【インタビュー】Kazuo、海外大規模フェスで掴んだ手応え「自分だけのSunflower、でっかいひまわりを咲かせたい」

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■これはアルバムの1曲目だと思って
■自分の生い立ちをできるだけ話そうと思い書いた


──ルーツ音楽について伺います。ヒップホップで一番影響を受けたアーティストは?

Kazuo:最初はエミネムでした。あとはLil WayneとかBig L。

──Big L? 両親の年代じゃないですか。

Kazuo:そう(笑)。俺が生まれる前のラッパーだけど大好きでした。あとはJay-Zとか。90年代のラッパーに影響を受けました。

──それはリリック面で?

Kazuo:リリックですね。ラッパーの生き様や境遇を歌ったリリックが好き。何かと闘う姿とか、困難を乗り越えて成功するまで、みたいなストーリーを書いたラップが好きです。

──Jay-Zの「Hard Knock Life」的な?

Kazuo:そう。自分の人生にも辛いことがあったし、そういうことを書くラッパーには共感します。いつか自分も成功したら書きたいです。


──Kazuoさんの特徴のひとつである早口ラップは、いつから、どんなきっかけで始めたんですか?

Kazuo:いろんなフロウをしていく中で偶然に学んだんです。早口ラップはあまり聴かないんですよ。変な言い方だけど、早口ラップはあまり好きじゃない。でも、やるのは好きなんです(笑)。

──ロックやポップスからの影響も感じますが、ロックで影響を受けたアーティストは?

Kazuo:レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンとか、リンプ・ビズキットとかリンキン・パークとかレッド・ホット・チリ・ペッパーズとか。オルタナティブというか、いろんなサウンドがミックスされているバンドが好きです。

──リンキン・パークはJay-Zとコラボした「Numb/Encore」から入ったんですか?

Kazuo:そうです。めっちゃ好き。あれがきっかけでした。まずはJay-Zを聴いていて、Jay-Zがバンドとコラボしたと。ラップとロックで一緒にできるんだ、それって可能なんだって衝撃を受けました。

──Kazuoさんは自ら動画を編集してMVを作ったり、ジャケットのグラフィックデザインを手がけたりもします。D.I.Y.スタイルになったきっかけは?

Kazuo:誰もやってくれなかったから(笑)。自分でやるしかないなって(笑)。

──もともとアート系に興味があったんですか?

Kazuo:一瞬だけ映画監督になりたかったんです。それでカメラをいじったり、編集アプリをいじったりしてたから、その経験が活きたのかも。今はやってくれる人ができたけど、仕上がりを待つのが面倒くさいから自分でやっちゃうんです。

──2020年6月にリリースした『AKUMA』というデビューアルバムは、どんな思いで作ったんですか?

Kazuo:『AKUMA』はミックステープですけど、あの頃はヤバかったです。金も無かったし、この先ラップを続けていけるのか不安になって。友達も亡くなったし、住んでたNYの家の周りも治安が悪かったし。この環境から早く抜け出したい!と思って、半年くらい引きこもってずっと曲を作ってたんです。

──当時、一番の悩みだったことは?

Kazuo:特にお金の問題です。稼げないし、母にはラッパーになることを反対されてたんです。ラップで食べていくのは無理だと言われていて。だから母を安心させたかったし、僕の職業はこれなんだということを証明したかったんです。

──それで「なにクソ!」と奮起するものの、道がなかなか開けなかった。

Kazuo:そう。最初は二十歳くらいで売れて世界ツアーをやってるくらいに思ってたんです。でも、22歳、23歳と年を重ねていて「やばい、もう20歳越えてるじゃん、早く頑張らなきゃ」って。周りの友達は大学を卒業して働き始めたし、俺は何をしてるんだろう、何かしなきゃなって焦ってた。

──2020年は、5月に起きた黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人の警察官によって死亡させられるという事件をきっかけにBlack Lives Matter運動が大きく広がった年でした。『AKUMA』の制作に影響はありましたか?

Kazuo:ありました。僕も警察からレイシャルハラスメントを受けたし。だから『AKUMA』には怒りも入ってるんです。俺の人生はゴミだと思って作っていたから。そのフラストレーションを叩きつけて作ったんです。

──今回のアルバム『KAMI!』は、『AKUMA』=悪魔とは反対だという意味でタイトルを付けたんですか?

