【ライブレポート】the GazettE、4年ぶりライブハウスツアー「俺たちは貫いてきた」
the GazettEは3月27日、東京・豊洲PITで<the GazettE LIVE TOUR2023 -MASS- / PHASE 03 "LAST MILE">のファイナル公演を行った。
◆<the GazettE LIVE TOUR2023 -MASS- / PHASE 03 "LAST MILE">ライブ画像
<PHASE 01>、<PHASE 02>を経て臨む『MASS』ツアー<PHASE 03>では、約4年ぶりのスタンディング形式によるライブハウスツアーとして全国5都市6公演が行われ、全公演がソールドアウト。ファイナル公演では、アルバム『MASS』の楽曲を中心に「Hyena」や「DISCHARGE」などのライブハウスで聴くにふさわしい、激しく盛り上がれる楽曲も含めた全21曲が披露された。
“ライブ” という生の空間にこだわり続け、不変を貫き通したライブバンドthe GazettEがここに戻ってきたわけである。熱狂と興奮に包まれた公演の模様をお届けしよう。
オーディエンスの高揚感で会場が覆われる中、『MASS』収録のSE「COUNT-10」が流れ舞台は暗転。スポットライトを浴びた5人が登場し、ライブは「BLINDING HOPE」で幕を開けた。1曲目から髪を振り乱して演奏し、全力で飛ばすthe GazettEのメンバー。オーディエンスも即座に反応し、会場は一瞬で熱気に包まれた。
しかし、RUKI(Vo)の煽りから2曲目へ移ると思われたところで、機材トラブルが発生しライブは中断。まさかの初っ端でのトラブルにメンバーもオーディエンスも思わず苦笑。RUKIが先ほどの煽りを誤魔化すように「えーっと……おっす(笑)」と挨拶するなど、場が和む。こんな予想外のシーンが見られるのも、“生のライブ”だからこそでもある。しかし、機材が復旧した瞬間、再びスイッチオン。
戒(Dr)の鮮やかなフィルインから始まったのはハードナンバーの「ROLLIN’」。気を引き締め直したRUKIは会場の全員に合図を送る。「さあ、暴れろ!」。これによりオーディエンスにも火が点き、歓喜の表情を浮かべながら掌を上へ上へと突き上げていた。麗(G)、葵(G)、REITA(B)、戒の演奏陣にも乱れはまったく無い。スラップやドラムロール、ギターソロを巧みに織り交ぜながら、楽曲に次々と彩りを与えていく。
21年間第一線のライブバンドとして活躍してきたthe GazettEの演奏は、この程度の機材トラブルでは動じないということだ。ここからは「GUSH」「HOLD」「裏切る舌」と盛り上がるしかない楽曲が続き、会場はどんどんヒートアップしていく。
ライブ中盤は「DRIPPING INSANITY」「THE PALE」など心地良いミディアムナンバーが続いた。中でも印象深かったのは「濁」と「MOMENT」だ。「濁」ではリズム隊の活躍が際立った。どっしりとしていて体の芯まで響くほど重い戒のキックに合わせ、REITAが一音一音しっかりと重低音を刻んでいく。2人の息のあったコンビネーションにより、この曲の魅力が最大限に引き出されている。
「MOMENT」はギター陣が主役だ。全編アコースティックギターのこの曲では、麗と葵の掛け合いが楽しめる。麗は以前、インタビューでこう語っていた。「“MOMENT”では、今まで葵が見せてきたアコースティックギターの音像とは異なるアプローチが見れる」。この言葉通り、2人のストロークのタッチ感の強弱など違いを聴き比べるのも面白い。誰もがじっとステージを見つめ、美しい演奏に聴き入っていた。
ライブ後半では再び会場が熱を帯びる。ライブハウスは足元が自由ということもあり、多彩に展開する「INCUBUS」で踊り狂い、激しいロックナンバー「DISCHARGE」では、これでもかとヘッドバンギング。声出しが制限されている状況下でも、オーディエンスは全力で暴れていた。そして負けじと頭を振る5人。本編最後の「LAST SONG」まで全速力で駆け抜け、一体感を高めていった様は圧巻だった。
