【インタビュー】the superlative degree本格始動、1st EP『導火』でシーンに完全帰還「“いつかまた”みたいなことはしない」

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■だってロックバンドをやってるんだもん
■痛々しいほうが絶対カッコいいし楽しいじゃん


──SHINGOさんからすると、さまざまなサポート経験から得たことが今のバンド活動に活きているところも多いですか?

SHINGO:いっぱいあります。サポート現場では要求されたことに全て応える必要があるので、場合によっては自分の個性を抑える必要がありますし、何よりどの現場でも大切なのはヴォーカルの呼吸とドラムの呼吸を合わせることなんだということは、いろんなかたちで勉強させてもらってきてますね。章人さんとは今ちょうど縦のラインとしての関係性を構築していってる最中なんですが、いつも「自由にいっぱい叩いていいよ」って言ってくれてるので僕はとても楽しくやれてます。

章人:SHINGOが持ってるものは、出来るだけ全部出してもらったほうがいいと俺は思ってるんですよ。だって、ロックバンドをやってるんだもん。うるさかったり、痛々しいほうが絶対カッコいいし楽しいじゃん(笑)。

──大変素晴らしいお言葉ですね。私もうるさくて痛々しい音は大好物です(笑)。

章人:変に割り切った感じとか、逆にユルい感じとか、そういうのは別に要らないんですよ。今さらだけど、というか。今さらやるからこそ、自分が子供だった頃に感じてたような初期衝動をさらに深く追求していかないと。SHINGOとだったら、このバンドでだったら、今それをやっていけるんじゃないかっていう気がしてるんです。

──すなわち、そのような想いがthe superlative degreeというバンド名には託されているということになりますか。

章人:そう。意味のあるバンド名にしたかったんですよ。これに決めるまではめちゃくちゃ悩みました。

SHINGO:なんだかんだで、半年くらいの間コロコロ変わってましたよね(笑)?

章人:三転か四転して、その間に出て来たバンド名は今回出すEPの曲名「アイデンティティコード」と「玉響」に転生したし、レーベル名の“hurt chord”もバンド名候補だったので全て無駄にはしてないです(笑)。でも、実は引退した時点で、次にバンドをやる時はthe superlative degreeにしたいって俺は思ってたりしてたんですよ。みんなで話し合った時には、ちょっと発音しにくいから「他にしたほうが良いんじゃないか?」っていう話も途中で出てたけど、最終的には意味合いの部分もそうだし、物販とかジャケット写真に使った時の字面とかも含めて、やっぱりこれに落ち着きました。


▲誠一朗 (G)

──では、ここからはその“今回出すEP”についてのお話をうかがって参りましょう。初音源となるEP『導火』は5月21日から配信開始となり、6月2日に開催される初ライヴ<THE MUSIC -GreeN Music 15th ANNIVERSARY->では、会場となる新宿ReNYにてCDも販売開始となるそうですね。

章人:昔だったら、まずはシングルを出してからアルバムとかミニアルバムを出すような流れが多かったけど、俺が10数年休んでる間に時代が変わって、今はサブスクが主流になっちゃってたんでね(笑)。今回はまず4曲作って配信して、フィジカルでほしいっていう人もきっといると思うから、CDとしてはライヴ会場で販売することにしました。初ライヴを成立させるためにもいち早く聴いてほしいからサブスク先行になって、CDは後になりますけど、そこはお客さんを信じて。 CDを売らないと回収出来ないし、次に繋がらないですからね。

──つくづく、この10年でも音楽業界の在り方は激変してきているなと感じます。

章人:マスタリングする時も、各サブスクサービスごとの解像度に合わせて出力してもらったりとかね。“今ってそういうことも必要なんだ”って思いましたよ。

──このEP『導火』には表題曲も収録されておりますが、このタイミングでの“導火”という言葉はとても象徴的ですね。

章人:自分が出戻ったとかそういうことは別にしても、今the superlative degreeっていうバンドが動き出すことで火が点けば良いなっていう気持ちはやっぱりありますからね。そこは曲としても、作品タイトルとしても、それぞれにちょっと意味は違ってたりしますけど、いずれにせよこの言葉を使いたかったんです。

──なおかつ、今作の幕開けを飾っているのは「玉響」なる楽曲です。ここから新しく始まっていくバンドが、聴衆に対して真っ先に聴かせる音として、この曲を選んだ理由をぜひとも教えてください。

