【インタビュー】清水美依紗、新曲「Wave」に込めた感情の波と挫折と躍進を語る「小さな幸せは一輪の花からでも受け取れる」

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■私の表現のエゴは一切ナシにして
■歌詞を話すことに集中して歌っています


──メジャーデビューから2年経って、何か変化を感じますか?

清水:「変わったね」って結構言っていただけるんですけど、自分ではあんまりわからないです(笑)。目の前のことに一つずつ向き合ってきたら、ありがたいことにたくさんリリースができて、ミュージカルも出させてもらえていて…。自分がやりたいと思っていた夢が着実に実現しているという実感はあるんですが、とにかく楽しみながら目の前のことをやっていたら時が経っていました。常に新しいことが舞い込んでくるとどうしてもアウトプットが多くなってしまうので。自分でちょっとトレンドとは違う新しい音楽を探して聴いたり、学ぶ楽しさを忘れないように心がけています。

──根本的に音楽オタク、歌オタクという部分が今も根っこにあるんですね。

清水:そうですね(笑)。でも、パフォーマンスする時はあまり頭で考えすぎずに臨みたいから、インプットしつつも意識しすぎないようにしています。

──そして、新曲「Wave」は、アニメ『僕の妻は感情がない』(僕妻)のエンディングテーマということで。サラリーマンとロボットの恋物語という独特の作品ですが、どういうふうにイメージを掴んでいったんですか。

清水:もともとエンディングテーマに起用されることが決まる前から「Wave」の原曲はあったんです。というのも…父が2年前に亡くなって、その出来事をきっかけに3rdシングル「Home」の歌詞を書いたんですけど。本当に苦しい気持ちで歌詞を書きながら、自分の感情との向き合い方に葛藤する中で、「Home」とは別に「Wave」が生まれたんです。感情の起伏を“波”に見立てて作った「Wave」が、感情にフォーカスを置いているアニメにぴったりということでエンディングテーマに決まって。原作漫画を読んで、ちょっと歌詞を書き変えたりしました。『僕妻』は家事ロボットと結婚して新しい家族のかたちを作っていくストーリーですけど、私も家族のことを考えて「Wave」を作っていたので、何かつながっている縁があったんだなと思います。


──確かに『僕妻』はロボットを題材にしつつ、描かれているのは家族愛や人とのつながりですもんね。

清水:そうですね。パンチの効いたタイトルですけど、読むと温かい気持ちになれる作品だなと思いました。「Wave」も、自分の感情を表しつつ、メロディはちょっと明るく作ってほっこりするイメージだったので。そういうところもぴったりだなって。

──歌詞を読んで特にグッと来たのが、後半の“見えない感情が押し寄せるたびに 幸せになっていいのだろうかと 普通に笑って 優しさに抱かれて”という部分で。つらいことも起きる世の中で、素直に幸せを感じていいのかという感覚は、今、共感できる人が多いんじゃないかなと思います。

清水:その歌詞が出てきたのは、それこそ父のお葬式の時でしたね。自分の中に見えない感情が押し寄せてきて…。でも、お葬式では一度も泣かず、普通に笑って見送ったんです。そのあと外を散歩していたら、本当に素敵なお花に出会って、優しさに抱かれた感じがしたんですよ。見えない感情が押し寄せた時、まわりの優しさを感じ取れなくなってしまうかもしれないけれど、小さな幸せというものは一輪の花からでも受け取れるんだよ、という想いを込めました。その時のお花がシングルのジャケットにもなっているので、まさにその部分の歌詞とジャケット画像がつながっているんです。

──素敵ですね。歌う時も、癒やしたいとか、優しい気持ちを込めたんですか?

清水:いや、レコーディングではむしろ状況や感情を説明しているセリフのような感じで歌いました。この歌詞を書いたのは自分ですけど、やっぱり曲を聴いた人たち、私のパフォーマンスを観た人たちそれぞれの捉え方をしてほしいので。私の表現のエゴは一切ナシにして、とにかく歌詞を話すことに集中して歌っています。歌詞を置いていくようなイメージかな。メロディも同じような旋律が淡々と繰り返されるようにして、全部同じように歌うことでより歌詞を引き出すことができるんじゃないかなと思ったんです。

──なるほど。そういう歌い方は新鮮だったのでは?

清水:たしかに新鮮でしたね。たとえばミュージカルで演じる時はもっと熱っぽく歌いますし。そういう表現をあえてなくしたら、またオーディエンスが新しい受け取り方をしてくれるんじゃないかなと思ってチャレンジしました。わりと喋り声に近い音域でメロディをつけているので、ささやいているような息が多く含まれているのも新しいと思います。


▲「Wave」MV撮影@タイ

──作曲クレジットはMitsu.Jさんと清水美依紗さんの連名ですが、どういうふうに作っていったんですか?

清水:Mitsu.Jさんは、メジャーデビュー曲の「High Five」や「Suger」「Message」も作っていただいた方で、私のパーソナルな部分も知ってくださっているんです。今回は、私がメロディを歌って、そこにMitsu.Jさんが音を付け足して…というふうに作っていきました。

──曲の始まりはラジカセの再生ボタンを押すような音とラジオボイスで。美依紗さんの歌に寄り添うAメロのオケは、アコースティックギターのアルペジオをミュートすることで、バイオリンのピチカートのような効果を生んでいます。とても繊細なアレンジですね。

清水:Mitsu.Jさんと対面で一つずつ作っていったんです。「ここはギターにしたほうがいいかな」「ここにラジカセの音入れよう」とか、全部話し合いながら。

──だから歌とオケのバランスに優れているんですね。全体を通して音数はそんなに多くないですが、コーラス部分に厚みがあって、サビの盛り上がりも美しい。

清水:そうですね。コーラスはMitsu.Jさんがつけてくださったんですけど、音数が少ないぶん、コーラスがいいふうに前に出ているなと思います。自分が作曲と作詞に参加したことも含めて、今まで出してきた楽曲とは違う繊細な楽曲ができたと思っていますね。作詞作曲はこれからもやっていきたいので、普段から、日々感じたことをちゃんとメモするようにしているんです。すぐ忘れちゃうので(笑)。


▲「Wave」MV撮影@タイ

──「Wave」のミュージックビデオはタイで撮影されたとのことで、こちらも開放感あふれる気持ちのいい映像になっています。撮影はいかがでしたか?

清水:海外で撮影してみたいという気持ちがずっとあって。「Wave」はアコースティックなムードだし、「波を連想させる場所で撮影したい」ということをチームで話し合ったら、「タイのプーケットはどう?」とご提案いただいて実現しました。すごく楽しかったですね! めちゃくちゃ暑かったですけど(笑)。タイの街並みや風景で華やかな映像にしつつ、歌と同じように、わりと担々とした表情で歌詞を喋るように意識して撮影しました。開放感のあるタイの鮮やかな風景と私の表情のギャップを感じてほしいです。

──最後の夕陽がとても綺麗で見入ってしまいました。

清水:めちゃくちゃ綺麗でした! もう泣きそうになっていたくらい。こんなに美しいものが世界にあるのに、なんで私はいろんなことに悩んだりするんだろう、自分はちっぽけだな…って。自然って偉大ですよね。

──わかります。撮影の日にたまたまあれだけ綺麗な夕陽が見られたんですか?

清水:そうなんです。雨季だったので、いつ雨が降るかわからなかったんですけど、撮影した2日間とも綺麗に晴れて、天気に恵まれてました。本当に綺麗で、心が洗われました。

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