【インタビュー】TENSONG、14人編成のストリングスを迎えた壮大バラードに「好きから愛してるに変わった瞬間」
2023年2月から<全国47都道府県対バンツアー「〜JUST FOR FUN 2023〜」>を開催中のTENSONGが、5月10日に新曲「コイビトミマン」を配信リリースした。同曲は“友達以上恋人未満”の関係性をテーマにしたバラードだ。レコーディングには14人編成の生ストリングス隊を招き、スケールの大きなサウンドスケープを実現させている。
◆TENSONG 画像 / 動画
生々しい心情をしたためた「コイビトミマン」で、たか坊(Vo)はリスナーへ何を伝えたかったのだろうか。拓まん(G)のエモーショナルなギターソロは楽曲の心象風景を雄弁に物語り、アルフィ(DJ)はストリングスチームの音色に大きくインスパイアされたという。47都道府県ツアーや、ツアーファイナルであり初ワンマンである8月19日開催のKT Zepp Yokohama公演にも触れながら、「コイビトミマン」の核心に迫った。
◆ ◆ ◆
■負の感情を言語化して
■それをプラスに転化していく
──新曲「コイビトミマン」は、“友達以上恋人未満”をテーマにした壮大なバラードです。TENSONGとしては久しぶりのラブソングですね。
たか坊:曲自体は2年くらい前、大学時代に作ったんです。最近はアッパー系の曲が続いていたので、このタイミングで歌い上げる系のバラードをリリースしたくて、デモを形にし始めました。
──様々なシチュエーションの歌詞を書くたか坊さんにとって、ラブソングとはどういうものでしょう?
たか坊:僕にとってのラブソングは、失恋ソングですね(笑)。というのも、僕がハッピーな愛の歌を書くと、美化し過ぎちゃうんですよ。客観的に歌詞を読んだときに、チープだと感じてしまって。もともと僕は、負の感情を言語化して、それをプラスに転化していく反骨精神的な感覚で歌詞を書いているので、恋愛でもそういう状況のときに歌詞が書けるんです。ドープな経験は、幸せな経験や想像より、多種多様な表現ができる。苦しかったり、しんどかった気持ちを言語化して、音で表現することによって誰かを救えたり、誰かの背中を押すことができるのであれば、それによって自分自身の心も救われるので。
▲たか坊(Vo)
──では、「コイビトミマン」も2年前、大学在学中の生々しい気持ちを書かれたものですか?
たか坊:はい。当時の僕の気持ちをそのまま書いたようなデモでした(笑)。
拓まん:それをブラッシュアップしたのが今の歌詞で。最初はあまり具体的なワードがなかったので、より分かりやすさを出すために、“インスタ”や“LINE”という時代を表すような言葉を入れてもらったり、サビの歌い出しの歌詞を“『好き』から『愛してる』に変わった瞬間”に変えたんですよね。当時作ってあったメロディと、作り直した今の歌詞がマッチしたんじゃないかなと思います。
──拓まんさんからアドバイスがあったんですね。“『好き』から『愛してる』に 変わった瞬間 もう君に勝てないから 何もかも許してしまうんだよ”は、「コイビトミマン」を象徴する歌詞だと感じてました。
たか坊:自分の気持ちなんですけど、それをよりキャッチーにわかりやすく言葉に表現できたというか。たとえば、自分の中で相手に対する気持ちが変化する瞬間は少なからずあって。やっぱり離れた時こそ、その人への気持ちがわかると思うんです。もちろん、愛という言葉に対する考え方はいろいろあると思うんですが。
──“こんなにこの人のことが好きだったんだ”と改めて気付くような。
たか坊:自分の中では、それが“愛する”っていう気持ち。愛してしまった時点でその人のことは忘れられないから、自分に勝ち目はない。そういう意味で、“もう君に勝てないから 何もかも許してしまうんだよ”と書いているんです。「お前は悪者だ」と言われたらもう悪者になるしかない。それくらい大きな存在…その人の心のヒーローになりたいっていう思いは、たぶんみんな少なからず持ってるんじゃないかな。
▲拓まん(G)
──ヒーローだから、カタカナ表記で、ジャケットのイラストにはスーパーマンのような恰好の素朴な人が描かれているんですね。
たか坊:“自分はコイビトミマンというヒーローなんだ”、“ずっと陰で支えるんだ”と考えれば、報われない愛も、また違ったニュアンスに変化するんじゃないかなと思うんです。もし相手が自分以外の誰かを愛したとしても、“僕はあなたを愛してるから、これからもあなたを支える”…そういう意味での“コイビトミマン”なんですよね。“愛してる”という思いは一方通行なもので、愛は見返りを求めるものじゃない…って、これは拓まんからの受け売りなんですけど(笑)。
