【インタビュー】フジロック主催SMASH「いろんな意味において、今年が正念場だと思っています」

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2023年の<フジロックフェスティバル '23>は、7月28日(金)から30日(日)にかけて開催される。2020年のCOVID-19蔓延による悲痛の開催中止、2021年の海外アーティスト不参加という<フジロック>にとって苦渋の時代となったコロナ禍をくぐり抜け、2022年には「いつも通りのフジロック」ではなく「いつも以上のフジロック」が実現された。

そして2023年。3月にはマスク着用も原則不要とされ、個人の主体的な選択が尊重されるようになった。ひとりひとりの自意識を尊重し各自で責任を全うするという精神性は、そのまま<フジロック>のあり方と共鳴する。

「不便を楽しんで欲しい」とし、「俺の夢はね、お客さんがどのステージも観なかったっていうものなんだよ」(代表・日高正博)と言い放つSMASHは、2023年をもって入場ゲート手前のフリーエリア「THE PALACE OF WONDER」も完全復活させることで、本来の<フジロック>を4年ぶりに取り戻すこととなった。

ロッカーたちは、自らの信念を貫きながら毎年ひとつひとつを乗り越えたことで、この数年を噛みしめより頑強な精気を再燃させていることだろう。“本来”の<フジロック>から、より強固でより多幸感あふれる“至高”の<フジロック>に刷新されるであろう<フジロックフェスティバル '23>は、どういうフェスになるのか。

フェス開催に向けて、忙しく動き回るSMASHのスタッフをキャッチ、<フジロックフェスティバル '23>の行方を聞いた。登場いただくのは、ブッキングを担当しているLA在住の佐藤ハリー氏、WHITE STAGE担当の山本紀行氏、そしてGREEN STAGEを担当する佐潟敏博氏の3名である。

  ◆  ◆  ◆

■コロナ禍を経て、どれくらいお客さんが戻ってくるかわからない状況

──2023年、ついに本来の<フジロック>が帰ってきますね。

佐潟敏博:そうですね。THE PALACE OF WONDER(ゲート前にある入場無料のエリア)も復活するし、そういったことも含めて、4年ぶりに本当に帰ってくると言えると思います。

──我々オーディエンスが待ち望んでいたものですが、それ以前にスタッフの方々が切望していたものなのでしょうね。その間に得たものはありましたか?

佐潟:ここ2年はいろいろな制限があった中でやってきましたので、それを取っ払えるというのはすごくいいことだと思っています。2019年まで欠かさず開催してきて、2020年はできなくて、2021年はいろんな規制の中でやったわけですけど、規制があったことで一旦ステージのレイアウトだったりお客さんの動線であったり、いろんなことを見直せたというのはありますね。密を避けるための新しい場所を作ったりという見直しができた。コロナ自体はよくなかったことですけど、そのおかげでまた1ステップ上がれたかなと思います。

──逆に失ったものや反省点は?

山本紀行:規制もあったことで、これまで施設なりをどんどん足していったところを見直しし、「ここはお客さん的に不都合があったかもしれないね」と、ある意味で反省点が浮き彫りになった気がします。それによってエリアの配置などが改善できましたし。



──ここ2~3年、参加してくれたオーディエンスやアーティストなどからは、どんな声が届いていたのでしょうか。

佐潟:2021年に開催した時は時期的に悪かったので、やっぱり「なんでこの時期にやるんだ」という声は多かったですよね。そういう時期だったので会場の人が少な過ぎて、お客さん的には快適だったという声はありました(笑)。特にその前の2019年は1日で4万人入っていた年だったので、それと比べると毎年来てる人たちにとってはすごく快適だったのかなぁと。我々としてはあんまり良くないんですけどね。

──ビジネスとしては(笑)。それにしても風当たりが強かった時でしたね。フジロックに限らず、ストレスが蔓延していた世相だった気がします。

佐潟:2021年は特に神経過敏な世間だったので、めくじらを立てる人は多かったです。結局、あの時期にやったのはうちだけだったんですよね。他のフェスは全部取り止めてましたから。

──でも実際に来たお客さんは実は快適だった、なんて…皮肉ですよね(笑)。

山本:すいてましたからね(笑)。あの時に来ていただいた方達っていうのは、ある程度コアな層であったと思うのですが、「やっぱりフジロックって楽しいよね」とも言っていただいたので、ああいう状況の中ではありましたけど「やる意義はあったのかな」って、終わってからお客さんの声を聞いて思いました。

▲<FUJI ROCK FESTIVAL’22>GREEN STAGE

▲<FUJI ROCK FESTIVAL’22>前夜祭

──そんなコロナ禍を経ての2023年ですが、<フジロックフェスティバル '23>のラインナップに関しては、どのような方針だったのでしょう。

佐潟:コロナ禍を経てどれくらいお客さんが戻ってくるかわからない状況だったので、2019年以前のように外国人が多くなってコストも膨らんでいくかたちより、核になるような日本人アーティストも入れてプランニングしたほうがいいのかな、と思いました。日本人アーティストのみでやった2021年の経験もあったので。

──出演ラインナップが全て国内アーティストというのは<フジロック>にとって初めてのことでしたが、お客さんからの反応はどうだったのですか?

佐潟:おおむね「しょうがないよね」っていう感じでしたね。海外から入国できない状況でしたから、<フジロック>を好きな人にとっては「また苗場に行ける」というところで、そこにはあまりマイナスはなかったんです。

▲<FUJI ROCK FESTIVAL’22>WHITE STAGE

──錚々たる洋楽アーティストがヘッドライナーを務めてきたフェスにもかかわらず、国内アーティストだけで成り立ってしまうところに<フジロック>の凄みを感じました。ラインナップが決まっていなくてもチケットが売れるというのは、フェスそのものに魅力が詰まっている証ですから。

佐潟:もちろん洋楽のアーティストがいないなら行かないという意見もある程度ありましたけど、それでも来てくれた人もいましたし、「フジロックに行きたい」「苗場に行きたい」っていう人たちもいたので、ホッとしたというかありがたかったですね。

──<フジロック>であれば、ラインナップは何でもあり。…ってそんなわけにもいかないか(笑)。

佐潟:そうですね。そこを越えてきてからの今年だったので、ある程度元に戻さないと。やっぱり離れていったお客さんも多いですし、「フジロッカー」と呼ばれるようなお客さんも歳を取って年々減ってきてると思うんですね。もう一回掘り下げて広げていかないと長続きしないのかな、と思います。

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