【インタビュー】Kazuo、海外大規模フェスで掴んだ手応え「自分だけのSunflower、でっかいひまわりを咲かせたい」
■ブッキングのメールが俺に直接届いた
■ステージに一歩足を踏み出したら、自然にやれた
──2023年3月にリリースされた大沢伸一が率いるRHYME SOの「TYO - NYC」にフィーチャリングで参加していましたが、大沢さんと共作した本作収録曲「METROCARD!」は、その流れで制作されたんですか?
Kazuo:これは「TYO - NYC」の次のセッションで作りました。一時期、NYに帰ってデモ作りをしていて。自分が作ったいろんなデモを大沢さんに聞かせた中で、大沢さんがいちばん気に入ってくれたのが「METROCARD!」だったんです。これを一緒に作って完成させようという話になって、僕が作ったデモのベースやドラムに大沢さんが手を加えて、今回のようなダンサブルなテイストになりました。
──アルバムの前半は疾走感のあるエネルギッシュな楽曲が続きますが、後半の6曲目、7曲目、8曲目、9曲目は落ち着いたテンポに変わり、メランコリックな色彩も見せます。
Kazuo:そういうテイストの曲も作れることを、ファンのみんなにも示したかったんです。僕はただのカオティックなサウンドのラッパーじゃないよって。
──特に9曲目「FREEBOYRADIO」はアルバムで異彩を放っています。
Kazuo:「FREEBOYRADIO」は、友達のプロデューサーにあげる予定で作ったんですけど、できあがってみたらめっちゃ気に入って。悲壮感がある曲で目立つからこれはアルバムに欲しい。しかも最後から2番目の曲にしたいと思って。それで入れたんです。
──ところで、8月15日に、ハンガリーのブダペストで開催された<Sziget Festival>に唯一の日本人アーティストとして出演してきました。これはどんなフェスなんですか?
Kazuo:ビリー・アイリッシュやデヴィッド・ゲッタ、ディプロがヘッドライナーになったフェスで。Szigetはハンガリー語で島という意味で、本当に会場が島(笑)。橋を渡って会場に行くんです。
──ステージも幾つかあるんですか?
Kazuo:いろいろあります。音楽ライブをやってるのはメインステージを含めて6個くらいで、DJブースとかもたくさんあって。その島でキャンプしている人もいるくらい。深夜までやってるステージもありました。日本だとフジロックみたいな感じ。
──最初にオファーが届いたときはどう思いましたか?
Kazuo:え、嘘じゃね? 詐欺かな?って(笑)。アジアでバイリンガルのラッパーを探していたようでブッキングのメールが俺に直接届いたんです。ヨーロッパには行ったことがないし、行くとしたら最初はロンドンに行くと思ってたんですよ。だけどハンガリー?って。意外だったけど嬉しかったですね。
──今回、Kazuoさんが立ったのはどんなステージだったんですか?
Kazuo:dropYardという名前で、基本ヒップホップのステージでした。出番の前は誰とも話せないくらい緊張したけど、ステージに一歩足を踏み出したら、あとは自然にやれました。今回のアルバムの曲を中心に1時間弱のセットをやりました。
──今回の出演がどんな経験になりましたか?
Kazuo:フェスは余裕だなって(笑)。もっと出たいなって思いました。最初は緊張したけどめっちゃ楽しかったし、もっとフェスに出るために頑張らなきゃって。でっかいステージが好きだし、走って飛び回るステージが欲しいから。
──フェスを体験したことで今後の曲調にも影響が出そうですか?
Kazuo:『AKUMA』や『KAMI!』はD.I.Y.感があるから、それは卒業して、もっとプロフェッショナルな音が欲しいと思いました。フェスに合う曲とか作りたいですね。
──たとえば今回の「METROCARD!」のアウトロみたいな雰囲気とか?
Kazuo:そう。ああいうエモい感じ。お客さんも一緒に歌えるような曲が欲しいなって。
──今後は歌も取り入れたり?
