【インタビュー】ナッシングスの村松拓を擁するABSTRACT MASH、13年ぶりアルバムの精度を高めた魔法の言葉「いかに楽しくやるか」

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Nothing's Carved In Stoneの村松拓(Vo, G)やwinnieの梨本恒平(B)等が在籍するABSTRACT MASHが3月22日、前作以来13年ぶりとなる2ndアルバム『SIGNALS』をNothing's Carved In Stoneの自主レーベルSilver Sun Recordsからリリースした。2004年に地元千葉にて結成されたABSTRACT MASHは、心象風景を鮮やかに描き出すエバーグリーンなロックを鳴らし、2枚の作品をリリースした後、2011年5月に活動を休止。約7年の沈黙の後、2018年1月に自身のTwitterにてNext Liveを発表して活動を再開した。

◆ABSTRACT MASH 動画 / 画像

活動再開後はマイペースにライブを重ねてきた彼らだが、2ndアルバム『SIGNALS』を掲げて、4月から6月まで全国4ヵ所でレコ発ワンマンライブを実施するなど勢力的だ。ツアーを控えた村松拓、小林雄剛(G)、梨本恒平、榊巻雄太(Dr)のメンバー全員インタビューでは、いつまでも色褪せない4人の関係性と、成長を遂げたABSTRACT MASHの音楽性に迫った。

   ◆   ◆   ◆

■活動休止前の悪い自分を直すという意味でも
■活動再開後は自分からいろいろと言うように

──2018年に活動を再開されましたが、この5年間の主な活動はライブだったじゃないですか。待望の音源リリースまで5年かかったというのは、なにか理由があるんですか?

小林:活動を再開した当時から、気持ち的には“リリースしたいよね”っていうのはメンバーの共通認識としてあったんですよ。そのために4人で話し合いもしていたんですけど、なかなか楽曲を煮詰める作業が進まず、という感じで。

──煮詰める作業が進まなかったのはなぜですか?

小林:やっぱり久しぶりに音源を出すんだから、変えていきたいという気持ちが強くて。前と同じでは嫌だと、音的に。


▲村松拓(Vo, G)

──それは、作曲者である(小林)雄剛さんの想いがいちばん強かった?

小林:その気持ちは、僕がいちばん強かったですけど、みんなも同じだったと思います。

──昔と同じことはやりたくない?

小林:そこまで強くはなかったですけど、僕は結構偏っていてそっち寄りで、メンバーの気持ちを平均化すると“ちょっと変えたい”というニュアンスになるというか。でも音的に変えていくとなると、たとえ気持ちはそうだったとしても、実際の作業がなかなか進まなかったというか。それが、音源のリリースが遅くなったいちばんの理由ですね。自分たちも“長すぎたな”という自覚はあるんですが(笑)。

──変えていきたいのは、具体的にどういう部分だったんですか?

小林:全部ですけど、細かく言うとメロディというよりはサウンドアプローチですね。編曲の部分が大きい。サウンドの作り方のことで、例えばギターのフレーズというよりギターの鳴り方。どういうエフェクトをかけるかとか。ドラムだと、叩いているものは一緒だとしても、どういうふうに鳴らすか。楽器に関してのそういう部分ですね。サウンドアプローチの方法はいろいろあるじゃないですか。そこをいちばん変えていきたいなっていうのが根本にありました。

──なるほど。

小林:メンバーのみんなにも言ったんですけど、世の中にはいろんなジャンルがあって、それぞれのジャンルでいろんなアーティストがいて、一通り出切った感じがあるじゃないですか。メロディとかコードとかはほとんど出切っていて、アレンジでオリジナリティを出す割合が大きくなってきている。そういうことを僕自身すごく感じたことがあって、メンバーにも言っていて。

──そのゴールがなかなか見えなかった?

小林:そうですね。見えなかったというか、決められなくて。僕はいろんな音楽を聴くので、「最近はこういうのがあるよ」ってメンバーに提示して、バンドとして吸収しながら、“こういう音はこうやったら作れるな”という作業をずっとしていた感じですね。


▲小林雄剛(G)

──活動を再開した当時から、バンドのテーマに“新しい音源作り”というものがあって、その作業をずっと続けていたと。

小林:“話し合いは嫌になるくらいやったほうがいい”と思っていて。やっぱり話さないとお互い何を考えているかわからないというのがあって…話が前後しますけど、僕の場合はあまり自分の気持ちをしゃべらないタイプなので、活動休止前の悪い自分を直すという意味でも、活動再開後は自分からいろいろと言うようにしたんです。何もかも言う。だからたぶん、面倒くさいと思われていたと思うんです。

梨本:ははははは。

小林:でも言う。何もかも言う。

村松:わかりやすくデータ化して表にまとめて渡してくれるんです。

──すごい! 大人だ。

村松:雄剛がひとりで描いた画があって、楽器隊3人がいて、俺の歌が乗って、楽曲になる。その単純なバンドの化学反応だけを求めてたら、活動休止にはならなかったわけで。その後に活動を再開して、“楽曲をどうやって作ろうか?”という根本的なところから考えていたのは、すごく前向きなことだなって思った。

──なるほど。

村松:雄剛が表に何をまとめていたかというと、例えば“こういう音楽をやりたい”という目標があるとすると、今、俺たちはどういうものを持っていて、これからどういう音楽を聴いて、どういうものを吸収していくと、そのやりたい音楽に近づけるんだよっていうこと。それを割とわかりやすく説明してくれていたんです。

──へぇ、すごい。

村松:俺たちからすると全部同じように聴いている音楽なんだけど、どういう道順で聴いているかとか、雄剛の頭の中を解説してくれたんです。それが結局、今作のレコーディングでどういう音を録りたいとか、そういうところに影響してるもんね。

榊巻:うん。

村松:だから時間をかけた意味はあったと思います。

──活動休止前は雄剛さんの頭の中だけで完結していたものを、活動再開後はメンバーと共有するようになったんでしょうか?

榊巻:そうですね。それをわかりやすく。

小林:そこは自分なりの反省があって。今まで伝えきれていなかったなって思ったんです。

──そういう作業を続ける中で、今作が具体的に見えてきたのはいつ頃だったんですか?

梨本:去年の夏くらいですね。

小林:とはいえ、今作に収録している新曲は、活動休止前から存在していたデモが元になっているんです。そのアレンジの目処が立ったというのが去年の夏頃。



──6曲目の「アスピリ -Alternate Version-」は1stミニアルバム『ALL MY LIFE』(2009年2月発表)収録の「Aspili」のリアレンジバージョンで、2曲目の「紫陽花を描こう」と3曲目の「Silent Wheel」はライブでも聴いたことがあったんですが、その他の曲も昔からあったんですね。

小林:そうですね。バンドの楽曲で世に出ていないものだったので、まずはそれを形にしようということで。

村松:ぶっちゃけ、リズムパターンとかは昔スタジオでやっていたものからあまり変わってはいないんでしょ?

梨本:うん、大幅には変わってないかな。

小林:フレーズはあまり変えていなくて、サウンドアプローチを変えたというニュアンスですね。そこに関しては今の雰囲気を採り入れて、どういう空間作り方をするか?というところを重点的に詰めていったんです。

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