【インタビュー】MUCC、逹瑯が語る三度目のメジャーデビュー作の濃厚さ「ラヴソングを気持ち悪くしたいと思った」

ポスト
no_ad_aritcle

■知ってはいけない世界
■そういうドキドキ感をスパイスとして


──歌詞については、1990年代というキーワード以外にミヤさんからリクエストはあったんですか?

逹瑯:ないですね。曲調が1990年というだけで、もう好きに。こういう感じの曲だから、俺としては何か気持ち悪いラブストーリーを書きたいなって。“気持ち悪いラヴソングを書きたい”んじゃなくて、“ラヴソングを気持ち悪くしたいな”と思ったんです。本人たちはすごく綺麗なラブストーリーだと思っていて、真剣な気持ちだとしても、皮一枚、包んでいるオブラートみたいなものを剥ぐと愛憎や欲望が絡みついてくる、みたいなところをフィーチャーして。恋愛において、冷静さを欠いているぐらいのハマり具合の人たちは周りからは“アイツら気持ち悪いな”って見えたり、“純粋になればなるほど気持ち悪いぞ”っていうところを書きたかった。全部皮膚を剥いで、筋線維同士の恋人同士が愛し合ってる、みたいな感じに生々しくしたいなって。だから同じことを、曲調も変えて全部言い方を書き換えると、すげぇ綺麗なラヴソングをたぶん書けますね。羅列した言葉を上から全部置き換えて、同じ内容を一行ずつ綺麗な言葉で書いていったら、全然違う綺麗なラヴソングになる。

──肉欲もちゃんと認め、綺麗ごとではない部分を描いているからこそ、生きた人間同士の恋愛の真実が浮き彫りになっていますよね。生々しいんですが、嫌悪感は不思議とないんです。ここまで振り切るのに迷いはなかったですか?

逹瑯:そうですね。ギリギリのラインの気持ち悪さを詞として落とし込むというか、遊びながら書いていたので。

──谷崎潤一郎の『痴人の愛』をふと思ったのですが、非常に文学的ですよね。

逹瑯:読まないので、全然分かんない(笑)。歌詞を書いている中でも、今回BUCK-TICKリスペクトはめっちゃ強いですね。俺が小学生の頃、兄ちゃんの部屋にあった『TABOO』(4thアルバム/1989年発表)のカセットテープを、兄ちゃんがいない間に盗み聴きしてたんです。その「SEX FOR YOU」がめちゃくちゃ衝撃だったんですよ。“こんなエッチな曲があるのか?!”と。あの時の衝撃を未だに覚えているので、今回“SEX”って単語を遣いたくて。それも、勢いのあるものじゃなくて、このドッシリとしたグラマラスな世界で遣いたかった。最近は、「子どもが出来て家族で聴いてます」みたいなファンの方が増えてきているので、そういう小さな子どもが「お母さん、何聴いてるの?」みたいな。そんなインパクトがあったらずっと覚えてるだろうなって思うんです。


▲ミヤ(G)

──逹瑯少年がかつて櫻井敦司さんの筆致に震えて、見ちゃいけないもの見た、禁断の世界に触れた、そのドキドキ感が投影されているんですね。

逹瑯:知らない世界だったし、知ってはいけない世界をくれた気がする。そういうドキドキ感がスパイスとしてあったらいいなって。

──大胆な言葉遣いは“何かしらの覚悟があったのかな?”と想像していましたが、櫻井さんへの敬意があったんですね。

逹瑯:覚悟は別にないですけど、想いはあるかな。

──漢字の選び方を、歌詞カードを見て初めて知る楽しみもあります。“ハイになる”というフレーズに“廃”を用いるなど、デカダンな言葉選びにこだわりを感じました。

逹瑯:最近、フィジカルでCDを手に取ってくれる人って貴重だなと思うんです。そこにある“モノ”に楽しみを覚えている人にちゃんと楽しみを提供したい、というか。サブスクだと歌詞も垂れ流されていってしまうので、ちゃんと読み物として、言葉の選び方とかでも楽しませてあげたいなっていう感じかな。

──歌唱に関してはどうでしょう? レコーディングはいかがでしたか?

逹瑯:このタイプは結構得意分野なので、スムーズでしたね。

──徳間ジャパンのプロデューサー(宗清氏)は厳しい選択眼をお持ちの方という印象です。今回は逹瑯さんに何かおっしゃいましたか?

逹瑯:レコーディングはスケジュールの都合で立ち合いがなかったんで。楽曲に関しての感想はいっぱい言ってくれますけど、「こうしたほうがいいんじゃないか?」とかの意見はほぼなかったかな。「この曲がこうだったら、それを軸に付随するアイデアとしてこういうふうに思うんだけど、どう?」とか。こっちからもそういう相談はいっぱいあるんですけど、楽曲そのものに関しては「最高です!」しかなかったですね。せめぎ合いがあったのは、シングルとして出す時の曲数や、パッケージの形態をどうするか?というところ。メンバーとレコード会社とのディスカッションがあったぐらいでしたね。この曲以外にメンバーが出した曲を「どの曲もしっかりしててクオリティー高いね」と言ってくれましたし、“おだてられてるのかな?”と思うぐらい、手放しで好きにさせてくれましたから。


▲YUKKE (B)

──それだけMUCCを認めている、ということですね。ミュージックビデオも濃かったです。

逹瑯:監督のYUTAROくんがすごくアーティスティックなので。ソロのほうでも撮ってもらっていて、昔から知ってるんですけど、MUCCとしてちゃんと絡むのは今回が初めてでした。MVはだいたいいつも「ここのカットをこうして」とか、特にミヤさんが細かく指示するんですけど、「愛の唄」のMVはほぼほぼ一発オッケーでした。

──演奏シーンと両軸で描かれる妖艶なシーンは、男女の絡み合いではなく、女性一人だけという表現の仕方も良かったです。

逹瑯:曲のストーリーを追っていくというより、曲から感じる匂いをヴィジュアルに落とし込んだという。イメージビデオに近いですよね。

──今回の衣装は、楠本まき先生の世界観を彷彿とさせます。揃いの衣装というアイデアはどなたが?

逹瑯:「お揃いにしようか」と言ったのは俺です。「25周年イヤーが終わった次の一発目の新しい動きとして、3人が揃いの衣装でバンと出たらインパクトあるんじゃない?」って。ずっとやってなかったから、このタイミングでね。最初は「完全なお揃いにしようか」と言っていたんですけど、「パッと見、統一感がありつつ、マイナーチェンジして一人一人アレンジされている感じにしようか」と。で、こうなりました。

◆インタビュー【3】へ
◆インタビュー【1】へ戻る
この記事をポスト

この記事の関連情報