【インタビュー】HilcrhymeとTOC、アルバム2枚同時発売とツアー同時開催の意図「今、ものすごくいい精神状態」
■今書きたがってることを第一に考えて
■そのあとにアーティスト活動が付随する
──それは、アーティスト生活と同時に、私生活が安定していることも重要なんじゃないかと思ったりしますね。すごくリアルな、家族について歌った曲も、今回多いじゃないですか。
TOC:そうですね。こんな仕事をしてるんで、家を空けることが多いんですよ。あんまり子供と一緒にいれないんだろうなって、ずっと思ってたんですけど、コロナ禍で、いれる時間が増えたんです。子供だけじゃないんですけど、若い子や、次世代の人や、自分の生活圏内にいる、友人も含めた家族全部の人たちとの時間を、とにかく濃くやっていくことが、今すっごい重要だと思っていて。当たり前のことなんですけど、それが当たり前に思えないぐらい、“自分が自分が”というアーティスト活動をしてきたから、今はこれをやりながら、子供との時間も大事にしてます。あと、今、禁酒してますね(笑)。それもけっこうでかいです。
──あ、飲んでないんですね。それはツアーに向けて体調管理、ということではなく?
TOC:ではなく。煩悩を切るためにというか。
▲Hilcrhyme『SELFISH』初回限定盤
▲Hilcrhyme『SELFISH』通常盤
──すごい。見習いたけど、無理です(笑)。
TOC:酒って、今は自分にとってマイナスに働くことが多いんですね。もともと、家族がいようが何しようが、めっちゃパーティーするし、人と酒を飲むのが好きなタイプだったんですけど、今それを抑えるようにしたら、すごいストイックになっていく自分がいて、エネルギーを内に溜めるような感覚になってきて、みなぎってくるというか、それがめっちゃ楽しくて。金も減らないし、エネルギーも溜まるし。“なんで俺は今まであんなにパーティーしてたんだろう?”と思うぐらいで。
──それはそれでいいと思いますけどね(笑)。
TOC:それがあった上での今、なんですけどね。だから、本当に充実してます。最高ですね。如実に結果に出ているなと思うのが、YouTubeとかSNS関連で、ちゃんと数字が積み上がっていって、これが実数だなと思ったんです。言っても、着うた世代のHilcrhymeが、SNSに強いはずがないので。だけど、たとえばTikTokを一週間前に始めたら、すぐに2万人(フォロワー数)とかいって、“おすすめ”にも乗って。それってそんなに簡単なことではないんですよ。ほかの世代のアーティストを見てると、みんな苦戦してるんで。だから、“出してきたものに間違いはなかったな”って、“年代を超えて愛される曲を作ってきたんだな”って、そういうのもあって、焦りがなくなったというのもあるし。“ちゃんと愛されてるじゃないか”という、愛に気づいた的な状況ですね、今は。
──すごくいい話。
TOC:いい話なんですよ。そうやって自分に余裕ができると、人を傷つけたりしないし、周りを笑顔にしたくなるし、そうすると、その人も笑顔になるじゃないですか。
──それが循環してゆく。大事なことだと思います。
TOC:そうそう。なんで今まで、こんなに攻撃的だったんだろうって。『FOOLISH』の中の曲も、だいぶ攻撃的ですけど、まあ音楽は別に、それを表現していいと思うんですよね。でもプライベートは、今、本当にいい感じです。
▲TOC『FOOLISH』初回限定盤
▲TOC『FOOLISH』通常盤
──それはもう、リリックを読んで、歌を聴けばわかります。『SELFISH』に入ってる、家族と子供のことを歌った「父の心得」という曲が、自分はたぶんこの2枚の中で、今一番好きなんですけど。
TOC:ありがとうございます。うれしいな。
──これは本当に沁みます。子供たちに何を教えて、どんな未来を見せてあげたいのか、父親の心得が、本当に愛情たっぷりに伝わってくるから。それって今の時代に最も大事な感情だよなとか、思ったりして聴いてます。
TOC:最近思うのは、教育って本当にクリエイティヴなものだな、ということで、それはアーティスト業にも通じるなと思ったんですよね。とにかく同じ目線に立って、一緒にいてあげることが大事で、あれしろこれしろ、ああするなこうするな、よりも、とにかく一緒にいること、そばにいてやることが大事なんだなって、最近思ってます。…すごいアットホームなアーティストになったなって、今思いますね(笑)。
──「父の心得」もそうだし、『FOOLISH』に入ってる「たいよう」もそうだし。
TOC:そうですね。
──なかなかここまで、家族への愛情をしっかりとリアルに歌うのって、希少だと思うんですよね。ただでさえ、そういうことはNGワードにされちゃうことも多いですから、インタビューしてると。
TOC:そうなんですよね。とにかく作品至上主義なんで、僕は。今書きたがってることを第一に考えて、そのあとにアーティスト活動が付随しているという感じなので、作品でこういうものが生まれちゃったら、アーティスト業もそれに従うしかない。あくまで曲が大事だから、そのあとにライブとか、グッズとか、いろいろ付いてくるので。楽曲の手が止まるぐらいだったら、たぶんツアーもやめたほうがよくて、自分は今こういうものを書きたがっているということのほうが重要で。「父の心得」は俺も非常に気に入ってて、今までの方向とは違うのかもしれないけど、でもいいじゃないかと。16年もアーティスト活動をやってて、そういう曲を書いていいじゃないかと思ったので。
──いいと思います。全面的に支持します。
TOC:だし、よく考えたら、「想送歌」とか、子供に向けて歌う曲は、今までもあったんですよ。子供がまだいない時に書いてるんですけどね。ドラマのタイアップで、余命いくばくもないお母さんが子供に残すものという、『ゆりちかへ』というドラマだったんですけど、それで書き下ろしてるから。じゃあ何が変わったんだ?というと、何も変わってなくて、実生活に子供がいるかいないかの違いだけで、創作物としては、昔からそんな曲も出していたので。ただインタビューで、こういうパーソナルなことは言ってなかったんで、そこだけはちょっと心配なんですよね。そこはもう、任せようかなと思います。
──それは僕らメディアにというよりは、ファンに任せようということですよね。だって曲ができちゃったんだからしょうがない。しかも、こんなにいい曲が。
TOC:しょうがないんですよ。
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