【インタビュー】ASKA、デイヴィッド・フォスターと共演「あの人の音楽に出会わなかったら自分の音楽はここまで長続きしてない」

■ ライブ空間では、味わったことのない解放感を疑似体験できる

── そして、デイヴィッドの後に控えている全国ツアーについても聞かせて下さい。こちらはASKAバンド編成でのツアーになるのですよね？

ASKA：今回はゴリゴリのバンドスタイル。ビルボードクラシックスストリングスがいないから、寂しくてしょうがない。

── 寂しいんですか？　ASKAさん。

ASKA：寂しい。前回、前々回は後ろに女神が並んでるようなストリングスチームとのライブだったからね。本当に美しかった。で、なんでこんなに美しいんだろうと思ったら、それは全員の弓のシンクロの美しさだった。でも今回はそれがないから開き直って、そこの美しさは求めないでゴリゴリでいく。あの美しさに勝つためには、真逆に振り切っていくしかない。ゴリゴリのバンドサウンドでいきますよ。

── 今回はアジアツアーも予定されているそうですね。

ASKA：やります。現実問題としてマネーの格差がこれだけついて、世界はいつ何が起こるか分からない状況が続いてる。大恐慌がくるかもしれないからね。そういう情勢のなかでのアジアツアーなんですが、前向きには動いてます。

── 日本でやるのとアジアでやるのでは、刺激は違うのですか？

ASKA：僕は向こうに行くと言葉が違うから外国人ですよ。それを向こうの人が迎えてくれる状況はやっぱり嬉しいですね。歌も日本語で歌ってくれるんだから。

── しかも、日本語で信じられないぐらいの大合唱が巻き起こりますからね。

ASKA：若い頃に憶えた英語の歌って、いまでも憶えてるでしょ？

── 憶えてます!!

ASKA：それと同じで、若い頃に憶えた日本語の歌を向こうの人はいまも憶えてくれてる。だから、アジアはそれに合わせた選曲もしていくんだけど。だから、3本ライブがある訳よ。

── デイヴィッド、国内ツアー、アジアと。

ASKA：そう。だから、すごい今大変。そこは見落としてたね。でもやります。

── ASKAさんはライブは好きですか？

ASKA：うん、なんで？　歌うの好きだよ。

── ライブと曲を作るのとどっちが好きなのかなと思いまして。

ASKA：曲は、作り始めと、7割8割出来上がったところからが面白い。作り始めは「こんな感じでやろう」って考えてると楽しいでしょ。で、そこから制作していく過程は一番重要で悩むところなんだけど。7割8割までいったらもうゴールは見えてる訳だから、楽しいよ。歌詞は1行目を書くまでの距離は長くて時間がかかったりするけど、そこができたらいろんなことが決まっていく。ライブの一番の醍醐味は、自由による解放感が発するお互いの幸福感だね。幸せってなんだろうなって考えると、人間の究極の幸せって“解放”なんだよね。どんなにちっちゃなことでも、どんなにちっちゃな場所でも、僕たちはルールに縛られながら、そのギリギリのとこで精一杯楽しもうとしてるんだけど、そのルールから外れてしまうことが最大の幸せだと思う。ルールのなかで感じる幸せもあるけど、それがなにもかもなくなったときに感じる解放感って、誰も僕らは味わったことがない訳よ。生まれてから、必ずルールの中で生きてきてるから。でもライブ空間ってね、その味わったことのない解放感を疑似体験できるの。

── どういうことですか？

ASKA：ライブのなかで、ある曲がきた瞬間にドカーンと会場が弾けるときがあるでしょ？　あれって、自分から何もかも忘れて破ってるんだよね。あの瞬間に感じる幸福こそ、ルールのない解放感の疑似体験だと思う。ある瞬間にさ、一斉に会場が約束事のようにドカーンと揺れだすでしょ？　あれは、見えない気の充満によって、それまで張り詰めてたものが弾けてポンと破けるの。それをみんなが一斉にやるから、ああいう現象が起こるんだと思う。

── つまり、あの瞬間はみんなが一斉に。

ASKA：自分を破ってるんですよ。人間って人として生まれた以上、生まれてから死ぬまで、必ずルールというもののなかで生きてるんだけど。でも、あのライブ空間においては、もうこの瞬間ルールはないよという現象が起こる。それがライブの醍醐味ですよ。

── ASKAさんもその現象が起こった瞬間はステージ上で幸福感に包まれている訳ですか？

ASKA：だってそこをサビとしてライブを組み立てて作るんだから。サビでお客さんが弾けてくれた瞬間、お客さんが僕の敷いたレールに乗ってくれた瞬間。そこからクライマックスに向かって行くわけしょう？一斉にお客さんが自分のフィールドに入ってくるんだから。あとは、クライマックスに向かって運ぶだけ。僕は前から言ってるように、来てくれたお客さんを最後までナビゲートするのが自分の役目だと思ってるから。そうするためにはどういう選曲でどういう曲順にしなきゃいけないか。そこを毎回悩む。ライブはそこが一番大事ですね。

── いまデイヴィッド、国内ツアー、アジアツアーのそこを悩んでいる最中ということですね。

ASKA：この記事が出る頃には、もっと悩んでます（笑）。でも、すごい人ですね。デイヴィッドと共演というだけで、今日、一日取材が入ったわけですから（笑）

取材・文◎東條祥恵

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