【インタビュー 前編】KAMIJO、10年の集大成『LOUIS XVII』を語る「表現不可能なものは何もなくなりました」
■ルイ17世のストーリーは完結です
■ボリュームのある名刺代わりの作品ができた
──たとえば、shujiさんが在籍していたJanne Da Arcは、LAREINEと同じ時代に活動していたバンドではありますよね。プレイヤーとしてはどのように見えるのでしょう?
KAMIJO:僕の楽曲は、メタルテイストがあって、それでいてしっかりとメロディーラインがありますが、shujiくんに関しては、そういった楽曲に対するアプローチなどもよくわかっているだろうなという観点があります。実際に一緒にやってみてもパワフルなんですよね。キックの低音の支配感と言えばいいのか、ツーバスを速く上手く踏める人はいっぱいいると思うんですけど、shujiくんの場合、ステージ上で感じるサウンドの心地よさがあるんです。安心させてくれる低音だったり、打力だったり。それから、僕の楽曲はフィルインが多いんですが、それをそれほど多くないタムの数でしっかりと成立させてくるのは、さすがだなと思いました。ドラマーとしてのバックボーンなども熟知したうえで、今回は彼に頼んでみたんですが、同じ時代を戦ってきた同期っていうのはやっぱり大きいですね。僕とshujiくんとYUKIくんは、1999年デビュー組なんですよ。
──YUKIさんは当時、Λuciferで活動していましたよね。
KAMIJO:そう。後から聞いたんですけど、当時、LAREINEのメンバーとΛuciferのメンバーは、僕の知らないところで、よくみんなで飲みに行ってたらしいんです(笑)。YUKIくんに関しては、演奏のタイトさとテクニック。そこは欠かせなかったですね。ギタリストは2人いますけれども、HIROさんにはアーティスティックな独自の世界を出してもらいたかったんです。YUKIくんももちろんそういった面はあるんですが、彼はLAメタルとかハードロックとか、そこら辺を通ってることは知ってたので、超絶な速弾きであるとか、そういった要素を思いっきり出してもらいたいなと。
──確かにHIROさんには、アーティスティックな雰囲気がありますよね。
KAMIJO:そうなんですよ。僕はLa'cryma Christiが大好きだったんです。LAREINEをやっていた当時、La'cryma Christiはシンセサウンドに頼らず、すべてバンドサウンドで世界観をしっかり出してたんですよね。その役割を大きく担っていたのがギターで。それが本当に素晴らしいなって。だから、プレーヤーとしての力量はもちろん、やっぱりセンス。HIROさんのダークさ、トゲトゲしく、何か悪いものを持ってそうな毒素。それが僕の楽曲の中に入ったときに、絶対にハマるだろうなと思ったんです。確信を持ったのはHIROさんのソロ作品を聴いたときですね。生まれ変わったら、絶対にHIROさんとバンドをやりたいと思ってましたから(笑)。
──一緒に演ってみて思ったことは?
KAMIJO:僕の楽曲で、コードワークや音階についてあそこまで一緒に語り合える人はいないです。もちろん、HIROさんはギター視点ではあるんですけれども、歌とコードワークに対しての哀愁であったり、切ない雰囲気だったり、そういうものも全部わかってやってくださるというか。本当に素晴らしいと思いますね。
──IKUOさんに関しては?
KAMIJO:僕がソロとして始動した直後の「Moulin Rouge」「闇夜のライオン」という2つのシングルでベースを弾いていただいて、ツアーにも参加していただいたんですけれども、今回約10年ぶりに再びお世話になって。当時から凄かったですけど、さらに磨きがかかってて…もう何ていうんでしょう? IKUOさんが弾いていない時期の楽曲はいっぱいあるわけじゃないですか。それらをベースフレーズではなく、楽曲視点でしっかりと分析したうえで、それぞれの楽曲に対するアプローチを取ってくれるんですね。そこがさすがだと思いました。
──IKUOさんは、ロックベーシストなら知らない人はいないぐらいの敏腕ですもんね。それにしても、かなり豪華なメンバーが揃いましたよね。
KAMIJO:そうですね。やりたいことを全部やろうというぐらいのつもりで、メンバー探しもさせてもらったんですけど、それこそ10周年だし、今だなと思って、いつか一緒にやりたいと思っていた方々にオファーさせていただいて。今後のライヴにも参加していただくので、本当にいい機会だったなと思ってます。
──このルイ17世のストーリーは、一旦ここで完結するんですよね?
KAMIJO:完結です。王になるまでのストーリーを描こうと思っていましたので。
──細かなプロットなど、史実との同調は改めて興味深く感じました。たとえば、ルイ17世が王になる過程で、血液をエネルギーに変えるというエミグレ制度というものが出てきますが、この言葉も王政復古、王への返り咲きへの意味合いを込めた名称だったわけですよね。
KAMIJO:そうですね、エミグレとは、フランス革命において他国に亡命した貴族を意味するフランス語ですが、まさにルイのことです。それから、死んだはずのルイ17世が、もし本当に現代に生きていたとして、どうしたら人々はそれを認めるだろうかと考えたときに、生き残っているということは、まず彼がヴァンパイアであることが証明されなければいけない。しかも、現代の人々の前に困難が立ちはだかっていて、それを救済する立場にいなければいけない。そして、導く者への渇望感と、それにふさわしい者がいなければいけない。その目的に向かったとき、ストーリーを描く上で、いろんな通過点がこの何年かの間で見えてきたんですね。それこそ構築していく楽しみといいますか、いろんな伏線を自分でどんどん回収していくのは、もう快感でしたね。
──ナポレオンであるとか、ベートーヴェンであるとか、誰もが知っている登場人物が出てくるのも絶妙なキャッチーさだったと思いますよ。
KAMIJO:ははは。自分の中でナポレオンが“No.3”と呼ばれているところが、お気に入りのポイントなんです。ベートーヴェンの「交響曲第3番:英雄」ですね。
──あえて語弊がある言い方をしますが、彼らもまたヴァンパイアであるという、めちゃくちゃな設定ですよね(笑)。
KAMIJO:めちゃくちゃじゃないと現在まで生き延びないですからね(笑)。
──ええ。冷静に考えたら、そんなことはあり得ないと思われるんですが、歌詞やライヴを通して物語に触れてくる中で、そういったある種の非現実的な設定も不思議と違和感を覚えることがなかったんですよ。
KAMIJO:ある意味、ファンタジーにならないように、リアリティはすごく追究していたんですよね。実際の年表と見比べてみるとよくわかるんですが、物語にある出来事の大半が史実なので、「あれ? どっちが現実だっけ?」って、一瞬わからなくなるような物語は作れたんじゃないかと思います。受験生には勉強の邪魔になるかもしれませんが(笑)。
──確かに(笑)。でも、世界史が苦手な人が、この『LOUIS XVII』の物語をきっかけに、学び直すいい機会にもなるかもしれませんよ。このライヴ映像は、KAMIJOとはどんなアーティストなのかを、わかりやすく伝える作品にもなりました。
KAMIJO:そうですね。ちょっとボリュームのある名刺代わりの作品ができたと思います。
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