【機材インタビュー】SUGIZO、ギター遍歴に顕在化する理想「自然に徐々に変化。でも10年前と見比べるとまったく違う」
■最近はもうギターも投げない
■だってこの子達はもう僕の分身ですもん
──ここ近年は、ほとんどの使用ギターでヘッドにミュートクリップがついていますが、あれはどういうものですか?
SUGIZO:もともと僕は無駄な共振が好きじゃなくて、特にレコーディングの時はティッシュやウレタンスポンジを挟んだり、ドラフティングテープをつけたりしていたんです。ライヴでもそうしていたんですけど、せっかくなら何かもっとルックスのいいものということで、近しいシルバージュエリーブランドが提案してくれたんです。ただのミュートですけど、もうちょっとカッコよくしない?って。ルックスだけですから、ウレタンでも同じですけどね(笑)。
▲SGZ×IVXLCDM®×ESP Collabotration Item「MUTECLIP」
──ナット~ペグ間の共振で、ノイズ/雑味が出る?
SUGIZO:うん。欲しくない倍音が出る。そこだけじゃなくて、ストラトで言うとバックのトレモロスプリングもそうです。そこもライヴによってはウレタンをはめたりしますし、レコーディングではそこにガムテープを貼るだけで、ずいぶん無駄な響きが緩和されます。
──あのスプリングの共振こそストラトらしさ、とも言えますが。
SUGIZO:言えますね。だからどっちもどっちなんですよ。ハードテイルのストラトが良いと言う人もいれば、ストラトらしくないと言う人もいて、それはあくまでもサウンドありき、曲ありきの話ですよね。僕からすると、ハードテイルのストラトはストラトとテレキャスの中間だよね。ストラトのような伸びやかさやヌケはちょっと落ちるけど、テレキャスほどは締まらない。テレキャスとストラトのボディシェイプの違いもすごくあるし、ストラトらしさとテレキャスらしさの間っていう意味で、ちゃんと存在感があるし必要だと思うんですよね。
▲Navigator N-ST SGZ Custom -EDEN-
──なるほど。
SUGIZO:ストラトも、曲によってフローティングする曲とベタ付けの曲があるんです。LUNA SEAでもソロでもそうですけど、X JAPANのほうが顕著かな。要はブリッジミュートでの刻みがメインの曲は、フローティングするとチューニングが不安定になるでしょ? だから楽曲に対してはベタ付けのほうが絶対に効率がいいんですよね。その代わり欲しいアーミングニュアンスが得られない。逆にフローティングにすると僕のスタイルはすごくやりやすいけど、ミュートしたバッキングにはちょっと不安定。だから曲によって分けてますね。曲によってはTUNE-O-MATIC仕様のギターで作られている楽曲もあるので、その場合はアームユニットのないエクリプス(ESP ECLIPSE)を使います。
──曲によって頻繁にギターを変えるのには、ちゃんと理由があるんですね。
SUGIZO:変則チューニングの曲も何曲かあったりしますからね。ライヴを1本のギターで最後まで通すというタイプ…たとえばジェフ・ベックやCharさんが顕著ですけど、音楽をギターに合わせる。もしくはどんな曲でもギター1本でなんとかやりきっちゃおうみたいなね。僕の場合は、曲が必要とするサウンドによってギターを変えたいので、たぶんタイプが近いのはキース(・リチャーズ)ですよね。キースはいつもギターを変えますよね。あれはやっぱり楽曲に対してベストなサウンドを表現したいからに他ならないと僕は思います。
──今ソロで使用しているギターは、同アセンブリ&コントロール、ミュートクリップ、22フレットという仕様に統一されていますね。
SUGIZO:そう、僕のストラト(N-ST SGZ)は全部22フレット。
──フェンダーのストラトも22フレットですね。
SUGIZO:それは改造しました。P-90にしちゃってフレットをひとつ足した感じですね。
▲Fender STRATOCASTER 1969 -Apollo-
──カスタムショップのマークもマスタービルダーのシグネチュアもないし、どう見ても1969年製にみえるけど、22フレットだしピックアップも同仕様になっているので、謎なフェンダーだなと思っていたんです。
SUGIZO:これはもうレコーディングでもライヴでも現場でバンバン使っちゃおうと思って、今の自分の仕様にしました。
──え? 本物の1969年製ストラトをザグっちゃったんですか?
SUGIZO:ザグッてます。このストラトは僕と同じ生まれ年のストラトで、アポロっていう名前なんですけど、完全に実戦用に改造しています。大事なストラトは1957年と菊丸(土屋昌巳より受け継いだ1961/1964年製)とかあって、それは改造せずに保存しているんですけど、僕の中ではヴィンテージは1965年まで(笑)。1969年は自分にとってはヴィンテージじゃないんで。
──なんてことを。
SUGIZO:いやいや、だからもう一度言いますけど、1969年は僕にとってはヴィンテージじゃないんです。1969年製のレスポールもいろいろ改造してますよ。だから僕はまだ歳じゃない(笑)。LUNA SEAでもソロでも、現場ですごく使ってますね。
──同じスペックをしていますけど、各ギターにはそれぞれに個性がありますよね。
SUGIZO:どれも違う。だからまだESPが足らないんですよ。もう1本作ってくれって今お願いしているんですけど、そうすればフェンダーを駆り出さずに全てESPでいける。僕は絶対にスペアを用意するので、チューニングとかサウンドを考えると本数が必要なんですよね。スペアは95%必要じゃないんですけど、残りの5%で無かったときに死ぬので。
──これから登場する新ギターも楽しみです。
SUGIZO:最近はもうギターも投げないです。もう10年以上投げてない。もう投げません、壊しません。人って大事なものでも頭にきたらぶん投げたりしちゃうからさ、若いときは自分の感情をコントロールできなくて、どんな状況でも頭にきちゃったんだよね。でも今は絶対にしないですよ。だってこの子達はもう僕の分身ですもん。
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