【インタビュー】DEZERTの千秋が語る、2023年のヴィジョンと決意「命をかけよう。ここを失敗したら後がない」

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■俺たちは残るし、絶対に見届けたい
■大丈夫、うちのメンバーは優秀なので

──最近、そういう次の可能性とか期待感を覚えたライヴってありましたか?

千秋:まだないですね。でも、ライヴ前日には思うんです。初めてO-Westでやったとき、当時O-West公演は周囲のバンドにとっても登竜門で、すごいことだったんです。でも最初の2回は全然客席が埋まらなくて、“どうやったら500人集められるんやろう”って思ってた。それが3回目で、600人くらい集まったんです。当日の朝は、“今日で俺の人生がなにか変わるかもしらん”って思ったんです。Mr.Childrenの「終わりなき旅」じゃないですけど、“新しいドアをノックしてるんじゃないか”と思った。でも、ノックしても誰も返してくれなかったですね。「なんか虚しい」って、ずっと言ってて。当時一緒にやっていた人が、「わかった。3ヵ月後にO-Eastでやろう。キャパも倍になるし、これで千秋は変わるんじゃないか」って。で、いざO-Eastで扉をノックしても全然返してくれないんですよね。

──期待していたものが、そこになかった。

千秋:そこで、僕自身がノックするだけじゃなくて、鍵を開ける努力をすれば、バンドはもっと良くなってたかもしれないです。でも僕はずっとコンコンってノックしてるだけで。そういうなかで当時のギタリストが辞めたりもあって。もうノックするのもダルいなみたいな。…なんかわからんけど、“とりあえずZeppやろうや”ってやってみて、当日の朝、“今日こそ俺の人生はなにか変わるかもしらん”と。でも何も変わらない。


▲<DEZERT presents 【DEZERT ONEMAN LIVE TOUR 2016【楽しい食卓ツアー】FINAL】>2016年6月5日@Zepp Tokyo 撮影◎インテツ/Takuya Orita

──得たものはありますよね。

千秋:なにか変わるかもしれんっていう期待はまだあるっていう感じですね。わからないけど、「進むしかないよね」っていうことはメンバーとも話してます。

──今日のインタビューの最初のほうで、あまり勉強をしないでも大学に入ったりとトントン進んできたという話がありましたが、挫折することなくここまできていることも、どこか影響していそうですね。

千秋:バンドが大きな挫折ですよ。“10数年、何やってんねん”っていう。俺とSacchanは7年で武道館をやると決めていて、「それができひんかったらバンド辞める」って言ってたんです。

──辞めなかったのはなぜですか?

千秋:帰る場所がなかった(笑)。“戻る場所なくない?”みたいな。お金もないし、バンド辞めても社会不適合者だし。どうしたらいいんやろうってなるから、続けようやっていう。というのが、冒頭で言った「人生論」「これが人生だ」っていうところなんですよね。俺はどちらかというと、人生どう生きようというより、どう終わらせていこうというほうが強いので、逆算しちゃうんですよ。そう考えるとバンドって超ナンセンスなんです。ローリング・ストーンズみたいになれればいいですけど。そんなの何人いますか?っていうことで。

──特にバンドは短命なイメージもありますし。

千秋:そういう中では、バンドって嫌だったんだけど、俺たちは50歳、60歳、70歳になってもできる音楽をしていこうと…わからないですけどね。そのためには絶対に動員力は必要だし、周りのサポートも必要になってくる。「千秋くん、丸くなったね」って言われるけど、終わったら、尖ってるとか丸くなったとか言ってくれる人もおらんくなるから。

──それはそうですね。

千秋:と思いながら、まだなにを探してるのかもわからないけど。でも、期待はしてる。

──探究心は尽きない。

千秋:今年9月の渋谷公会堂ワンマンも期待しているんです。渋谷公会堂はコロナ禍の2020年に一回やっているんですけど、今回は今までと違って準備がある。ノックだけじゃなくて、10数年やっていると扉を開けるためのいろんな方法も得てるから。小細工と言われるかもしれないですけど、いろいろ駆使して開けてやろうって。


▲<DEZERT SPECIAL LIVE 2022 in 日比谷野外大音楽堂 “The Walkers”>2022年6月18@日比谷野外大音楽堂 撮影◎西槇太一

──2022年に行なった初の日比谷野音ワンマン<DEZERT SPECIAL LIVE 2022 in日比谷野外大音楽堂“ The Walkers”>も拝見しましたが、ライヴや観客への向き合い方への変化もありましたか? 曲でもMCでも、“それぞれのやり方や楽しみ方でいいから、一緒に進んでいこう”という肯定感がより強くなっていると感じました。それを先頭に立って、先導しているライヴになっているなと。