Kazuo:そうです。まずは目立つアルバムタイトルが欲しかったんです。俺のことを知らない人がこのタイトルを見たら「え、神?」「自分のことを言ってんの?」「ふざけんじゃねぇよ」って思うだろうけど、それくらいインパクトのあるタイトルにしたかったんです。あと、自分が作った曲を友達に聴かせると、「You’re God!」「お前は神だ」ってよく言われるんです(笑)。だから神にしちゃおうって。

──注目を浴びるきっかけになった2018年リリースの「ICHIBAN」では、《I’m 天才》とラップしてたから、今回はさらに上を行こうという気持ちもあった?

Kazuo:ありましたね(笑)。本当、ナルシストラップです(笑)。

──内容的にはどんなアルバムをめざしましたか?

Kazuo:日本に帰国してから考えたことや自分に起こったことをラップしたかったんです。特別なコンセプトみたいなものはなくて、「これについて話そう」「これについて話そう」って1曲ずつ作っていって、その中から好きな曲を10曲入れました。

──英語、日本語のバイリンガルでラップをしますが、最初はどっちの言語だったんですか?

Kazuo:英語です。中学で始めたときも英語。日本語は高校時代にちょっとだけ入れたことがあるけど、本格的に使い始めたのは19歳の頃。「GAIJIN」の頃です。

──なぜ日本語を取り入れようと?

Kazuo:NYでは日本語の方が目立つから。あと、基地の中の学校に通っていたときは英語と日本語をミックスして会話するのが普通だったから、その感覚で日本語を入れたんです。

──“話す”と“書く”では感覚が違うように思いますが、書きづらさはなかった?

Kazuo:僕の中ではミックスされてる状態が1つの言語という感覚なんです。頭で何かを考えるときもバイリンガルだから。以前は50/50に分けることを意識してたんです。たとえば1stヴァースが英語なら、2ndヴァースは日本語にして、フックは英語と日本語を半分半分とか。今は気にしなくなりました。

──しかもミックス具合が細かいんですよね。たとえば「ORIGAMI」には《Fucked with my 健康、Nobody cared tho/毎月転校、喧嘩も結構/Beat up the 便所、no wonder I’m vengeful》というリリックがあって、英語と日本語でライミングもする。


Kazuo:自然とそういうミックスになってるんです。ライムもあまり意識せず出てくる。その方がラップが面白くなるというか、そこにラップの面白さを感じるんです。

──アルバム『KAMI!』からの第1弾シングルとなった「ONCE UPON A TIME IN JAPAN!」は、どんな曲を目指しましたか?

Kazuo:めっちゃハイテンションな曲を作りたかったんです。ギターサウンドが大好きだから、友達が作ったギターのループの中から1個選んで、まずはドラムとギターでビートから作りました。で、最初の4小節くらいを作ったときに、これはアルバムの1曲目だと思って。1曲目に決めたから自分の生い立ちをできるだけ話そうと思って書きました。

──第2弾シングル「ORIGAMI! (KAMI! VERSION)」は、どんな経緯でできあがったんですか?

Kazuo:『AKUMA』を出したあと、NYに残るか、LAに引っ越すか、それとも日本に帰国するか本当に迷っていて。その悩みから現実逃避したくて、いろいろと曲を作っている中で、「ORIGAMI」のデモができたんです。20分くらいでラップを書いた曲だったのに、ショートムービーを撮ってTikTokにあげたらバズって(笑)。その半年後にプロデューサーの友達に聞かせたら「これをフルバージョンの曲にしよう」という話になって、ビートをゼロから作り直したのが2021年に出したバージョンなんです。でも、その頃は悩んでたからいろいろと予定通りにいかなくて。いつかアルバムを出すときにちゃんと入れようと思っていて、それで新たに作ったのが今回のKAMI! VERSIONなんです。

──「ORIGAMI」というタイトルはどんな意味でつけたんですか?

Kazuo:ヴァースに《No 折り紙 cause I don’t fold》、サビに《get folded like 折り紙》というリリックがあって。foldは折り畳むとか折り曲げるいう意味だから、ダブルミーニングで折り紙という言葉を使ったんです。誰もがみんな一度は心を折り曲げられたことがあるだろうから。

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