Kazuo:ラップは絶対やめないし、死ぬまでヒップホップですけど、歌う曲も増やしたいですね。もっとメロディックな曲も増やしたいです。
──その<Sziget Festival>の模様を少し収録した「ONCE UPON A TIME IN JAPAN/FINDING MY WAY HOME!」のMVが公開されました。これも自らディレクションと編集をしたんですね。
Kazuo:「ONCE UPON A TIME IN JAPAN!」のリリース日にMVを公開したかったけど、<Sziget Festival>の準備があって編集する時間がなくて。あと、アルバムで一番好きな曲が「FINDING MY WAY HOME!」だったから、その2曲を1つにしてMVを作ったんです。
──このMVのコンセプトは?
Kazuo:「ONCE UPON A TIME IN JAPAN!」は、日本がコンセプトで、自分の生い立ちとか、Kazuoと日本の繋がりを映像にしたかったんです。「FINDING MY WAY HOME!」は全部ハンガリーで撮った映像。日本にいるKazuoから世界に行くKazuoを表現できたらなと思ったんです。
──1人のアーティストとして、今後どんな音楽をやっていきたいですか?
Kazuo:全部ですね。ジャンルは意識しないで、自分が今、日常で聞いてる音楽からインスピレーションを受けたものを取り入れてやっていきたいです。『KAMI!』は日本に帰ってきてから思ったことやパーソナルライフのことを書いてるんです。いろんなところを転々として生きてきて、どこに所属してるかわからない自分のことをラップしてる。
──それこそ「DOKO?」という曲も入ってるし。
Kazuo:でも、今は、俺はどこでもやれるじゃん。どこにいても場違いじゃないじゃんって思えるようになってきたんです。『AKUMA』や『KAMI!』の頃の自分の人生はカオスで、もやもやした気持ちを歌ってた。でも、今は、ハンガリーのフェスに出たこともそうだけど、そういう葛藤が薄れてきて、どんどん自信がついてきた。だから。これからのKazuoに自分でも期待しています。
──ちなみに、首に入ってる蜘蛛の巣のタトゥーはどんな理由で入れたんですか?
Kazuo:これは半年前くらいに入れました。左の目元に蜘蛛のタトゥーを入れてるんですけど、それは3年くらい前、LAにいるときにニキビ痕と蜘蛛に刺された傷を隠す目的で入れたんです。だから、蜘蛛繋がりで、今度は誰からも見えるところに蜘蛛の巣を入れようと思って首に彫ったんです。別に深い意味はなくて、ただ蜘蛛が好きなだけ(笑)。
──スパイダーマンも好きですか?
Kazuo:めっちゃ好きです。
──ブルックリン繋がりで、マイルズ・モラレスの方が好き?
Kazuo:マイルズはめっちゃ好き。映画も見たし、コミックも買いました。ブルックリン生まれでミックスの子で。マイルズは13歳という設定で、俺が音楽に目覚めたのも13歳だったから重なるところが多いキャラクターなんです。ピーター・パーカーも共感できますよ。NYに住んでいたときに俺もおばさんと一緒に住んでたから。
──じゃあ、目指すはMARVEL映画のサントラ制作ですね。Post MaloneとSwae Lee の「Sunflower」のようなヒット曲を作ること。
Kazuo:それが叶ったらもう音楽から引退です(笑)。人生からリタイアしてもいいくらい。自分だけのSunflower、でっかいひまわりを咲かせたいですね。
取材・文◎猪又 孝
写真◎川田洋司
リリース情報
▲『KAMI !』 ジャケット
2023年7月26日(水)リリース
https://kazuo.lnk.to/kami
M1. ONCE UPON A TIME IN JAPAN!
M2. ORIGAMI!(KAMI! VERSION)
M3. GENKI!
M4.BANZAI!
M5. FINDING MY WAY HOME!
M6. FILLER!
M7. WHAT SHOULD WE DO?
M8. DOKO?
M9. FREEBOYRADIO
M10. METROCARD!
◆インタビュー【2】へ戻る
◆インタビュー【1】へ戻る