RUKIによると、「ライブというその場でしか感じられない熱をいかに詰められるか」という思いを強く込めた曲がこの「LAST SONG」だという。「失った時間を取り戻したくて─」。まるでコロナ禍を思わせるような歌詞にもはっとさせられる。再びライブハウスでファンとこの時間を共有できることを、誰よりも喜んでいるのはRUKIでありメンバー全員なのだ。RUKIは言葉に力を込めるかのように歌い上げ、真っ直ぐに願いを伝えていた。
アンコールでも盛り上がりはやまない。「Hyena」はかなり久しぶりの選曲とあって、嬉しさのあまり飛び跳ねて喜ぶファンの姿も。演奏を聴きながら多感な時期を思い出し、何も分かってくれない大人たちの代わりにthe GazettEの楽曲が寄り添っていたことを懐かしむ。
「UGLY」「ABHOR GOD」と激しいナンバーが続くとオーディエンスは両手をこれでもかと伸ばし、ライブハウスでthe GazettEを聴ける喜びを全身で表現する。全員笑顔だった。RUKIも「これが俺たちのライブだ。やれるのか」と何度も呼びかけ、どこか楽しげにオーディエンスの発奮を促す。ここまで美しく伸びのある歌声とシャウト、デスボイスを使い分けてきたRUKIだが、最後までピッチが乱れることはなかった。ボーカリストとしての能力、そして意識の高さをまざまざと見せつけたのだった。
アンコールラストの曲は「TOMORROW NEVER DIES」。葵が麗のもとに駆け寄り、顔を見合わせながら演奏するシーンは微笑ましかった。「ヘドロ塗れのその足で此処に孤独を捨てに来ればいい─」RUKIはそう歌い、オーディエンスと孤独を分かち合おうとする。今まで当たり前のようだったライブをするということ。RUKIは「その当たり前が消えていったんだと思った」と一時は絶望しかけたという。しかし、こうして今、再び“此処”つまりライブハウスにようやく辿り着けたのだ。
曲の終盤でRUKIが「届いてるから!」と渾身の力を込め何度もファンに呼びかける姿には、熱いものが込み上げてきた。オーディエンスも声の代わりに精一杯の拍手で“ありがとう”の気持ちを伝えていた。
2時間超に及んだライブは、the GazettEからファンへの熱い想いが伝わる至福の空間だった。RUKIはMCで「ライブハウスのツアーもまだやれないだろうと思っていた。今日という日まで、みんなが待っててくれたから実現できた。俺は嬉しいし誇りに思う」とファンへの感謝を口にしていた。
コロナ禍でも配信ライブを行わず、オーディエンスの前で演奏することにこだわり続けてきたthe GazettE。「色んなやり方はあったと思う」とし、「でも俺らはこの生の空間にこだわった。この場所は絶対に変わることはないと思って貫いてきた」と、ライブバンドとしての覚悟を語ったメッセージは、多くの人の心に響いたであろう。
the GazettE は7月15日、アルバムツアーの集大成として日本武道館公演に臨む。最後にRUKIによる決意の言葉をここに紹介する。「ファンのみんなも含めてのthe GazettE。俺たちが貫けたのもカッコよかったし、貫くところを待っててくれたみんなのその貫き方もカッコよかった。まだ続くので全力でやりましょう」
取材・文◎東 純史(BARKS)
撮影◎Keiko Tanabe、Kyoka Uemizo
<the GazettE LIVE TOUR2022-2023 MASS "THE FINAL">
OPEN16:30 / START17:30
[問]DISK GARAGE 050-5533-0888 https://info.diskgarage.com/
※平日12:00〜15:00
[チケット情報]
全席指定 前売¥9,600(税込)
※未就学児入場不可、諸サービス手数料別
《FC.HERESY最速先行受付》
申し込み受付期間:3月27日(月)22:00〜4月17日(月)23:59
詳細:https://fc-heresy.com/ja/free/ticket/
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