【インタビュー #1】千秋 × SORA、『Focus Of DEZERT』で向き合ったDEZERTの美点「良い音楽を作り続けるということ」

■普段は絶対に言わないような内容で
■これだったら誤解されないでしょ？って曲

──6月17日からツアー＜DEZERT LIVE TOUR 2023“きみの脊髄と踊りたいんだっ!!ツアー”＞がスタートしました。今回のツアーと渋公公演では、ニューシングル「僕等の脊髄とブリキの夜に」が会場限定盤としてリリースされています。会場限定盤のリリースは9年ぶりだそうですが、この形式を取ったのはどういう経緯からですか？

千秋：そこは嘘をつけばいろいろあるんだけど、間に合わなかったというのが一番デカいんですよね（笑）。全国流通するとなると、大変なんですよ。

──スケジュール的に締切が前倒しになるという。

SORA：間に合わなかった、というのは確かにそうかもしれないと思うけど（笑）、全国流通ということに対しては、良いところと悪いところがあると思っていて。曲を作って、レコーディングして以降、CDに焼いて、パッケージして、お店に並べるというシンプルな作業に、壁が何個かあるんですよね。CDというものはバンドマンにとって、カタログ、名刺、グッズのひとつ。DEZERTは、「“ライヴにしか真実はない”という思いでやってる」ということをずっと言ってきているバンドなので。ライヴに来てもらえればいいし、CDは欲しい人が買ってくれればいいっていうか。だからDEZERTは当初、会場限定リリースが普通だったんです。


千秋：流通できなかったもんな。

SORA：僕がダンボール抱えてCD屋さんに直接行って、自分で委託書とかを書いて店頭に置いてもらっていたりしてた世代なので。流通なんて当たり前にできなかった時代でもあったから。

──会場限定リリースにも意味があるわけですね。

SORA：今、＜DEZERT＞というタイトルの渋公ライヴを控えていて、さらに“その先のことも見据えた活動をしていく1年にしようぜ”っていう中での作品だから。初心に帰るじゃないけど、“会場限定”で出すことにグッときているというか。原点回帰という言葉は好きじゃないんですが、原点を超えて届けていきたいなという感じはしていますね。


──収録曲の「君の脊髄が踊る頃に」はドラマティックで良い曲なのはもちろんですけど、個人的には「僕らの夜について」という、リアルな思いを素直に紡いだ曲が、会場限定盤というライヴと直結した場所で手に入れられる作品に収録されていることがいいなと思ったんです。ライヴという場所で得た気持ちや感動を、持ち帰ることができる感覚というか。

千秋：普段は絶対に言わないような内容で。僕という人間としては、思ってても言いたくないんだけど、最近ライヴの最後らへんになると、ちょっと思うことがあって。ただ、それがなかなかMCとかで上手く伝えられなくて、正直、誤解を招くことも多かったんです。こういう伝わり方するの嫌だなとか後悔もいっぱいある中で、これだったら誤解されないでしょ？っていう曲。だから、ライヴが終わってから聴いてほしいんですよ。もちろんこれを聴いてライヴ行こうって、ひとりでも思ってくれる人がいれば嬉しいけど。

──ライヴに密着した曲ですから。

千秋：昔は、バンドによっては10万枚売れたいとか、売れてポルシェに乗りたいとかあったと思うんですけど、その中で僕らはずっと「デカいところでライヴしたい」って言ってた気がするんです。デカいところでやると言っても、それで富や名声を求めてるわけじゃない。じゃあ何がしたいのかっていったら、“その時、ステージ上でどう思うか”なんですよね、これもずっと言ってることで。俺にとってはステージ上で何を思うかが大事で、そのために曲を出しているんです。食うために曲を出していない。そのステージ上でどう思うかの、2023年現在地点のアンサーソングが「僕等の夜について」。現時点で俺のライヴ、俺のMCについて誤解を招かないようにまとめて、メロディに乗せた曲なんですよ。だから本当は「僕等のライヴについて」なんでしょうけど、それだと文学的じゃないから、ちょっとカッコつけさせてもらった（笑）。

──この曲をあえて書くようなきっかけがあったんですか？

千秋：1月のツアーの時、なんかうまくやろうとしちゃった部分があったんです。昨年の武道館イベントが終わって、何を言うかのハードルが勝手に自分の中で上がっちゃって。ただ、思ったこと言えばいいのにね。“それを払拭するためにも、曲を作らないと”ってなって1月のライヴが終わってすぐ曲を作り初めてできた曲が「僕等の夜について」。どうなるかわからないですけど、今はそういう気持ちをもってライヴでやりたいなと思ってます。


──ライヴで実際に聴きたい曲でもあります。SORAさんはこの曲をどう受け取っていますか？

SORA：DEZERTって不器用な集団なので、ステージ上でしか出せない言葉だったり、感情だったりがあるんです。DEZERTのそういうゾーンが曲に表れたっていうか。伝えたいことが爆発してしまうようなDEZERTらしい熱量っていうものが、メンバーに生まれる瞬間があって。そういう曲のひとつになるんじゃないかな。本当に不器用な4人なので、「こうしようぜ」って言ってできないんですよ。“今こう思ったからこうなった” “今こう思ったからこういう発言をする”っていう。千秋が言ったように、普段はまったくそんなこと口にしないけど、ステージ上では思うっていうのは、僕自身もそう。…すごく面倒臭いバンドですよね（笑）。不器用で、でもステージ上でしかできないことがある。それをいろんな人に見てほしい。良いものを作り続けてることを知ってもらうために、いろいろ頑張るので応援してくださいという思いです。

取材・文◎吉羽さおり







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