【インタビュー】Bialystocksの世界観

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映画監督でもあるボーカルの甫木元空と、キーボードの菊池剛からなるBialystocks。

青山真治プロデュースのもと甫木元が監督した映画『はるねこ』の生演奏上映をきっかけに結成して以降、フォーキーで温もりのある歌声と、ジャズをベースにジャンルを横断する楽曲で高い評価を得てきた。11月25日に公開される甫木元の新作映画『はだかのゆめ』では、主題歌・劇伴も担当している。

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そんなBialystocksが10月5日に「日々の手触り」をリリース。10月2日に行われた初のワンマンライブ、<Bialystocks 第一回単独公演 於:大手町三井ホール>では、11月30日にメジャーデビューアルバムがリリースされることと、東名阪を回るライブハウスツアー<Bialystocks Tour 2023>が開催されることも発表された。

今回のインタビューではその新曲「日々の手触り」と11月に公開を控える映画『はだかのゆめ』を中心に、彼らのルーツや世界観、初のワンマンライブについて話を聞いた。

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■テンプレになるものは二人とも避けたいと思っています

──BARKSでは初のインタビューなので、まずはお二人の背景をお聞きしたいです。菊池さんは、19歳でニューヨークに留学してからジャズに傾倒したとのことですが、それ以前はどんな音楽を聴いていましたか?

菊池:ピアノ自体は5歳ぐらいから習ってますが、最初、聴くこと自体はあんまり好きじゃなくて。高校生ぐらいから流行りの洋楽だったり、知り合いに教えてもらってミューズとかも聴くようになりました。

──留学した2012年当時は、ロバート・グラスパーの活躍が印象深いですけど、意識的に聴いていたのは誰でしたか?

菊池:ブラッド・メルドーとかですね。ニューヨークにいたときは、グラスパーっぽい演奏してる人を自分はあまり見かけなくて、もっとストレートアヘッドなジャズのライブがほとんどでした。逆に、日本に帰ってきてから、ロバート・グラスパーの影響力を知りました。

──甫木元さんは映画監督でもありますが、菊池さんもミュージカル映画がお好きですよね。別のインタビューによれば『プロデューサーズ』を1000回ほど見たとか。

菊池:ものによっては好きですね。テンプレみたいな演出のものはちょっと苦手なんですが。

──甫木元さんのお母さんはピアノの先生で、お父さんがミュージカルの演出家だそうですが、他にポップスなども聴いていたのでしょうか。

甫木元:母親が青春時代に聴いていたユーミンとかですね。高知県のおじいちゃんの家まで、毎年8時間くらいかけて車で行くんですよ。そこで聴くポップスが印象に残っています。ユーミンは多摩美(多摩美術大学)出身ですが、母は同じ沿線上の音大で演劇もやっていました。他にも(多摩美出身の)竹中直人さんだったり、音楽に限らず、当時近いところにあったカルチャーへの憧れが、母にはあったと思います。


──甫木元さんも多摩美出身ですよね。大学に入ってから意識的に聴いたものはありますか?

甫木元:大学に青山真治監督が来るらしいと知って、初めて青山さんの映画を見始めました(笑)。それで映画のタイトルになった曲を教えてもらって、ジム・オルークとかを聴くようになった。そこから枝葉のようにジム・オルークが影響を受けたり、プロデュースしている人を聴くようになって。彼が参加していたソニック・ユースとか、細野晴臣さんから影響を受けているとか。大学に入って、やっとそういう風に聴き始めました。

──映画を撮り始めたのはやはり青山真治監督の影響ですか?

甫木元:そうですね。青山監督の現場を実際見れて、その現場だったり手作り感が面白かったので、やってみたいと思いました。

──Bialystocksの結成は、甫木元さんが監督した『はるねこ』の演奏付き上映がきっかけになったとか。

甫木元:上映後に、映画の劇中歌を再現するライブをやったんです。

──そこで出会った?

