【インタビュー】HilcrhymeとTOC、アルバム2枚同時発売とツアー同時開催の意図「今、ものすごくいい精神状態」

■すごい純粋にセカンドヒットを狙ってます
■でも焦ってはない。そこが前とは違うところ

──個人的に大好きです。あと、これもリアルなリリックの代表として、触れていいかわからないけれど、『SELFISH』に入ってる「十二月一日」も、あの出来事を、よくぞここまでリアルに書ききったなと思いました。

TOC：全然、触れてもらって構わないですよ。これはね、いずれ書きたかったんですよ。

──Hilcrhymeが、TOCさん一人になった、きっかけになった事件が起きた日。

TOC：作家として、あまりにも題材にふさわしい1日だったので。超面白かったんですよ。面白いというのは、ドラマティックということで、本当に新幹線のテロップで自分のチーム名がバーッと出て来て、そこで初めて知ったんですよ。現実ではなかなかない、漫画で見るような出来事で、俯瞰で見たらすごく面白くて。東京駅についたら、マネージャーが二人待ち構えてて、そのままユニバーサル(所属レーベル)に行って、入って、すれ違う人がみんな、涙ぐんでるんですよ。「TOCさん…大丈夫ですか」みたいな感じで。もうね、あの時こんなこと言ったら不謹慎だったと思うんですけど、4年経ったんで言わせてもらいますけど、マジで、感謝しつつも、“そんな泣かなくてもいいでしょ”って思ったんですよ。“そんなに心配しないでくれよ”って。

──でも、そうなりますよね。周りの立場からしたら。

TOC：それから事務所の社長、レーベルのヘッドと話して、彼らが「TOCを守れ」と。ああ、俺はそうなんだと。一緒に切られるわけじゃないんですねって。どうされてもおかしくない立場だから、そう言われて、正直うれしかったです。で、俺も守らなきゃいけないと思ったし、Hilcrhymeを。

──「十二月一日」にそれが描かれた。

TOC：およそ一般の人にはわからないものを、歌詞として、ラップで遊ぶというのは、超楽しいんですよね。だから全然、相方への恨み節とかではなく、めっちゃ面白かった、その日1日のドキュメンタリーにしたかったんですが。いいラップ、書けましたね。

──もうね、その強さと冷静さが、カッコいいとしか言いようがないですけどね。しかも、確かに、ドキュメンタリーラップとしてすごく楽しめる。こうなったらもう、何でも書けちゃうんじゃないですか。

TOC：こんなに書いていいのかな、というのは正直あるんですけど、でもまあ、「暗くなりすぎないようにね」とは、舞台監督から言われましたけどね。今年6月にZepp DiverCityで、「十二月一日」を初めて歌う時に、あんまり暗い方向じゃなくて、ライブはハッピーに行こうと。そういう声をもらうと、リセットされるし。だから『SELFISH』のツアーでは、「十二月一日」も、すごくいい見せ方をできると思います。



──そういう、ここまで書くかというくらいにさらけ出す曲もあれば、『SELFISH』に入ってる「あと数センチ」「コイゴコロ」のように、タイアップ曲で、ヒルクライム王道の、メロディアスで、歌寄りで、ポップな曲もちゃんと入ってる。それもまた、Hilcrhymeらしいバランスだと思います。

TOC：俺、やっぱり、王道が好きですね。ツアーのリハーサルをやってても、こういう曲のほうが声が安定するし、歌詞が飛ばないんですよ。ラップのほうは飛びがちなんですけど、たぶんメロディが入ってるからですね。メロディがあるから歌詞をなぞれる。もう確実に、俺が得意なのはこっちのほうなんだなと思います。

──ライブ、楽しみにしてます。

TOC：楽しみにしていてください。今回は、映像の演出も強めに入れてるので。アルバムのリリース日に「コイゴコロ」のミュージックビデオが公開されてるんですが、あれ、自分で作ったんですよ。ディレクションとエディットを自分でやって、それもめっちゃいい感じなので、見てほしいです。映像は、前もやったんですけど、今回さらに本格的にやってるというか、ファイナルカット(動画編集ソフト)を使って、本当に編集を頑張りました。

──映像作家でもあると。

TOC：前回も、ちゃんと回転するミュージックビデオになったんで、今回はたぶんもっといくので、そういうのもツアーで見せられればいいなと思いますね。

──すごいなあ。どんどんマルチアーティストになっていく。

TOC：でも、あくまで楽曲作りを最優先に考えているし、常にヒットは狙ってます。すごい純粋に、セカンドヒットを狙ってますね。でも、焦ってはないです。そこが前とは違うところで、焦ってない。そこは超でかいです。

取材・文◎宮本英夫








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