【対談】SUKEROQUE・SHOHEI×佐々木聡作「ポップなのに闇もあってジメッとしたところもあるんですよね」

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作詞作曲編曲を自身で手掛け、ソウルやファンクへの敬愛を反映したボーカルスタイルをJ-POPに昇華しているSUKEROQUE。SHOHEI(佐々木頌平)によるこのソロユニットが、2nd EP『Blue Cheese Blues』を5月1日にリリースした。先行配信された「中央線とビター」と「トランジスタレディオ」の他、多彩な4曲も収録された今作は、SUKEROQUEが進化し続けている姿を伝えてくれる。「Blood on the dance floor」は、様々なアイディアが盛り込まれている曲の1つ。アレンジを手掛けた佐々木聡作は、2023年リリースされた「COOL CHINESE」と「蜘蛛の糸」でもSUKEROQUEとの抜群の相性を発揮していた。苗字が「佐々木」という共通項もある2人は、どのような部分で共鳴し合っているのだろうか? 音楽面のルーツや制作エピソードについても語り合ってもらった。

■ストレートにモテそうなギターロックとかも作ってみたいのに
■やろうとすると全然違う方向に脱線して行っちゃうんです


――聡作さんとSHOHEIさんの最初の接点は?

佐々木聡作(以下、聡作):アレンジの依頼をいただいたのが最初です。その少し前に僕がアレンジをしたアイドルグループの曲を聴いてくれて、「ぜひに!」ということでしたね。

SHOHEI:フィロソフィーのダンスの編曲をしていらっしゃったんです。僕は彼女たちの音楽がもともと好きで、「COOL CHINESE」のイメージにフィットするサウンドだったので、連絡をとらせていただきました。2023年の7月くらいだったと思います。

聡作:まだ1年経ってないんだ?

SHOHEI:そうなんですよ。

――聡作さんは80年代からご活躍ですが、ALKALOIDのメンバーでしたよね?
聡作:はい。高校在学中にメタル系のバンドに誘われて、18歳くらいの頃は目黒鹿鳴館とかでライブをやっていました。でも鍵盤弾きなので、自然とファンクとかも好きになっていったんです。

SHOHEI:「COOL CHINESE」は、「ファンクを基調としながらキャッチーなJ-POPに落とし込みたい」というイメージがあったんです。だから僕が知っているアレンジャーさんの中でも、聡作さんにぜひお願いしたいと思いました。

聡作:合格?

SHOHEI:はい(笑)。偉そうな言い方ですけど。


▲佐々木聡作

――SHOHEIさんも、幅広い音楽を吸収していますよね?

SHOHEI:そうですね。ファンクとかに限らず、いろいろ好きなものがあるので。音楽を始めた最初はロックでした。

聡作:バンドから始めたの?

SHOHEI:はい。バンドでベースを弾いていました。

――高校の軽音部の顧問の先生が、ハードロックとかも教えてくれたんですよね?

SHOHEI:そうなんです。ディープ・パープル、ホワイトスネイクとか。

聡作:そうなの? 今まで知らなかった。SUKEROQUEの音楽はごった煮の感じがあって、僕自身もそうだから、どこか共通するものを感じていたけど。顧問の先生からその辺りの音楽も教えてもらっていたと聞いて、納得するものがあります。

SHOHEI:先生はスキンヘッドのドラマーです。英語の先生なんですけど。

――英語の授業で女性の口説き方を教えてくださったんですよね?

SHOHEI:はい。大半がハードロックの歌詞のフレーズでした(笑)。聡作:今はいろんな音楽をごった煮で聴きやすくなっていますよね。昔は「洋楽」「邦楽」っていう境目がすごくあったけど。「これを聴いてないと話にならない」みたいな洋楽マウントは、ちょっと前まであった気がする。

SHOHEI:今はTikTokもあるし、ライトな洋楽に触れやすくなっているのも感じます。僕が高校の頃に仲が良かった3、4人はUKロックが好きだったので、そういうのもよく聴いていましたね。

聡作:どの辺り?

SHOHEI:トラヴィス、レディオヘッドとか。一番はまったのはミューズです。子供の頃は父親が好きな山下達郎さん、大滝詠一さんとかも聴いていました。


▲SHOHEI

――SHOHEIさんは、音楽以外でも昔のものがいろいろ好きですよね? 『美味しんぼ』も好きですし。

SHOHEI:『美味しんぼ』のアニメは、もう全話を5周くらいしています。『あしたのジョー』も好きですね。ホセ・メンドーサとの話とか、泣けるんですよ。

――力石が死んだ後のエピソードの数々も濃いですからね。

SHOHEI:そうなんです。ジョーがテンプルを打てなくなって吐いちゃうんですけど。

聡作:そういう話で小一時間くらい行けそう(笑)。

――(笑)。聡作さんは、幅広いジャンルの音楽に携わってきましたよね?

聡作:そうですね。最初は先輩についていっていただけなんですけど。G Stringというバンドでメジャーデビューして、その後はいろいろなセッション系、ライブのサポート、レコーディングのお仕事を頂けるようになって今に至るという感じです。SADSのライブのマニピュレーターをしたり、アニソンのサポートをしたり、いろいろ雑多です。

――『ときめきメモリアルGirl’s Side 4th Heart』とかゲーム関連の作曲や編曲、南條愛乃さんのライブサポートもしていらっしゃいますね。

聡作:はい。幅広くお仕事をさせていただいています。

――音楽のルーツは、どの辺りですか?

