【インタビュー】フジロック主催SMASH「いろんな意味において、今年が正念場だと思っています」
■フェスは飽和状態。どう他との区別をつけていくか
──今年のラインアップの注目ポイントはありますか?きゃりーぱみゅぱみゅから矢沢永吉まで、すごい振れ幅ですが。
佐潟:頑張って振ってみました(笑)。やっぱりどうしても<フジロック>にはイメージがあるので、あまり振れ幅を大きくし過ぎるとお客さんが離れてしまうんですけど、こうなってくるとある程度…180°に振るわけにはいかないですけど、120°とか150°くらい振れ幅を持ったほうがバラエティに富んでいろんなお客さんに来てもらえるのかな。
──これから順次ラインナップが発表されると思いますが、今年はどんな<フジロック>になりそうですか?
佐潟:コロナが5類になってからのお客さんへの対応がどういう感じになっていくのかはまだ見えてなくて、いまだに電車ではマスクをしてる人も多いですし、コンサートでもマスクをしたりもしてるので、その辺がどうなっていくのか、色々考えたりします。
──ここ数年でマスクにすっかり慣れたので、<フジロック>で土埃が舞っても怖くなくなりました(笑)。
佐潟:でも昼間は暑いし雨降ったら濡れますから、マスクも大変ですけどね(笑)。
──音楽文化においてフェスの重要性はより大きくなっていますから、ほんとに楽しみ。
佐潟:でもそれも飽和状態にあって、夏になると必ず各地で毎週2~3ヶ所でフェスが行われているような状態ですから、どのようにオリジナリティをもって他との区別をつけていくかは大きなポイントだと思います。それは外タレが出てるということだけではなく。
──圧倒的な存在感を放つ<フジロック>に、何か心配あります?
佐潟:いや、ありますよ(笑)。他のフェスに追い抜かれてる部分はあったりするので。
──苗場の空気、解放感、非日常感。不便さの中で対峙する人間力の大切さとか、音楽を通しながら自己開放する喜びとか、<フジロック>が持つ個性とパワーは誰にも真似できないと思いますけど。
山本:ええ。ただ世の中的には、いろいろなフェスが出てきて内容も快適さもアップデートされているという中で、<フジロック>には元々「不便を楽しむ」というコンセプトがありましたけど、環境的なことも含めて来たことのない人にも楽しんでもらえるようにアップデートしていくっていうのは大切なのかなとは思います。時代に合わせる必要も出てきますし、そこを怠っていくと、単に「最初に始めたフェスだから」「古いフェスだから」という前提だけになっていってしまう。今まで楽しんでもらったお客さんも失望させないように、新しいお客さんには「こんなフェス見たことない」と、なおかつ快適に楽しんでもらえるように毎年アップデートさせていきたいと思っています。じゃないと、フェス自体が衰退して面白くもなくなっちゃうと思うんですよね。
▲<FUJI ROCK FESTIVAL’22>RED MARQUEE
▲<FUJI ROCK FESTIVAL’22>FIELD OF HEAVEN
──エンターテイメントの最たるポイントは、予定調和じゃないところにあると思うのですが、そういう意味で<フジロック>は、天候面においても思い通りにはならない。最初から予定調和にならないことが分かっているのは、魅力的だと思うんです。
山本:良くも悪くも、ですよね(笑)。
佐潟:予定調和じゃないというところが、そもそもフェスティバルの本質だと思います。いろんなステージが同時に進行してる中で、ある程度自分で決めていかないといけないし。コンサートは、会場行ってライブ見て終わったら帰るというものですけど、フェスは好きな音楽を聞いたり休憩したりご飯食べたり自分で決めるところが、普段のコンサートのスタイルとは違うところかなと思います。
山本:いろんな原体験ができるということが、ライブでありフェスであると思うんですよね。<フジロック>でいえば、苗場の山の中という環境による非日常があったりする。個人的には、そういうのを感じてもらうことが必要なのかなって思います。
──出演アーティストも、<フジロック>は特別なものと感じているのかな。
山本:やっぱり「特別だ」って聞きます。だからこそ、何かスペシャルなことやサプライズを考えたりしてくれますし。何度も来てる洋楽の人たちは「出た時の体験・経験が凄かったからまた来たい」と言ってくれて、「今度はここのステージでやってみたい」って話になる人たちもいますね。
ハリー:実際に、ケミカル・ブラザーズがフジロックのライブをDVDとしてリリースしたりしてますよね。そのくらい海外のアーティストにとっても特別なんだと思います。
──今年も伝説のステージが見られそうですね。先ほど、ヘッドライナーを決めるときは社内でも意見が割れるとおっしゃってましたけど、そういう時って誰の意見が勝つんですか?圧が強い人?
山本:確かに、何が勝つんですかね?
佐潟:まぁ言ってみても、結局ダメだったら否定的だった意見の方に戻ることもありますよね。最初は「フランク・オーシャンでいこう」って言ってても、ギャラが折り合わない…みたいな。まぁコストとのバランスもありますからね。
──海外だったら渡航費もかかりますね。
佐潟:でもそういうパターンって結構多いですよ。これが理想と思って話してみるんですけど、結局スケジュールやお金が合わなくて、じゃあこっちで、って。
──でも自分にはなかったアイディアに「なるほど、それがいいな」って思い直すこともありますよね。
佐潟:当然ありますね。
──話だけお伺いしてると、なんか楽しそうですね。
佐潟:最近少しめんどくさいですけどね。勝手に決めてくれと思います(笑)。
山本:何も決まってなくて、あれがいいねこれがいいねって言ってる時だけが楽しい(笑)。実際に動き出して、「あぁ、決まらない…」とかなったり、「いや、それはあんまりよくないでしょ」っていう意見が出てきたりすると、途端に面白くなくなる。
──(笑)、ストレスもいっぱいあるでしょうね。
山本:「あれ呼びたい」「あれカッコいいよね」っていう夢話をしてる時期が一番楽しいです。
──いろんな制限もなくなり、本来の意味で<フジロック>のリスタートですから、我々はとにかく楽しみ。
佐潟:いろんな意味において、今年が正念場だと我々も思っています。去年はゲートに「SEE YOU IN 2023」として開催日程を書いていなかったので、みんな心配してたみたいですけど(笑)。
山本:僕達も心配しましたけどね(笑)。「あ、書いてない」って思って。
佐潟:単純に「今年はもう書かなくてもよくない?」って俺が言っただけなんですけどね(笑)。
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