【インタビュー】SUGIZO、ソロ25周年を語る「最も重要なことは大切な仲間たちとの出会いと別れ」

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■もう一度25年前のミックの音と対峙する
■それが本当に感慨深かった

──「MESSIAH」以降、ソロとバンドを掛け持つ時期に突入しましたね。

SUGIZO:LUNA SEAとX JAPANというふたつのプロジェクトは当時の自分にとってすごく重要で、強力なロックバンドがふたつあるわけですよ。RYUICHIとToshlという日本屈指のシンガーが横にいるわけ。なのでもう、ソロでロックバンドを演る理由がなくなったし、自分で歌う必要もなかった。超絶なシンガーが横にいて、自分が歌って何になるんだっていう(笑)。で、自分が一番得意なこと、一番できること、一番本当にやりたいことにフォーカスしたんです。ある意味吹っ切れたんですよね。それが「MESSIAH」。それ以降の楽曲はすべてそっちの方向に自然と移行していきました。

──焦点が定まった。

SUGIZO:DISC1の頭の曲が、まだ自分で一生懸命歌って伝えようとしていた時期。環境もめまぐるしく変化していった時期。この時には「シングルはポップミュージックで」という暗黙の決まり事があって、エンターテインメントの中でちゃんと枚数を稼いでヒットさせなきゃいけないという、音楽とは別のビジネス的な様々な理由があって、いわゆるポップミュージックの体に一生懸命に合わせにいこうと努力していた時期ですね。悪く言うと無理して頑張っていたし、良く言うとそれによって化学反応が生まれたかもしれない。アーティストとしての純粋な部分と、周りを見ながらうまく状況に兼ね合わせて音楽を作っていかなきゃいけない職人的部分と、そのふたつが混在していた。DISC 1の頭6曲はそんな作品。

──歴史を感じます。

SUGIZO:今となっては一生懸命やってるっていうのが愛おしいですね。でも今聴くと、すごく中途半端で残念な感じ(笑)。だから僕の中では、「MESSIAH」以降が自分の音楽だってはっきり言いますね。それまでは、暗中模索している若者。


──卑下することなく、冷静に過去の自分を評価・分析できること自体、素敵なことと思います。

SUGIZO:僕は自分に厳しいですよ。だからインタビューのたびに言ってますけど「6曲目まではぜひ耳を塞いで聴いてください」「7曲目から爆音で聴いてください」って。それが僕の望み(笑)。

──本当にそれが望みだったら、収録しなければいいのだけれど(笑)。

SUGIZO:ずっと避けてきたんですよ。ライブのアルバムも出しているけど、そもそもライブで演っていないし、10周年と20周年記念のときに作ったベストアルバムでも、いわゆるシングルとかヒットした作品集ではなく、その時点での自分の中でのベストだと思う音楽を集めたものだったので、最初のベストアルバムにはシングル曲は1曲も入っていなかった。

──SUGIZOらしい話ですね。

SUGIZO:自分の作品として自分の音楽として…それがすべてなので、ビジネスや時代などは関係なかったんですけど、この25周年ではシングルベストを初めて作ろうかってなったんです。当然、イヤだな、恥ずかしいな、稚拙だなとか思うんですけど、ラッキーなことに全ての過去作品のマルチのデータが見つかったんですよ。それで「ミックスがやり直せる、だったらやろう」と思ったの。もちろん演奏とか歌は録り直せないよね。リレコーディングするつもりはなかったから演奏や歌は当時のままだけど、改めてミックスをすることによって、音響的な意味で今の自分の耳で良しと思うものが作れれば、それは納得できるかもと思って。なので合計7曲を今回のためにミックスをし直して、ある程度納得できる音像ができたんです。

──それは楽しい作業でした?

SUGIZO:うーん…どちらかといえば自分に対する戒めでしたね(苦笑)。そして楽しいっていうよりは、感慨深かった。20代の頃、こんなに頑張ってたんだ…とか。

──思い出されたこともありましたか?

SUGIZO:死ぬほどありましたよ。過去を掘り下げる作業をしていて、自分の中で今回のベストアルバムの最も重要なことは、“大切な仲間たちとの出会いと別れ”なんだということ。大切な仲間たちの死別…それが一番大きかったな。何回も涙が出ちゃいました。たとえば「LUCIFER」。これはミック・カーンなんですよね。ミックとはじめてセッションして意気投合して家族ぐるみになって。彼の晩年までね。子供の時に憧れていた人ですよ? ミックとのセッションで成長したことはたくさんあるはずだし、学んだこともあまりにも多いし、何よりも大切な友人だったので、もう一度25年前のミックの音と対峙するということが、本当に感慨深かった。

──なるほど。

SUGIZO:3曲目の「Rest in peace and fly Away」を歌ってるbiceも10年前に亡くなってしまった。この曲のデータをずっと探していたんですよね。いつかbiceの声を救出して、もう一度セッションしたいと思ってたから。今回遂にそれが20年ぶりぐらいに見つかって、トラックを聴いたときに涙が出てしまいました。20年ぶりに再会したような気になった。そしてもう一曲ミックスした曲がDISC2の「ENOLA GAY」で、2009年の曲なんですけど、これは単純にミックスが気に入らなかったので、もう一度やりたかったんです。この曲は一緒に作ったのがOrigaです。Origaも2015年に亡くなってしまった。Origaは2008年から2014年まで僕のソロに参加してくれて、僕の音楽での重要な声を担ってくれた。彼女がいなくなったことが本当に悲しい…そして今回はOrigaとの再会でもあった。




──ミックスし直し、新たな作品が出来上がったことが、レクイエムになるのでしょうね。

SUGIZO:それはすごくあります。ミックスはしていませんけど、近藤(等則)さんと一緒にやった「Pray for mother earth」もそうですし、「Life On Mars?」はデヴィッド・ボウイを追悼したくて演ったもの。DISC3の「Lux Aeterna」「Raummusik」、このあたりは実はとても尊敬していた冨田勲さんにとてもインスパイアされて作ったものです。冨田さんは晩年に一回だけお会いすることがあって「近い将来一緒に音楽やろうか」って言ってくれてた矢先に亡くなってしまった。本当に切ない…。人が亡くなっていくのはしょうがないから、悲しいというよりは、寂しくて感慨深い。


──一方でDISC3は、タイアップも含めて若いシンガーとの作品がたくさん収録されていますね。

SUGIZO:たとえばBiSHのアイナ(・ジ・エンド)ちゃん。彼女は新しいエネルギーですよね。新しい世代、新しい表現、新しいエネルギーと一緒にやることになって、いい意味ですごくインスパイアされた。まさに、世代を越えて出会いと別れ。結果的に感慨深いものがあったなって思います。

──そう思うと、この25年には重みがありますね。

SUGIZO:本当に波乱万丈でしたね。バンドもひっちゃかめっちゃかになったり再生したり、めちゃくちゃ険悪な時期もあったし、家族のような時期もあった。今はとても仲良いんですけどね。LUNA SEAがあってX JAPANもあって、今となってはソロもJUNO REACTORも、そしてTHE LAST ROCKSTARSもあって、なんだかもうわかんないですよ、カオスで。

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