【ライブレポート】WATWING、日本武道館で見せた進化と涙「今日をずっと忘れずに」
WATWINGが、結成5年目にしてキャリア最大となる日本武道館の舞台に初めて立った。同公演は、昨年11月から12月にかけて、全国9会場18公演を行った全国ツアー<Let’s get on the beat Tour>の特別編という位置づけだ。昨夏のパシフィコ横浜のワンマンライブから約半年以降、驚くべき勢いで進化する6人のいまをレポートでお届けする。
チケット完売したライブ会場に詰め掛けた7,000人は、白いペンライトを振りながら、この日の主役たちの出番を待っていた。大きなビジョンにメンバーが1人ずつ映し出されると、悲鳴にも似た絶叫が場内を凌駕した。どこかオリエンタルでハードなビートを轟かせながら、6人がどうやって登壇するのか、期待値がマックスに高まった瞬間…6人が入ったアクリルボックスがメインステージ下からせり上がってきたではないか。のっけから新曲「Firebird」で攻めてくるセットリストも含め、サプライズ感満載の登場に、Windy(WATWINGのファンネーム)のテンションが上がらないわけがない。火の玉が次々に飛び出すなか、八村倫太郎が「Windy、来たぜ武道館!」と鼓舞。最上級に“アツい”スタートとなった。
八村の「Make some noise!」の呼びかけとともに「Runway」へとなだれ込む。髙橋颯の伸びやかな歌声や八村の太くパワフルなラップという声のコントラストも鮮やかだ。そして、歌の世界観を立体的で奥深く表現するダンスもまた、WATWINGのライブパフォーマンスの魅力。桑山隆太は力強くも華のあるダンスを披露するなど、パフォーマーとしての個の魅力を発揮しつつ、目まぐるしくダンスフォーメーションを変化させながら、一糸乱れぬまとまりで6人がいっせいに跳躍するといった躍動感も同時に魅せる彼らに早くも圧倒されそうになった。かと思えば、一瞬の静寂に包まれた「Shine」では、バイオリニストが登場しシアトリカルな演出でがらりと空気を変えた。ストリングスの生演奏の豊潤な音色と、古幡亮の強靭なシャウト、福澤希空の少し甘い艶やかな歌声、鈴木曉の伸びやかなハイトーンが交差し奥行きのある音空間を創り出していた。赤と黒のセクシーでミステリアスな世界に覆われた「BREAK OUT」で、6人はアリーナの中央に設営されたセンターステージへ。黒を基調としたクールで大人っぽい衣装に身を包んだ6人が、花道を通るだけでひときわ大きな歓声が沸いた。
楽曲の世界観を身体全身で、冒頭の4曲をノンストップで表現した6人は、ここでようやくシャープな表情を緩めた。八村が「皆さん、武道館です! 盛り上がってますか!」とオーディエンスに話しかけたのを皮切りに、肩ひじ張らない自己紹介へと移っていった。真っ赤なヘアが印象的な、トップバッターの福澤は「久しぶりですね。白いピカピカ、久しぶりに見た気がします。ずっと(リハーサルで)鏡ばかり見てたから、自分が二人いるかと思ってました」と、独特の空希ワールドを炸裂させてWindyをにっこりさせた。続く、鈴木は「おばんどす、曉どす。ちょうど、いま僕ら、(武道館の)玉ねぎの真下にいますね」と、マイペースに話を始めた。それまで見せていた、切れ味鋭いパフォーマンスと等身大でゆるいMCとの大きなギャップもまたWATWINGのライブの楽しさだろう。笑顔が似合うハッピーガイの古幡は、「皆さんの声、久しぶりに聴けてうれしいです」と溢れるスマイルを顔に浮かべた。髙橋も負けずにビッグスマイルを浮かべながら、「みなさん、こんばんは、髙橋颯です」と、丁寧すぎるほど丁寧に自己紹介した。ピンクの短髪といかついサングラスをかけていた桑山隆太は、エキゾチックな顔立ちや衣装のインパクトをネタにして「マーク・ゴンザレスです」と名乗り、Windyたちを笑わせつつ、「(今回のツアーで日本武道館でのライブは)1公演だけだから、本気でぶつけて、みんなで大成功させましょう」と思いもしっかりと伝えた。そして5人のトークを見守っていた八村は、「(桑山は)20歳になって、言うこともかっこいい」と称賛。Windyたちに向けて、「右手、Hands up! 左手、Hands up!」と促し、ライブへの盛り上げをおねだりしたのかと思いきや、「これで、わきの下のストレッチができたね」と、いたずらっ子みたいな笑顔を見せた。
