【インタビュー #3】DEZERTが語る、「人の青春を奪っていくのがロック」という終わりの美学とその行く先

■自分たちは“土”なんです
■土だけはしっかりしておけば居場所になる
──Sacchanさんは、“DEZERTがDEZERTと向き合ってDEZERTをどう伝えていくか”ということに徹底した1年を歩んできて、何か気づきはありますか。
Sacchan:この1年に限らず個人的にはわりと昔から、特に音楽やライヴ以外の部分で、バンドに向き合わされるポジションになることが多かったので。だから、今回で精神衛生上すごく変わったとかは、正直、あるかないかで言えばないんですけど。『Focus of DEZERT』を通じて、たとえば他のバンドの曲を千秋くんがアレンジしたり、自分たちの曲を改めてアコースティックアレンジしてみて、自分たちが許せる範疇が広がったなというか。
──なるほど。
Sacchan:今までDEZERTというバンドは、音楽だったりライヴに対して、“これはこうでなきゃダメ”とか許せないところが結構多かったと思うんです。その幅が、十何年試行錯誤しながらバンドをやってくる中で広がったというか。それは何かを妥協したということではなくて、少し余裕を持ってやってみたら、“意外とこれもいいじゃん。あれもいいじゃん”っていい意味で縛りが外れている感覚が強いですね。
──アコースティックアレンジやカバーアレンジには、自分たちの曲や相手の曲をどう解釈して、どういう表情を出していくか、よりバンドの“今”が表れますね。
Sacchan:あとは、一気にいろんな企画をやるときに一番ネックになるのは時間だと思うんです。そういう意味でも、メンバー内で作業を分担してできたりとか、これは人に任せてみようとか、今までだったら許せなかったところまでメンバーが大らかにできるというか。結果いいものになるのであればそれでいいよねっていう考え方が少しずつできるようになっていったというのが、向き合ったことに繋がっているんじゃないかという気がしていますね。

▲千秋 (Vo)

▲Miyako (G)
──SORAさんに聞きたいんですが、たとえばDEZERTをもっと広めたいとなったとき、今はいろんな方法がありますよね。音楽だけじゃないやり方で注目を集めるとか、いわゆるバズらせることもできると思うんです。そういった話題性でアプローチするのでなく、“音楽で”ということは立案の段階からブレずに考えていたことだったんですか。
SORA:結局、僕らが勝負をするときの一番の武器はライヴなんです。うちのメンバーは、突拍子もないことをしたり、ふざけることもいろいろできるんですけど。それって根底に信念を持ってやってるものがあるから成立する。そういうのが、4人の暗黙の了解としてあって。いろんな企画は思いつくんですけど、ライヴに来てほしいし、何か感じてほしいというのが根本にあって。なんでライヴに来てくれるのかってなったときに、音楽を聴きに、感じに来てくれるわけで。
──そうですね。
SORA:たとえば、僕は今、ミーアキャットを飼ってるんですけど、“ミーアキャット飼ってます”というのが何かのきっかけでSNS上でハネたとして、300万人のフォロワーがついたとして、「実は僕、DEZERTっていうバンドやっていて」と言ったところで、ミーアキャットを見たくてフォローした人は、ライヴに足を運ばないと思うんですよね。ライヴで伝えるものって音楽だから、違うことでハネても、そこに繋がらないなっていうのは思ってました。
──音楽でないと意味が無いと。
SORA:やっぱり曲がいいんです、DEZERTは。作曲者の千秋からしたら、「なんでわざわざ完成している曲をアコースティックアレンジするのか」って第一弾インタビューで話してたように(笑)。でも、僕が尊敬している先輩が、「名曲はどんなアレンジにもできる、逆にあまりよくない曲はどんなアレンジをしようとも曲がよくならん」と話をしていたので。名曲だらけなんですよ、DEZERTは。いろんな方面でそれを伝えられたら興味を持ってもらえるかなという思いでしたね。
──今回の企画を通して、改めてDEZERTのこういうところをもっと見せたいなと思うところはありましたか。
Miyako:もともとCDのリリースイベントとかではアコースティックライヴをやっていたんですね。それを動画という形でちゃんと音源とか映像もつけて発表するというのは、初めてで。実際出来上がったものは、映像を含めてやっぱりすごくいいなって実感しましたね。今までもやっていたことだとしても、こうしてお客さんに歌詞や楽曲のよさを届けるのって、大事だなっていうのは感じたし。アコースティックライヴはこれからも音源を出すたびにやっていくと思うし、それをもっと大切にするのもいいのかな、ということはやっていて感じましたね。

▲Sacchan (B)

▲SORA (Dr)
──では改めて、目前に迫った9月23日開催の<DEZERT SPECIAL LIVE 2023 -DEZERT->の話も聞きたいのですが、『Focus of DEZERT』やツアーを踏まえて、渋谷公会堂でのライヴにどんなヴィジョンを描いていますか。
千秋:最近よく僕は、“仲間”とか“居場所”という話をMCとかでするんですけど。たとえるなら、自分たちは“土”なんです。土って、水や肥料がないと死んでしまうじゃないですか。その水や肥料が新しい曲だったりする。世の中には昔の曲だけで戦っている人もいますけど、僕たちは新曲を出したいし、この土を腐らせたくないから、肥料として音楽を与え続けたいという思いが強いんです。その土の上にファンが…DEZERTで言えばファンクラブの名称でもある“ひまわり会”という花が咲いているわけじゃないですか。
──なるほど。
千秋:じゃあ、9月23日の渋公に来た2000人のお客さんが、次に武道館とか大きなハコでやるとなった時に全員来るかと言ったら、いくら自分たちがいいライヴを続けていても絶対にそんなことはないじゃないですか。みんなそれぞれに事情があるし、なかには病気だったりで命を失っていく人もいるかもしれない。枯れてしまう花もあったりするわけで。でも、土だけはしっかりしておけば、ファンの子にとっても、これから出会う人もいなくなっちゃう人にとっても、居場所になる。それで僕はメンタルを保ててるというか。なので僕は、土なんです。
──しっかりと土台というか居場所としてあろうと。
千秋:今、そうやってライヴに臨んでいるんですよね。なので、“しっかりといい土にするので、みなさんいい花を咲かせてください”と。あとは他人任せですね。以前は、「こういう花を咲かせてよ」っていうところまで言ってたと思うんです。DEZERTという土の上では、“きれいなバラじゃねえんだよ。もっといびつな花を咲かせてみろ”っていう時期があって、求めすぎて苦しんだんです。でも、もうなんでもよくない?みたいな。いろんな花があってええやろ?っていう気持ちなので。当日はお花畑のように、お花のような脳みそで楽しんでくれればと思ってます。
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