千秋:それは、願いですよ。俺たちと一緒に行こうというよりは、ライヴに来て、自己肯定感を上げてほしいんです。昨今チケット代が高騰しているなかで、来てくれているという感謝もあるし。6000円とか7000円とか払ってくれたら、自己肯定感爆上げして帰ってほしいですよ。

──なるほど(笑)。

千秋:俺も上がりたいしね。どうせ次の日からまた落ちるんですよ、そんなもん。ライヴに行った後、しばらく余韻というものを残したいという考えになったんじゃないですかね。自己肯定感が上がるライヴ、上がるバンドというか、そういう存在でありたいと思います。

──そのスイッチは、自分自身のメンタルにもいい影響がありそうです。

千秋:そうですね。良いか悪いかわからないですけど、そっちのほうが心が豊かなんじゃないですか、ギスギスしているよりも。

──逆に、ふと湧いてくるようなネガティヴなものや怒りや葛藤など、イガイガした心情は音楽に込めていくという気持ちもあるんですか?

千秋:でも、それを伝えたいならMCで言えばいいので、無理やり音楽に詰め込むことはないんです。音楽はエンターテインメントなので。正直、ダンスチューンでもいいんですよ。怒りを詰め込めばいいわけじゃないし。極論、僕はそこまで重く考えていなくて。いろんな背景…バンドのバックグラウンドで楽しんでくれればいいと思うんです。ノリも大切にしたいし。

──パーソナルな思い、自分の背景、ルーツ的なものっていうのは、今も曲作りに影響することってありますか?

千秋:今は、昔に影響を受けたものが入っているとは思わないですね、自然と入ってるっていうことはあるとは思うんですけど。ゴールデンボンバーの登場で、間違いなく時代が変わったんですよ。でも、俺たちは気づかないふりをしていた。全部焼け野原になったのに、まだ不毛な土にタネを植えて、なんか咲かへんかなと思っている。俺たちの頃はまだいい畑とか土壌があったんですよ。それをどうにかせなあかんなってSORAくん自身も考えたのが、2022年末の武道館イベント<V系って知ってる?>へのきっかけだったと思うんですよ。俺はあんなダサいタイトルはいやだと思ってたけど、SORAくんは「いや、わかりやすいのがいいんだ」と。

──当日の千秋さんのMCからは、V系の復興というよりも新しきを築くという想いが強いのかなと。

千秋:土は死んでるんです。でもどうしようかという方法論は、バンドとは別に考えていますね。SORAくんとかはより考えていると思う。

──DEZERTとして、シーンをどうしていくかも考えている?

千秋:まずはいろんな人に知ってもらってなんぼなので。それを俺たちだけが背負うのは無理だって思いながら(笑)。2019年くらいには、この村を出ることを考えて、試しに一回ちょっと出たんです。だけど、他の村もそれはそれで大変ということに気づいて、すぐ戻ってきました。それでもみんな温かく迎えてくれて、だからこの村をどうにかしようかなって。

──そうだったんですね。

千秋:うちらはすごくいい環境だったんだなって思ったんです。ヴィジュアル系と名乗るだけである程度お客さんがついたし。その村へのアクセスがよかったんでしょうね。昔は、うちの村に来た人は、なかなか他の村に行くことがなかったということもあったし。でも、今はジャニーズにもメンズアイドルにも行くし、K-POPも好きだっていうし。いろんなものが好きななかのひとつなので。これは、どうしようかなというところです。

──逆に考えれば、ジャンルに特化せずにいろんな人が聴いてくれている。チャンスが広がっているということでもありますか?

千秋:そうですね。2022年末のイベント用の対談で、MUCCの逹瑯さんとも「今はチャンスなんだよね」と話していたんです。ただ、「今、ヴィジュアル系がチャンスだ」って思うセンスのあるやつって、ヴィジュアル系をやらないんですよ。そんな遠回りしない。そういうジレンマはありますけどね(笑)。でも、自分は学生時代にこの村にかなり救われて、まだ恩返しができてない…恩返しというと上から目線過ぎますけど、どう変わっていくかには携わりたい。そこがなくなろうが、俺たちは残るし、絶対に見届けたいと思っています。

──その言葉が聞けてよかったです。

千秋:大丈夫ですよ、そこは。優秀なのでね、うちのメンバーは。

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