ラップに乗せて自己紹介を繋ぐ「WATW“ing”」では、拡声器を使ったパフォーマンスで6人のわちゃわちゃとした元気なノリが伝わってきた。かと思えば、続く、クールでスタイリッシュなラブソング「The Practice of Love」は、サウンドと呼応するように静と動を巧みに操るダンスパフォーマンスと、苦しい胸の内を歌に乗せた切なげなボーカルを披露。また、少しレトロな洋楽を彷彿とさせる「Turn it up」では、抽象画の巨匠・モンドリアンが描く幾何学模様を思わせるモノクロームのヴィジュアルと、映像にシンクロするメンバーのソロダンスのコラボレーションが見事だった。五感で楽しめる工夫が随所にちりばめられている演出も、この日の華と言えるだろう。
中盤でスクリーンに映し出されたインタビュー映像では、6人がそれぞれの思いを語った。鈴木は「歌っていることが何よりも楽しいです。日本武道館という神聖な場所で、丁寧に歌い、最高のステージにしたい」と述べた。髙橋は、昨年の全国ツアーに触れながら「ツアー中にファンの皆さんから勇気をいただきました。皆さんと一緒にライブを作っていけると思った」とこれまでに感じた手ごたえを口にした。福澤は「ワンマンでは、一番大きな会場に挑戦できることが誇りです。瞬きせずに、全部見て欲しい」と熱い思いを言葉にした。常にWATWINGをプレイングマネージャーのような視点で見ている八村からは、「余裕をもって何かするのが憧れです。でも、一生懸命でがむしゃら人間が、自分には似合っている」と、意外な本音も。桑山は、「メンバーがいるから乗り越えられることがある。この6人で武道館に立てることが嬉しい」と目に涙を浮かべて、この5年を振り返った。古幡は、「応援してくれるWindyに精一杯の生きざまを見せていくことで、力にしてもらえたら嬉しい」と、彼らしいファン思いの温かみ溢れる言葉が出てきた。この言葉は、きっと6人の総意でもあるだろう。
6人の言葉に胸がじんわりしていると、ステージ中央のスポットライトがあてられた。そこには、ピアノと桑山の姿だけが浮かび上がり、会場からは驚きの声が上がった。ピアノの素養があるとは言え、大舞台で弾き語るプレッシャーは計り知れない。しかしながら、桑山は誠実な人柄そのままに丁寧で温かなタッチで「Shooting Star」を奏で、自ら弾くピアノ伴奏だけを頼りに歌いきった。それを受けたメンバーたちも、満天の星空の中、清らかに歌い繋いでいく。メンバーだけの力で、とても幻想的で印象的な場面を6人は創り上げたのだ。また、6本のマイクスタンドが並んだ「feel like…this」は、華麗なダンスパフォーマンスを封印し、ウォームな歌の力で会場を酔わせた。白いシャツと黒のパンツのみという、ごくシンプルな衣装も、かえって彼らの歌の力を際立たせていたように思う。
2度目のMCでは、衣装チェンジの間にWindyを待たせないようにという配慮から、2グループに分けてトークを展開。鈴木がここで、「ずっと謝りたかったことがあります。(全国ツアーの)地元、仙台公演では、新幹線を間違えて新潟行に乗ってしまい、リハーサルに間に合わなかったんです」と、爆弾発言を投下し会場を笑わせた。古幡、髙橋、桑山、鈴木の4人がじゃれ合うなか、八村と福澤が合流。今度は、八村と福澤の2人で武道館の7,000人とトークを楽しむ番だ。ここでも、思いがけないトピックが飛び出した。なんと福澤は、武道館に立つのが初めてではないという。「小3のとき、きゃりーぱみゅぱみゅさんのバックダンサーとして踊りました。奇跡です。人類が歩けるようになったくらいの奇跡です」と、希空流のカミングアウトで会場を驚かせた。すると、八村がアカペラで「つけまつける」のサビを歌い始めたではないか。それに合わせて手拍子する優しいファンを見て、「(Windyの)皆さん、よくノれますね」と、福澤はあきれ顔を浮かべていた。