甫木元:友達の友達みたいな感じです。違うバンドがあって、たまたま別の人を介して知り合いました。その後、お互いに曲を作って出し合ったりとかはしていたんです。それで、ライブ上映をするときにあらためて声をかけました。

──作曲の話が出ましたが、普段の曲作りのプロセスをお聞きしたいです。

甫木元:弾き語りぐらいの楽曲をクラウド上に上げて、単純にメロディーが引っかかるものを二人でピックアップする。菊池が編曲の方向性を決めてくれて、ちょっと足りないなと思ったらまたクラウド上で詰めたり、付け足したり。パズルじゃないですけど、そういう進め方で曲を作っています。


──Bialystocksの楽曲には「All Too Soon」や「灯台」などのビートの強いもの、ループ性の強いものにネオソウルとか現代ジャズっぽさを感じますが、展開も含めて、そういったジャンルに分けられない独自の魅力があると思います。作曲する上でなにか意識していることはありますか?

甫木元:テンプレになるものは二人とも避けたいと思っています。だから、ちょっと変な要素を付け加えるというか。

菊池:たとえばネオソウルっぽいものを作ろうとしても、結局ボーカルが甫木元なのでできない(笑)。必ずなにか日本っぽいノリが入ってくるので、自動的に、純粋なアメリカの音にはならないと思います。

──新曲「日々の手触り」については?

甫木元:これはけっこう前からあった曲で、前回のアルバムにも入れるか迷いましたが、今じゃないなと。ムッシュかまやつさんが亡くなったあとに映像を見て、存在として不思議な立ち位置の方だったと思って。晩年、一つの願いをストレートに言う曲を恥ずかしげもなくさらっと歌えるおじいちゃんに自分もなりたいなと。曲を意識したつもりはないんですけど、そういう曲をたまには作ってみようと朧げに思っていました。

菊池:さっき言ったことと矛盾しますが、最近はシンプルでもいいなと(笑)。今回はそんなに変にはせず、甫木元が普通に弾き語りする、その延長みたいなサウンドにしようと思いました。

──なるほど。ですが、後半にシンセの音がどんどん大きくなって壮大になったり、現代的というか、普通のフォークソングとは違う印象も受けました。

菊池:そう言われればそうかもしれないです。でも、あのシンセも奇をてらったわけではなく。ボリュームは異常にでかくなりましたけど(笑)。ライブでPAをしてくれている岡直人さんに、「甫木元の声って抜けがいいけど、大きい音でそれが埋もれるのもいいよね」って言われて。歌だけでもいい感じの音楽に聞こえるんだろうけど、聞こえにくくなるぐらいシンセがぐわっとくる展開はいいなと思いました。



──ビートのザラザラした音はなんですか?

菊池:あれは砂利を歩いてる音と、草の上を歩いている音とかをいろいろ重ねたものですね。

──それを聞くと、やっぱりひねりがあると思ってしまいます(笑)。

菊池:フォークソングを作ったというよりは、フォークじゃない音楽をフォークに寄せていったみたいな感覚かもしれないです。

──歌詞はどういう着想で書きましたか?

甫木元:弾き語りをしながらボイスメモに5、6回、なにも考えずに歌って入れて、それを書き出したものをパズルみたいにして作りました。なんでその歌詞になったのかはあまり覚えてないですが、時期的には高知に移住してすぐくらいです。高知の風景がすごく新鮮で。街灯とかも全くなくて、電車が走ったりするとちょっと浮いて見えたり。本当に田舎なんですけど、歌詞には風景やそこでの暮らしがかなり反映されている。あと、母親の病気も大きかったと思うんです。余命を宣告された人を見続けると、永遠を求めてしまうというか。

──強いコンセプトがあったというよりも、環境や状況の影響を受けたということですよね。普段の歌詞作りでもそうですか?

甫木元:単純に鼻歌で歌えるものはそのメロディに合ってると思いますし、意味よりはそういう響きを優先させたいとは思っています。今回も口ずさめるような、鼻歌の延長線上になるように作りました。弾き語りからできた曲は、そうなる傾向が多いかも知れないです。もちろん、曲によってはコンセプトを立てますけど。

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