拓まん:はははは。
アルフィ:今までにもラブソングは発表してきているんですけど、「コイビトミマン」は歌詞もサウンドも今までにないものになったと思います。TENSONGの進化を感じられる、綺麗な楽曲に仕上がりました。
──14人編成のストリングスチームを迎えてレコーディングしたそうですが、とても豪華で迫力のあるサウンドに仕上がっています。さりげなく打ち込みのビートが入る箇所もあって、普遍性と現代性が融合しているところもTENSONGらしいアプローチだなと。
たか坊:常に、やったことないことに挑戦していきたいので、「曲調的にも「コイビトミマン」はストリングスを生で録るといいんじゃないか」という話になったんです。自分たちの楽曲に生のストリングスが入るのは初めてのことなので、レコーディングはすごく感動しました。ストリングスの知識はそこまでないけど、ストリングス専用の楽譜とかを実際に目で見て理解したことは、今後のための勉強になりましたね。
拓まん:音楽を始めてから初めて聴く生のストリングスは、やっぱり全然違いましたね。しかもストリングスチームは、2〜3回弾いただけでOKテイクを出したっていう。そのスキルもとんでもないなと思いました。
アルフィ:本当にもの凄かったですね。僕はほんの少しだけストリングスの勉強をしていたんですけど、“ビオラってこういうふうに演奏するんだ”とか実際に目の前で知ることができて、いろいろ勉強になりました。本当に綺麗な音だったので、絶対にいい曲になると確信していましたし、ギターソロとストリングスが絡み合うアウトロもカッコいいですよね。
▲アルフィ(DJ)
──サウンドと歌詞に力があります。YouTubeにアップされたミュージックビデオのコメント欄に、聴き手それぞれが持つ“友達以上恋人未満”経験と重ねて、感想が記されているのが印象的でした。
たか坊:いろんなとらえ方ができる歌詞に仕上げれらたことも、よかったんじゃないかなと思います。ひとりの主人公がつらつらと思いをこぼしているようにも読めますが、歌の2番には相手から言われた言葉を入れて。それでも相手の気持ちは書かないようにしたんです。結果、“もし相手が自分のことを愛してくれてたら”と想像できるようになったと思うので、歌詞のとらえ方も十人十色になるんじゃないかな。だから、“この解釈が、この歌詞の正解”というものはないんですけど、僕個人としては、相手のことをわざわざ忘れる必要ない、という気持ちを込めているんです。
──「纏」インタビューでも似たようなことをおっしゃっていましたね。
たか坊:曲を作ってもう2年も経つのに、僕のなかには実際、この“コイビトミマン”がいるんです(苦笑)。聴いてくれた人に、“こういう経験してるのはあなただけじゃないからね。あなたと同じように、つらい気持ちを抱えている人たちがいるからね”という想いが伝わったらいいな、“自分はこれでいいのかな?”と考えるきっかけになれればいいなと思います。47都道府県ツアーでも披露できたらと思って、今練習してるんです。で、実はこれ、ストリングスを録る前に歌のレコーディングをしているんです。
──にもかかわらず、あれだけストリングスサウンドとヴォーカルがマッチしていることも驚きです。
たか坊:うれしいです。47都道府県ツアーの甲斐もあってか「コイビトミマン」のレコーディングの時より、今のほうが実力も上がっているし、録音した生のストリングスオケをバックに歌うと気持ちも乗ってくるので、感情も出しやすいんですよね。
──歌唱法については、“愛してしまった思いは全部 今の自分を裏切って”という部分の、最初の“愛”の“あ”には毎回ハッとさせられます。
たか坊:そういうふうに歌いたい、というはっきりしたヴィジョンがあったんですよね、レコーディング前から。でも、あそこをどう歌っているのか、自分で言語化するのはとても難しいですね…ガナリというか、喉を閉めてる感じかな。やっぱり歌詞がはっきり聴こえるということや、その内容が伝わるということはTENSONGの音楽においてマストなので。歌うときに息の使い方などにはすごく気を遣っています。「コイビトミマン」もそれが発揮できた実感があるし、同時に“まだいける”という感覚も得て。今後も自分の引き出しを増やしながら、自分ならではのスタイルを見つけていきたいと思っています。
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