ご機嫌なポップチューン「WAIT A MINUTE!」からは、ライブも後半戦だ。続く、「WINGS」は、エフェクテヴなボーカルとデジタルサウンド、そして6人が装着した暗闇に浮かぶ蛍光色のサングラスが世界観にとてもマッチしていた。Windyたちの、“We know”の合の手も息ぴったりで、ますます一体感が増しているのを感じた。続いては、ライブタイトルでもある、心浮き立つダンスチューン「Let’s get on the beat」だ。誰もが身体を自然に揺らしたくなるナンバーに、自ずと会場内の熱が高まるなか、八村が「楽しんでいこうぜ」、「Windy、まだまだ行けるだろう」とさらに煽っていく。アッパーなパーティーチューン「Waves」では、6人がスモークマシンを肩に乗せながらステージ上を大暴れ。かっこよく決めたはずが、八村が「みんなが思ってるより、3倍は重たいんです」と本音をポロリ。そんな気の置けなさも、彼らのライブの魅力となっている。
「ここからはもっと遊んでいこう」の言葉で、怒涛の最終盤へ。ポップなダンスチューン「Sensation」では、WINDYたちもペンライトを懸命に振り、言葉に応えていた。八村と古幡が作詞と作曲を手がけた「Calling」。歌詞の一節にある、“不安を分け合って無我夢中で 支え合って”きたであろう彼らが、“1人で辿り着ける夢はない”と固く互いを信じて、武道館に辿り着いたことを噛みしめながら歌っていたように見えた。「これが最後の曲!声、出していきましょう」と呼びかけた「Honey, You!」では、キャノン砲も放たれ、キラキラとした多幸感に包まれながら本編は大団円を迎えた。
本編が終わるやいなや、Windyたちは「WATWING」コールを始めた。一夜の夢をまだ終わらせたくないという思いが、会場に溢れていた。その声に誘われるように、再び再登壇した6人は、アンコールの1曲目から、サプライズギフトを用意していた。新曲「YO MA SUNSHINE」を、大切なファンに初めて届けたのだ。この楽曲は、鈴木がリスペクトする5人組ヒップホップグループ、DOBERMAN INFINITYが手がけたテンション高めのサマーチューンだ。初披露にもかかわらずWindyたちのコール&レスポンスがなんとも秀逸で、ライブを全員で創り上げている風景は輝いて見えた。八村も「みんなの(アンコールの)声、聞こえてました。新曲なのに盛り上がってくれてありがとう」と謝意を伝えた。メンバーの口から、改めて新曲「YO MA SUNSHINE」のリリースのお知らせをした後、今年の晩夏からの初の全国ホールツアーの開催が告げられると、この日最大級の歓喜の声が会場から沸き上がった。
「爪痕残したい!みんなの声が必要です」の声に誘われ、メジャーデビュー曲「HELLO WORLD」へ。光感じるポップで前向きなナンバーに合わせ、誰もが笑顔になっていた。さらに、「まだ行けるだろう」と、疾走感溢れる「HERO」へと突入。タオルを振り回しながら、全力疾走した6人は全曲を終えて走り切った。
…はずだった。が、本当のサプライズはここからだった。会場の7,000人が声を合わせて、歌を歌いあげたのだ。そして、スクリーンには「武道館公演完走おめでとう」の文字が浮かび上がった。まったく予期していなかった6人は、もはや涙腺崩壊状態だ。
