【インタビュー】緑仙、メジャーデビュー作『パラグラム』に数々の隠しメッセージ「自分は歌の人です」

■いろいろあるけど、なんやかんや生きてる
■みたいなポジティヴさがあるんですよ（笑）

──そして「ジガトラ」は“廃墟系ポップユニット”cadodeとのコラボレーション曲。cadodeとも交流があったんですか？

緑仙：実は全然なかったんですよ。ebaさんとはRain Dropsの曲を通してつながりがあったんですけど、cadodeとしては今回が初めてで。スタッフのみなさんが「緑仙に合うと思うんだよね」って推薦してくれたんですけど、曲を作るにあたって、コンセプトに関してかなり口を出させてもらって。テーマとしては、“インターネットって良くないよね”です。インターネットのどこが良くないのかという話をkoshiさんに延々と言い続けて、そこからこの曲が出来上がったんです。インターネットが嫌いなんですよ（笑）。

──インターネットが嫌いでも、インターネットで活動しているという…。

緑仙：そうなんです（笑）。なのでやっぱり、情報の収集と選択を上手くやるしかなくて。このアルバムも、その手助けの一つになったらいいなと思ってます。

──「ジョークス」は緑仙さんの誕生日(4月16日)に配信リリース。リリースから半年近く経ちましたが、今の緑仙さんにとってどんな楽曲になってますか？

緑仙：「ぼっちぼろまるさんは自分のカウンセラーみたいな存在」という話をよくしているんですが、嫌なことだったり、活動を辞めたくなるような出来事があったとき…いや、辞めることはなんですけど、“会社行きたくないな”とか“学校なくならないかな”みたいなニュアンスで“だるいな”って思うことがあったときにも、ぼろまるさんと話をするんですよ。「ジョークス」を作るときもいろいろと話したんですけど、ぼろまるさんに「大人になったね」みたいなことを言われたんです。“大人になっちゃうと、「ジョークス」がおもろない曲になっちゃう？”って思ったんだけど、スタッフ抜きで2人だけで話したら、「緑仙の尖ったところ、やっぱりあったわ」って。自分のネガティヴな部分、尖ったところはちゃんと存在しているし、「ジョークス」はそのことを感じさせてくれる曲だなと思います。


──ファンのみなさんの反応はどうですか？

緑仙：え、どうなんでしょう？ リスナーさんはどう思ってるのかな。

──もしかして、曲を通して自分を理解してほしいとは思っていない？

緑仙：そうかもしれないです。人を完全に理解することは不可能だし、そこは割り切っちゃってるところが自分にはあって。こういう考え方をしてる人間って、たぶん生きづらいんですよね。それこそもっと上手く取捨選択して、楽しいことだけ選べばいいんだけど…。なのであれですね、全部を理解してもらえなくてもいいんだけど、“いろいろあるけど、なんやかんや生きてるよ”みたいなポジティヴさがあるんですよ（笑）。ぼろまるさんもそうで、どんなにネガティヴなテーマでも前向きにできる能力が備わっているんですよね。結局は救いを作ってくれる方なので、それがみなさんにも届くといいなと思ってます。

──ぼっちぼろまろさん、緑仙さんの1stライブにもゲストで登場してましたね。

緑仙：はい。ぼろまろさん、言うても陽キャではないので、“バンドメンバーのみなさんと仲良くできるかな”って心配だったんですよ。でも、最後はみんなと楽しそうに話してたのでよかったです（笑）。

──初回限定盤Aには、初のワンマンライブのメイキング映像を収録。そして初回限定盤Bには、クリス・ハートさんをゲスト迎えた「アネモネ -Novelclip I LOVE YOU- feat. クリス・ハート」、松本吉弘プロ雀士とのコラボレーション曲「燃えろ！雀荘牌舞台」が収録されています。2曲ともかなり異色のコラボですね。

緑仙：そうですよね（笑）。どちらもスタッフさんのアイデアなんですけど、自分からは出てこない発想だし、楽しかったですね。クリス・ハートさんとのコラボ曲は、リスナーのみなさんもビックリしているんじゃないかな。自分も未だによくわかってなくて（笑）。すごくいい曲になったので、楽しんでもらえたらうれしいですね。クリスさんが情報解禁とほぼ同時にSNSで告知してくれたのもビックリしました（笑）。「燃えろ！雀荘牌舞台」に関しては、僕のほうから「麻雀の曲とか、今後できたら面白いですよね」みたいな話をしたことがあって。そのときは雑談程度だったんですけど、まさか1stミニアルバムで松本吉弘さんと一緒に歌うことになるとはまったく想像してなかったです（笑）。僕が麻雀を始めたのは去年12月くらいなので、ハマるスピードも異様ですよね。


──なんで麻雀にハマったんですか？

緑仙：コミュニケーションツールですね。インターネット界隈のコミュニケーションにはゲームが欠かせないんですけど、僕はスマブラくらいしかできなくて。ゲーム脳がぜんぜん発達してないし、“喋りだけで人と仲良くなるしかないのかな”と思ってた頃に出会ったのが麻雀だったんです。麻雀は座学の部分も多いから、全く知らない状態からでも少しずつできるようになってきて。年を取ってもできるし、結局はコスパがいいんじゃないかなと（笑）。今は“これは一生もんだな”と思ってるし、家にも雀卓があります。ハマりすぎ（笑）。

──緑仙さんにとって2023年は、メジャーデビューを果たした大事な年になりました。今後の活動ビジョンは？

緑仙：そうですね…冷めてるわけではないんだけど、自分だけでやれることには限界があるんですよ。たとえば「ライブやりたいです」と言ってもすぐにできるわけではないし、もちろん大きいステージにもなかなか立てない。ライブはスタッフのみなさん、リスナーさんの応援、ネット界隈の力が合わさって、ようやく実現できる奇跡的なものというか。そのことを理解したうえで、“じゃあ、自分にできることは？”と言えば、まずは腹を括って“自分は歌の人です”としっかり表明することが大事だと思っていて。“緑仙と言えば歌だよね。あとついでに麻雀”くらいの認識でみんなに見てもらえるように頑張りたいです。それと、信用ですね。今回ベガルタ仙台さんの応援ソングを作らせてもらいましたけど、タイアップのお話があったときに、先方から「緑仙って誰？ 知らない」と言われないくらいの知名度と信用がほしいなと強く思ってて。VTuberってまだまだワケがわからない存在だし、もっと広く認知していだけるような活動をコツコツ続けていきたいですね。

取材・文◎森朋之