章人:ロックバンドなところが良く出てる曲だから、ですね。

SHINGO:それに、このバンドで一番最初に作った曲なんですよ。

──the superlative degreeとしての初期衝動、なおかつ原点が詰まっているのですね。

SHINGO:作ってた時から「これは1曲目に入れるしかないだろう」と思ってたら、みんなも同じように感じてみたいで。ただ、俺はこのバンドでここまで激しいロックをやることになるとは予想してなかったです。もっとメロディー重視の曲をやるのかなと勝手に思ってたから、“えっ!? 章人さん、めちゃめちゃハードなの作ってくるやん!”って最初はちょっとびっくりしました(笑)。

章人:SHINGOはツーバス踏めるんで、せっかくだからやってみたかったんですよ。あとは、一般社会の中で感じてきた10何年かの不満もここでは炸裂してます(笑)。


▲YUJI (G)

──反骨精神を音や詞に投映する、というのはロックとしての基本ですね。しかも、この曲は新バンドthe superlative degreeの楽曲でありながら、橋都章人というアーティストの持つ“三つ子の魂”がそれこそALL I NEEDの頃にまで遡ったとしても、良い意味で変わっていないなとも感じた次第です。

章人:あぁ、そうかもね(笑)。というか、確かにそれは俺自身も感じました。引退してた時、最初の2年くらい音楽は聴かないようにしてたんだけど、毎日ほんとつまんなくて。それに耐えられなくなった時、どうしても音楽を聴きたいっていう欲求を抑え切れなくなって、肉体労働系の仕事中だったけど遂にiPhoneで激しい系の曲をかけちゃったんだよね。そうしたら、凄い勢いで仕事が捗ったんですよ。そして、そこで再認識したし痛感したんです。音楽とかロックの持ってる力って、やっぱり特別なんだなって。その日からはまたいろんな音楽を聴くようになって、新譜もチェックして、自分なりに“今の世界はこんな感じで、日本はこういう感じなのか”っていうことを把握しながら、自分だったらこういうことが出来るよなって考えた時期があったんですよ。その頃の経験が、この「玉響」には反映されてるところがあるんだと思います。あと、この曲にはSHINGOからのリクエストも活かしてますよ。

──といいますと?

章人:「どんな曲が欲しい?」って訊いたら「MÖTLEY CRÜEみたいなのがいいです!」って言うから、オマージュ的に悪そうで強そうな曲にしたんです(笑)。

──サウンド的には、間奏で聴ける楽器同士の絡みも熱くエキサイティングですね。

章人:あれこそSHINGOありき、なところじゃないですか?

SHINGO:いやー、あのかたちに固めるまでが大変やったですけどねぇ。

章人:ドラムが引っ張ってくことで、ほかのウワモノの音が決まっていくっていうのは、これぞthe superlative degreeならではの流れだなって俺は感じましたよ。

──それだけのエモさが詰まった音もさることながら、「玉響」では“♪確かに生きている”というフレーズが幾度も歌われます。玉響とは、かつて『万葉集』でも使われていた一瞬や刹那を表わす古語なのだそうで、章人さんの内にある死生観のようなものがここでは描かれているように感じました。

章人:老衰とかの寿命とかならまだしも、3年前にhiroが亡くなって。トリビュート(7/6リリースの『ISSAY gave life to FLOWERS -a tribute to Der Zibet-』)に参加させてもらったDER ZIBETのISSAYさんも去年亡くなって、heathさんもそうだし、櫻井(敦司)さんもね…。いろんなミュージシャンが、想像もしてなかったかたちで突然いなくなっていくっていう現実に直面した時、命ってこんなにも儚いものなんだなと。

──残念ながら、人間の最終的な死亡率は100%ですしね。

章人:限られた時間の中で、いろんな人がそれぞれの日々を生きてて、中には上手くいってない人や、ギリギリのところで踏ん張っている人もいると思うんですよ。だから、俺としてはこの詞の中で一番言いたかったのは、“♪普通のフリして誤魔化してるんじゃない”だったりもするんです。

──その一節は、自戒の念から出て来たものでもありますか?

章人:俺は誤魔化さないですよ。現場で働いてる時も、バンドマン代表として社会に出たつもりでいたんで。“舐めんじゃねぇ、ぜってー負けねぇ!”って思ってました。というか、肉体的にキツいことはあっても、精神的な面では音楽を続けてくことのほうが大変だなって感じることも多かったんで、気持ちがヘタったり日和ったりすることはなかったです。要するに、ここで歌ってる“♪普通のフリして誤魔化してるんじゃない”っていうのは、世の中で“このくらいでいいだろ”的な感覚で物事に向き合ってるやつらに対する言葉ですね。

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