「僕たちの活動はコロナ禍と重なって、はじめは10人くらいしかお客さんに観てもらえなかった。こんなに大勢と一緒にいられて嬉しい…」と涙ながらに語る桑山。「全然知らなかった。やべーな……なるほど……」と、いつも饒舌な八村も、思いがこみ上げて言葉に詰まった。いつも言葉少なな髙橋は、「一番泣いてる人」と古幡を指した。たしかに、嗚咽しそうなほど泣きじゃくる古幡がそこに居た。それでも、言葉をふり絞って「マジで楽しかった。最高だった」と精一杯の気持ちを伝えた。福澤も鈴木も溢れる想いと涙で、まっすぐに立っていられないほどだ。
少し冷静さを取り戻した八村が、最後に6人を代表してこう伝えてくれた。
「音楽や表現を通して、元気になってほしいとずっと思ってやってきました。それは今も、これからも変わりません。でも、みんなから元気をもらってばかりだと気づかされました。ありがとうございます。これが終わりじゃありません。ホールツアーでもっといいものを届けていきます。今日をずっと忘れずに、これからもよろしくお願いします」
温かな思いと確かな絆を確かめ合うように、WATWING初の武道館ライブは幕を静かに下した。半年前のパシフィコ横浜から、全国ツアーを経て、ダンスや歌などライブアーティストとして様々な表現で、驚異的に進化した姿を見せた6人。憧れのステージを自分たちらしくやり切れたことは、今後の大きな力になるだろう。
また、はやくも3月からは<WATWING Collab Tour 2024~Equal~>として、多彩な才能とのコラボツアーを繰り広げる予定だ。きっと夏にはフェスでも大いに存在感を示してくれるだろう。その先に待つ、全国ホールツアーで彼らのどんな革新が見られるのか、今から楽しみで仕方がない。
取材・文:橘川有子
撮影:Ryuya Amao
◆ ◆ ◆
新曲「YO MA SUNSHINE」
Prod: DOBERMAN INFINITY
Words: KUBO-C, GS, P-CHO, SWAY, KAZUKI
Music: SWAY, KUBO-C, GS, P-CHO, KAZUKI
Track Produced by SWAY
楽曲リンク:https://tf.lnk.to/yomasunshine
初のホールツアー
9月14日(土)新潟県民会館(新潟県)
9月21日(土)愛知県芸術劇場大ホール(愛知県)
9月22日(日)大阪国際会議場(グランキューブ大阪)(大阪府)
10月14日(月祝)仙台サンプラザホール(宮城県)
10月25日(金)神戸国際会館こくさいホール(兵庫県)
10月27日(日)福岡サンパレス(福岡県)
コラボレーションツアー<WATWING Collab Tour 2024~Equal~>
3月16日(土)
【愛知】Zepp Nagoya
一部:開場14:00/開演15:00
二部:開場18:00/開演19:00
3月20日(水・祝)
【北海道】Zepp Sapporo
一部:開場13:00/開演14:00
二部:開場17:00/開演18:00
3月24日(日)
【大阪】Zepp Osaka Bayside
一部:開場14:00/開演15:00
二部:開場18:00/開演19:00
4月7日(日)
【東京】Zepp DiverCity
一部:開場13:30/開演14:30
二部:開場18:30/開演19:30
4月13日(土)
【福岡】Zepp Fukuoka
一部:開場13:30/開演14:30
二部:開場17:30/開演18:30
4月21日(日)
【宮城】仙台GIGS
一部:開場13:00/開演14:00
二部:開場17:00/開演18:00
コラボアーティスト解禁第一弾!
3月16日(土): Zepp Nagoya 1,2部/chelmico
4月7日(日): Zepp DiverCity 1部/大橋ちっぽけ 2部/ONE N' ONLY
映像作品「WATWING Letʼs get on the beat Tour Special Edition in 武道館」
詳細は後日発表
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