【インタビュー】DEZERTの千秋が語る、2023年のヴィジョンと決意「命をかけよう。ここを失敗したら後がない」

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■不完全だから、伸びしろがある
■何かを信じていたわけじゃない

──“曲を作りたい”というのは、具体的に“自分はこういうのがやりたい”っていうものがあったんですか?

千秋:それもたぶん人と比べていましたね。ずっと周りのバンドの曲が良くないと思っていたんです。当時、俺の好きなバンド…たとえばthe GazettEだったりDIR EN GREYだったりって、曲が良かったので。“なんでみんな、曲が良くないんやろう。自分も作れるんちゃうかな”って思ってたところから始まりましたね。曲が降って湧いてきたわけではなくて、もっと良い曲を作れそうやんっていう感じだったんだと思います。

──やっぱり反骨心と探究心が始まりで、そこから作ることにのめり込んでいくんですね。

千秋:もともとSacchanが曲を作れたんですよ。シンセとかピアノとかも入ったような曲で、アレンジ力がすごくて。でも曲が良くないなと思ってて(笑)。“じゃあ、俺が作った曲をSacchanに「アレンジして」って投げればよくね?”みたいな。最初はそういうふうに作ってました。僕はずっと言ってるんですけど、メロディセンスについては、劇的に良くなることってないと思ってるんです。アレンジは技術が向上していくことがあると思うんですけど、例えば“このバンドの初期のメロディは良くないけど、中期から死ぬほど良くなった”みたいなことってないじゃないですか。メロディを作るというのは、才能だなって思うので。だから後輩の若手バンドの曲もまずメロディを聴いて、良くないなって思ったら、このバンドはダメやなって勝手に思うんです。

──それくらいメロディを重視しているということですね。

千秋:日本的な考え方ですけどね。俺は、ビートではなくてメロディなんです。だから最近のK-POPとかも曲はあまり好きではなくて。“めっちゃ上がっていって、結果サビないんかい!?”って思う。僕はAメロ、Bメロ、サビ、Cメロ、なんならC2メロもほしいくらいに、その当時のJ-POPを聴いて育ってきたから。メロディは大事だと思いますね。


──それがすごく生かされてるかというと、DEZERT初期の頃ってそういうのともまた違いますよね。

千秋:そうですね、とりあえずサビのメロディだけちゃんとあるんだけど、他の部分は客をつけるためだけだったので。どうやったら客がつくだろうということだけを考えて曲を作ってました、特に最初の頃は。今でも、Mr.Childrenみたいに弾き語っても全部が良いメロディの曲がいいなと思うんです。だけど、俺がそれを歌ったところで…というか、誰がやるかだと思うんですよ。そこの葛藤はありますね。DEZERTは、ただ良いメロディを、良いアレンジで、良い声でというバンドではないと思うので。曲でなにかインパクトを残そうというより、ライヴでどうインパクトを起こそうかということをメンバーとも考えてました。

──当時の曲って、どうやって生まれていたんですか?

千秋:適当ですよ(笑)。“これが俺の作った音楽だ”ってわけじゃないので。それを探してる…今も俺の音楽ってなんだろうなって思いながら、やってるのが楽しいんじゃないですかね。

──最初の頃って頭の中にあるものをコラージュするような感じだったと思うんです。

千秋:そうですね。

──それがだんだん洗練されていくわけじゃないですか、特に2018年くらいからは、曲としての強さやタフさがより全面に出てきていると思うんです。

千秋:2018年あたりからは、曲よりも言葉をフィーチャーし始めましたね。これから俺の歌が劇的にうまくなって世界的シンガーになるかといったら、ならないので。“何がしたいんやろう?”って考えたときに、“伝えたいことがあるなら伝えやすいように整理したほうがいい”っていう。……こういうところを上手くできれば、“昔は”とか“今は”とか言われないところにいけたんですけどね。不器用なので、一回そこに全振りしてみようってなっちゃったんですよ。

──途中経過がないんですね。

千秋:ははは。それこそギターのMiyakoくんとかに文句を言い始めたり、「そんなんじゃ、歌がわからへんやろ!」って。そんなこと、全振りした次の日から急に言われても対応できないですよね。Sacchanは頑張って対応しようとしてたし、SORAくんは当時、かなりストレスだったと思いますね。SORAくんは「メタルだー!」っていう感じだったので、「急に聴かせる系の曲?」みたいな(笑)。


──まだ、みんなの頭の中で共有できてない段階で、突っ走ってしまったと。メンバーはもちろん、お客さんやリスナーがその変化をどう感じてどう受け止めるか、そういう葛藤もありましたか?

