不本意なライブとなってしまっているような印象も否めない。が、それでも持ち前の気合で乗り切るあたりに不撓不屈の精神を感じずにはいられない。これもまさに当時培ったロックスピリッツであろう。
続けて披露されたのは「Stay and Walking」。「Risk」リリース当時はツアーに明け暮れ、クリエイティブの時間が作れない中で唯一出来上がった曲であり、その後の自信につながったという曲が「Stay and Walking」だ。“僕達は止まる 裏切りを捨てここで 僕達は歩く 願いを持ち明日へと”──この歌詞が持つ意味は当時と現在では若干変わっているかとは思うが、この日の演奏を聴くものにとって、Eins:Vierの本質自体は何も変わっていないことがわかるのではないだろうか。ラストの「Both we and audience」ではHirofumiが叫んだ。
「たとえ声が出なくなっても楽器を弾けなくなっても俺たちの心に音楽は鳴り続ける」
ステージ前方に3人が集まり演奏すると、無数の腕がフロアから伸びステージと一体となり、大合唱が起こるなど、まるであの当時のようなノスタルジックを持ち合わせたような光景となった。こうしてEins:Vierの2024年のライブは大団円で幕を降ろした。
Eins:Vierがいずれレガシーとして後世に語り継がれていく存在であることは信じて疑わないが、30年前の楽曲とセットリストが時を経ても色褪せず、令和のこの時代に熱量も変わらずに再現されたことにEins:Vierというバンドが当時から稀有な存在であることが証明されたように思う。とともに、まだまだシーンの最前線で活動し続けるEins:Vierを見続けていきたい一夜となった。
撮影◎うらてん
■<Eins:Vier LIVE2024 ”Risk from Inside1994”>7月21日@大阪・心斎橋ANIMA セットリスト
01. Everything moves for me
02. In your dream
03. Kiss is sleeping pilles
04. Nursery tale
05. Shy boy
06. Notice
07. My only girlfriend
08. Not saved yet
09. For love that is not love
10. And I'll
11. The Hallucination for this only night
12. feel that she will come
encore
13. The Prayer
14. In a void space
W. encore
15. Stay and Walking
16. Both we and audience
END SE / Such A Little Thing Makes Such A Big Difference (MORRISSEY)
▼ライブスケジュール
7月13日(土) 東京・Shibuya WWW
7月14日(日) 東京・Shibuya WWW
7月20日(土) 大阪・LIVE HOUSE ANIMA
7月21日(日) 大阪・LIVE HOUSE ANIMA
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