【インタビュー #1】千秋 × SORA、『Focus Of DEZERT』で向き合ったDEZERTの美点「良い音楽を作り続けるということ」
■本格的に整理しないといけないのは
■モチベーションの部分
──「DEZERTがDEZERTに向き合う」ということですが、千秋さんはDEZERTの曲をアレンジすることで、新たな面が何か見えたりもしましたか?
千秋:ないですね。僕はこの企画を俯瞰的に捉えていて。こういう言い方をするとトゲがあるかもしれないけど、この企画をやったからといって、DEZERTの世界は変わらないし、立ち位置も変わらない。だけど、僕はずっと新しいものが作りたいし、SORAくんもきっとそうだと思うんです。“これで世界が変わる”と思って1曲1曲作ってきたし、結果、なかなか変わらなかったり、変わったときもあったり。たとえば「白痴」も、この曲を世に出すことでDEZERTと俺の世界が変わればいいなと思っていたんですけど、結果は別に変わりはしなかった。そうやって、“これで世界が変わる”と思って作った曲をさらにアレンジするというのは、僕的には悔しい部分があるんですよ。今回の企画には“曲の良さを伝える”という枕詞があるけれど、今までも僕は最高に、一番いい形で世に出しているので、まだそれでは曲の良さは伝わらないのかなと。まあ、これはひねくれ者の考え方ですけどね(笑)。
──なるほど。
千秋:ただ、次に自分が新しく曲を作るためだったり、新しく曲を作るときに、もっと頑張ろうかなと思える企画になったとは思いますね。
SORA:この企画を通じて、メンバー自身もDEZERTに対して違う観点で向き合えたんじゃないかなと思う。“#2”のソロアングルライヴ映像も僕が編集をしているんですけど、みーちゃん(Miyako)はここでこういうクセがあるんだとか、千秋はこうなんだとか、Sacchanは全然前向かんやん!とか、観ていて面白かったんですね(笑)。アコースティックライヴも映像ディレクションをしながら、なるほどなと思ったり。目的通りDEZERTと向き合えている気がしているし、あとはこれをどうお客さんに伝えて、どうやってもっとワクワクさせるか、世に展開していくかを毎日考えています。
──自身のバンドだけど、ファン目線というか客観的視点も入っていそうですね。
SORA:ファン目線もそうだし、DEZERTを知らない人にも届けたいから。盛り上げたいし、自分たちがワクワクしたい。それだけなんですよ。僕たちのテンションを上げて次につなげたいので。そのために自分も含めメンバーも、毎日葛藤している気がします。やるべきことはいっぱいあるのに時間が足りなかったり、もどかしい気持ちもありますから。
──次へのきっかけになった武道館イベントという経験を経て、より活動的になっているバンドのワクワク感や期待感というものに関して、千秋さんはどう捉えてますか?
千秋:うーん。それよりも、“今やるべきことは何か”というものに対する苦しみから出た企画だと思っていたので。SORA君が昨年の武道館イベントを仕切ることに関して、僕は仕切るの反対をした身なので。武道館の話をどうこう言える身ではなかったんですよね。
──そうだったんですね。
千秋:でも、そこからいろいろ見えたものがあった。本当は、そこで“A”という曲がSORA君の中で芽生えたとして、“DEZERTの世界がこれで変わる。人生が変わるかもしれない”という楽曲Aを作り出せるのであれば、きっとそれがベストだと思うんです。人間は、0から1を生み出すことに憧れを持つから。
──たしかに。
千秋:そこで“自分の役割は何だろう? 今できることはなんだろう?”と考えた結果が、今回提案してくれた中に細かく丁寧に書いてあった。それを見て、“今、何をやるべきかに向き合えるきっかけなんだろうな”というふうに僕も思ったという。
──アーティスト自身の現在の考えがリアルに反映された映像施策と言い換えることもできそうですね。
千秋:ますます良いものを作っていかなきゃいけないし。僕らはたぶん別に、渋公に立つことにワクワクしてるわけじゃないと思うんです。実際、渋公のステージにはすでに立っているし。でも、ステージ上では唯一、煩わしいことや人生で悩むことだったり…それがなくなることはないんやけど、そこから解放されて“自由だ!”みたいな感覚を昔は持っていたわけで。これは僕たちだけじゃなく、歴の長いバンドやアーティストを見てもそうだと思う。ただ、若い頃のような迸るものっていうのが消えてきてる中で、あの手この手を使って、モチベーションを保っている感じだと思うんです。
──若い頃とは立場も違いますし。
千秋:まだ自分で答えは出てないんですけど、2023年は本格的にモチベーションの部分を整理しないといけないな、という感じに僕はなっていて。別にこの映像コンテンツの再生数が3でも5でもいいんですよ。“この企画バズれ”なんてことは思ってない。だって僕は“良い曲だ”って自画自賛できるし、メンバーのこともカッコいいと思ってるので。5年後とか10年後、この映像で初めてDEZERTに出会う人がいるかもしれない。もしかしたら1000年後、“この曲いいね、1000年前の人、良い曲書くね”って思われる可能性もゼロじゃない。そうやって勝手に世界で動いてくれるのはうれしいことですよね。
──音楽を含むアートにはそういう認識のされ方がありますし。メンバーそれぞれのやり方や持ち味で、今できることに向き合っているようですね。
SORA:コロナ禍に入ったときかな、とある日にSacchanが、“人は考えるのをやめたら、人ではない”って言ったことがあって、謎に(笑)。何の気なしに、世間話の流れで言った言葉だと思うんですけど、それがやけに俺に刺さったんですよね。ガキの頃から何も考えずに生きてきて。人がいろんなことを考えてた時、俺は自由にしてきちゃったような人なので、その言葉にすごく食らったんです。それからいろんなことを考えるように、良くも悪くもなってしまったなと(笑)。
千秋:まあ、俺らの周りには考える人がいなさすぎるんですよ。
SORA:確かに。これは悪口でもなんでもなく、いないんです。
千秋:去年も、いろいろなことをあれこれやってきた中で、何回も言われたのが、“じゃあ、DEZERTがやればいいじゃん”っていうこと。
──ある種、他人任せというかDEZERTメンバー頼み。
千秋:たとえば、「何か面白いことを一緒にやりましょう」と言っても、「DEZERTがやればいいじゃん」って返ってくる。これは考えることを放棄してるなと。その言葉には、夢がないし、痛手を伴おうと思ってないし、危機感がない。かと言って、俺らも何か結果を残してるわけじゃないから。結果を残す…それが動員なのかどうかわからないし、インパクトでもいいんだけど、口だけにならないように。こういう映像企画ひとつにしろ、イベントやツアーやワンマンひとつ取ってもそうだけど、いろいろ考える歳になったかなって。コロナっていう足枷が外れたことで、もう言い訳はできないですからね。
SORA:だからまずは行動したいです。
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