【コラム】15秒のCMから伝わるKvi Babaらしさ。「俺みたいな奴」との「つながり」の足跡
この4月よりWEB、およびテレビで放送されている専門学校 首都医校・大阪医専・名古屋医専の2023年度新TVCMソングに、ラッパー・Kvi Babaの新曲「Ma Life」が起用されている。CMでは、「いのちを、照らせ。」というキャッチコピーと共に、印象的なKvi Babaの声が聴こえてくる。彼はこう歌っている── 「This is My Life/別に凄くなんて無いけど/いんじゃない?」。CMの15秒という制約の中で、Kvi Babaはとても彼らしいメッセージを発している。自らの弱さや不安をも露わにした言葉をラップとして紡ぎながら、それを安易な自己憐憫ではなく、自分という存在への祝福にまで昇華しようとしてきた、彼らしいメッセージを。
1999年生まれ、大阪府茨木市出身のKvi Babaは、2017年からSoundCloudに楽曲をアップしはじめた。その後2019年に、KMが全曲プロデュースを手掛けた1st EP『Natural Born Pain』とBACHLOGICやSALUなどが参加した2nd EP『19』、さらに、BACHLOGICが全曲プロデュースを手掛けた1stフルアルバム『KVI BABA』をリリースする。これらの作品たちはUSエモラップとの共振という面においても語られ、評価されたが、この時点で既にKvi Babaが綴るリリックは、「内省的」という一言では括ることができない特別なものがあった。
当時からKvi Babaの言葉は、自らが感じる痛みも哀しみも混乱も希望も虚飾なく書き綴るそのリアルさにおいてだけでなく、自らの言葉が聴き手の心に浸透していく、その「つながり」への自覚においても優れていた。彼は、『Natural Born Pain』の1曲目を飾る「Feel the Moon」に、彼のラップの根本姿勢とも言える、次の言葉を綴っている。「俺は俺と/俺みたいな奴のための歌うよ」。この言葉はきっと、何かしらのコミュニティや世代を背負う使命感から発されたものではない。むしろ、とても個人的な場所から発されたものだろう。だが、Kvi Babaはその極めて孤独な場所から、「俺みたいな奴」の存在を感知していた。この領域に辿り着くには、どれだけSNSで派手にアピールしても、マッチングアプリを駆使しても、無駄なことだ。Kvi Babaはきっと、自らの感情を、弱さを、掘り下げ続けることで、この世界に数多の「俺みたいな奴」がいることを知りえたのだと思う。
その後、2020年に3rd EP『Happy Birthday to Me』と4th EP『LOVE or PEACE or BOTH』をリリース(両作ともプロデュースは全曲BACHLOGIC。)。作品タイトルからしてKvi Babaの内面的な変化を感じさせるこれらの作品は、『Happy Birthday to Me』がiTunes StoreとApple Musicのヒップホップ/ラップチャートでそれぞれ1位を、『LOVE or PEACE or BOTH』がiTunes Storeのヒップホップ/ラップチャートで1位を獲得と、チャートアクションにおいても好調ぶりを発揮した。ちなみに、1st EPからこの4th EPまでのEP作品のジャケットのイラストを手掛けているのは、イラストレーターのJUN INAGAWA。繊細さと荒々しさを兼ね備えた絶妙なタッチで、Kvi Babaの音楽の内側に宿るものを見事に捉えている。
2021年以降も好調は続き、2021年には5th EP『Toge ni Bara』をリリース。その後リリースした「F**k U & Love U」や「Too Bad Day But... (Remix) feat. AKLO & KEIJU」といったシングル曲たちもロングヒットを記録する。2022年にはメンズコスメブランド「ギャツビー」のCMに出演するというトピックも。そして、2023年にTVアニメ 『TRIGUN STAMPEDE』のオープニング主題歌として「TOMBI」を書き下ろし、同曲をデビューシングルとしてメジャーデビューを果たすと、壮大なタイトルを冠したメジャー1stアルバム『Jesus Loves You』もリリースした。
こうして着実に歩を進めてきたKvi Baba。作品を経るごとに、彼の音楽が根底に抱き続けた肯定感は明瞭なものとして現前化し、楽曲は前向きさを増していった。「『この曲を僕へ捧げる。』」という一言から始まる「Fight Song」(2020年)は、リリックの隅々に切実な勇気が宿り、「Too Bad Day But...」(2021年)は、消えない痛みを隠すことなく描きながら、それでも光を掴み取ろうとする泥臭いほどの力強さを感じさせた。アニメ主題歌ということもあり日本国外のリスナーにもリーチする大きなきっかけとなった「TOMBI」には、夜から朝へと移り変わる時のあのグラデーションのように、ひとりの人間が不安だらけの「自分」という存在の奥底から、消えない希望を見出す姿が描かれた。
そうやって急速に進化を経ていくKvi Babaの音楽にあって、その変化の中でも消えることのなく残り続けた「芯」と言うべきものが、かつて「Feel the Moon」で歌われたあの言葉である。「俺は俺と/俺みたいな奴のための歌うよ」。Kvi Babaの綴るリリックは常に、彼が彼自身に言い聞かせる言葉であり、それと同時に、彼が「俺みたいな奴」に宛てて綴った手紙のような筆致も持っていた。彼はまるで友に語り掛けるように自分に語り掛け、自分に語り掛けるように友に語り掛け続けていた。
新曲「Ma Life」でも、それは変わらない。Kvi Babaは、彼の人生で見出した本当のメッセージを自分自身に向けて綴り、そして同時に、彼と同じように人生を受け入れ真剣に生きている「俺みたいな奴」に向けて綴っている。うまくいかない日常、堂々巡りの思考……それでも、弱くちっぽけな自らの存在を許し、鼓舞し、祝福するようにと。
文:天野史彬
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New Single「Ma Life」
2023.4.26(水) Digital Release
1. Ma Life ※専門学校 首都医校・大阪医専・名古屋医専 2023年度新TVCMソング
●配信LINK:https://tf.lnk.to/kvibaba_ma_life
Major 1st Album 『Jesus Loves You』
●価格 ¥3,000+税 | 品番 TFCC-81023
【収録楽曲 | 全12曲】
1. 愛槌
2. Fuck U & Love U
3. キスシーン
4. ⼆つ⽬の家族
5. いつかは
6. ヴァンパイアみたいな気分
7. Bye Bye (0331)
8. Baby Come Back
9. TOMBI
10. Tear Wave
11.ガラスの男
12. Too Bad Day But…(Remix) feat. AKLO & KEIJU
【CDショップ購入特典】
●Amazon.co.jp特典:メガジャケ
●汎用特典:A5クリアファイル
※2023.3.31(金) Digital Release
https://tf.lnk.to/kvibaba_jly
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