千秋:メンバーは腹括ってた気がしますけど、僕自身にはめっちゃあったと思います。今、持ってるものを手放したくないじゃないですか。できれば、全部の荷物背負ったまま行きたいけど、人間ってキャパシティに限界があるし、重いと進めなくなるじゃないですか。なにかを得るにはなにかを捨てなきゃいけない。でも捨てきれない。という葛藤が数年間あったと思います。全部持って行きたいけど、過去の曲をセトリに入れるとつなぎが悪くなったりとか。よくわからなくなって、すごく雑になる…というのはありましたね。きつかったな。

──そこでメンバーが腹を括っていたのは、千秋さんの行動やヴィジョンを信じてのことですよね。

千秋:4人でよく話し合っていたからじゃないですかね。毎年、「DEZERTは伸びしろがあるよね」って話してるんです。「ここをもっとこうしたらよくなる」という話が尽きたことがない。ある意味、不完全だから。例えば、動員が落ちたとしても、落ちた理由を分析してみんなで納得するんです。「じゃあ、それを改善すればよくない?」ってなっていたので、気づいたら続いていたという感じ。何かを信じていたわけじゃないと思うんです。

──そこで個々の意見が決裂して、バンドがダメになってしまうパターンも多いし、千秋さん自身もたくさんそういうバンドを見てきたと思います。バンドを機能させていくのは、簡単ではないですよね。

千秋:そこはメンバーの優秀さじゃないですか。最初は、Sacchanも2曲くらいオリジナル曲を出してたんですよ。いろんなところで言ってますけど、「このバンドは僕が全部の曲を作るというスタンスじゃない。作らせていただいてる」と。Sacchanが言うには、「俺らがいい曲を作ったって仕方ないやん」と。「だったら、このバンドは千秋くんが全部の曲と歌詞を作るバンドにしようよ」ということから、今のスタイルになったんですね。で、Miyakoくんが加入して。Miyakoくんもいい曲を作るんですよ。センスある。でも「このバンドは千秋くんが作る」と。わりと初めの頃に役割分担として、「このバンドではそうなんだ」「その方向でいこう」とメンバーが決めてくれて。そういう互いのリスペクトがあるんじゃないですかね。

──曲を作る上では、3人から何かしらアイデアをもらうこともあるんですか。

千秋:もらいますけど、参考にならないです(笑)。よくわからん海外アーティストの曲を持ってこられてもというか。SORAくんは新しいものへのアンテナがすごくて、まだ日本で流行ってない海外の音楽とかもよく知ってて。「これをDEZERTでも取り入れたらいいと思うんだけど」って言うんです。俺は、“それはようわからんな”と思いながら、一応聴いたりはしますけど。

──新しさを取り入れるだけじゃなくて、“自分たちはこれだ”という、まだ未完成の形を求めていく作業という感じですかね。

千秋:すべてにおいて、知らないものを知りたいという気持ちは強いと思います。曲だって、いいものを作ったところで届かなかったら意味がないわけじゃないですか。ライヴもどうしてデカいキャパのところでやりたいのかっていうと、別に賞賛がほしいわけじゃないと思うんです。最初の頃は誰もがそう思うかもしれないですけどね。ある程度の年数を超えて、さいたまスーパーアリーナでやるようなアーティストが、次に東京ドームでやるとなったときに、“とうとう東京ドームか。これでまた名声上がるぜ”って思うような人は、そこには行けないと思うんです。

──なるほど。

千秋:それこそさっき話した“伸びしろ”につながるんですけど、伸びたらもっと良くなるかもしれないっていうか。いろいろな経験を経て、例えばELLEGARDENみたいに絶対にチケットが取れないような狭いハコであえてツアーをやることも、正しいと思うんです。でも俺たちは武道館も知りたいし、横浜アリーナも知りたい。行ってみないとなにがあるかわからない。そこに行ったときに、なにか納得できないことを変えられる力を持つんじゃないかって。そういう期待を僕は“伸びしろ”と呼んでいるんです。それを形にしていこうじゃないかと。

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