聡作:幼少期ということだとビートルズ、カーペンターズとかですね。雑誌の通信販売の『世界の音楽』みたいな全集の中にあったシベリウスの『フィンランディア』ばかりをレコードが擦り減るほど聴く偏った感じもありました(笑)。あと、合唱団に入っていました。

――SHOHEIさんは、聡作さんから教えてもらった音楽とかあるんですか?

SHOHEI:エレピにアームがついてるのを教えてもらいましたよね?

聡作:クラヴィネットにアームがついてるのを弾いてる動画? あれはかなりの変化球だけど(笑)。ホーナーD6にアームをつけてジミヘンみたいな演奏をするキーボーディストがいるんです。ラッシー・ドーリーというオーストラリアの人なんですけど。

SHOHEI:そういうのを緩やかに教えていただいています。

聡作:最近、僕の中で流行ってるのは、7弦ヴァイオリニスト。しかもヴァイオリンにフレットがついてるの。

SHOHEI:へえ!

聡作:それでヴァン・ヘイレンの「ERUPTION」を完コピしてるの。楽器を作るところから始めたアメリカの女性ヴァイオリニスト、ニーナ・ディグレゴリオです。最近はクラシックの人の方がぶっ飛んでると感じることがよくあります。

SHOHEI:クラシックの世界の何かを崩そうとしているんですかね?

聡作:そうかもしれない。

SHOHEI:今はロックの方が「こうでなければいけない」みたいなのがあるのかもしれないですね。

――アイドルソング、アニメソングとかの界隈の方が、発想が柔軟だと感じることがよくあります。

SHOHEI:そうですよね。僕はダンス☆マンが好きで、そこからモーニング娘。とかも聴くようになったんです。

聡作:やっぱり、いろいろ聴いてきているんだね。

――聡作さんに最初にアレンジをお願いした「COOL CHINESE」も、音楽に対する柔軟なおふたりの姿勢が表れている曲だと思います。SHOHEIさんは、どのようなリクエストをしたんですか?

SHOHEI:どんなでしたっけ?

聡作:「フィロソフィーのダンスみたいにしてください」と。「え? どうすればいいの?」ってなったんですけど(笑)。でも、言わんとすることはわかったので、ブラスとかも含めた楽器構成も寄せていきました。

SHOHEI:華やかにしていただきました。

聡作:フィロソフィーのダンスでギターを弾いていただいた佐々木望さんにも参加していただきました。



――「COOL CHINESE」のアレンジが素晴らしかったので、その後にリリースした「蜘蛛の糸」も聡作さんにお願いしたんですね?

SHOHEI:はい。「蜘蛛の糸」も、すごく垢抜けた印象の音にしていただきました。

聡作:送っていただいたデモを聴いて、「こうしたいんだろうな」というのが伝わってきていたんです。だから僕はその交通整理をしていく感じでしたね。

SHOHEI:お送りした「COOL CHINESE」のデモにブラスは入れていなかったんですけど、大枠はある程度伝わるものになっていたと思います。



――聡作さんは、SUKEROQUEの音楽のどのようなところに魅力を感じていますか?

聡作:表現として「全方向」というか。「食べやすい」「明るい」とかいうことだけじゃなくて、ちゃんと闇もあって、ジメッとしたところもあるんですよね。それが最初に「すごいな」と思ったところです。

SHOHEI:ありがとうございます。狙ったりはしていないんですけどね。どちらかというとキャッチーな方向にしようと頑張っている中で、そうなっているんです。

聡作:オジー・オズボーンみたいだね。オジーは、ビートルズ、ポール・マッカートニーみたいな音楽をどうしても作りたいのに、やればやるほど「CRAZY TRAIN」みたいなのしか作れなくて、「なんで俺はこうなんだろう?」ってなってると聞いたことがある。それを今、思い出しました。

SHOHEI:僕もストレートにモテそうなギターロックとかも作ってみたいんですけど、やろうとすると全然違う方向に脱線して行っちゃうんです。そういうのは、自分の個性として受け入れるようになりましたけど。

――悩んだ時期もあるんですか?

SHOHEI:ありましたねえ(笑)。そうなってしまうことを周りの人たちに肯定してもらえたから、受け入れられるようになった気がします。

聡作:でも、キャッチーな曲にも闇みたいなところはありますからね。

SHOHEI:ビートルズもそうですよね。素直にみんなが好きになる音楽なのが、不思議だったりもするんですよ。

聡作:そういうビートルズ評は初めて聞いた(笑)。教科書に載るようになってるくらいだから。

SHOHEI:昔の日本の歌謡曲のアレンジとかも、突拍子もないものが多いんですよね。「なんでかな?」と考えて思ったのは、「言葉が先行のアレンジだからかな?」ということでした。昔の歌謡曲はキャッチコピーみたいな強烈な言葉があって、それに曲やアレンジが引っ張られて、ああなっていたのかもしれないです。

聡作:なるほど。

――SUKEROQUEの曲は、歌詞の言葉が先行してサウンド面が決まっていくことはあるんですか?

SHOHEI:あまりないです。僕の場合、歌詞先行だと普通になっちゃうというか、グルーヴがなくなっちゃうんですよ。

――例えば「COOL CHINESE」に関しては、冷やし中華をモチーフとすることを先に決めて作ったわけではないんですね?

SHOHEI:そうなんです。あの曲に関しては歌詞で悩み過ぎて、「もういいか」と思った結果、内容のないものになりました(笑)。曲はビートから作った時点で大まかな雰囲気を決めていることが多いんですけど。

聡作:「蜘蛛の糸」もデモの段階で歌詞が付いていて、全体的な雰囲気ができていましたね。歌詞と曲の佇まいに導かれるまま音色的なものを選び取って再配置するようなアレンジでした。

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