【レポート】カーリングシトーンズが“本物のバンド”であることを痛感させた爆笑と洗練のツアー

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<カーリングシトーンズLive Tour 2022“Tumbling Ice”~シト目みに行こう!>は、全5公演。これまでライブをしていなかった北日本をトラベリングする。その3本目は北海道の北見(9月1日)。このカーリングの聖地でのライブをメンバーは熱望していたのだが、なかなか行けずにいた。それが今回、ついに実現。そのせいもあってか1323人収容の北見市民会館公演はソールドアウトした。周辺の人口を考えると、これはとんでもない数字だ。待ちかねたカーリングシトーンズの降臨に、開演前の会場は異様な熱気に包まれていた。そこへメンバー6人がカーリングブラシを持って現れたのだから、オーディエンスの歓びは大爆発を起こしたのだった。このカーリングブラシはロコ・ソラーレからのプレゼントで、ハンドルの部分に全員の名前が入った特注品だった。これは、「ソラーレ」MVの中でも使用されている。

▲カーリングシトーンズ(東京 NHKホール公演の様子)



オープニング曲の「デスペラーダー」は奥田シトーンのドライヴの効いたベースから始まる。そこに斉藤シトーンのドラムが加わると、とんでもないグルーヴが出現する。メンバーだけですべての演奏を行なうというカーリングシトーンズのポリシーが、奇跡のバンドサウンドを生んだのだ。次の「スべり知らずシラズ」でベースが寺岡シトーンに交代すると、さっきとはまた別のグルーヴが生まれる。この多彩なサウンドをバックに、6人のリード・ボーカリストが歌う。なんとも贅沢なパフォーマンスに、オーディエンスの目と耳はどんどんライブに集中していく。

「北見に来たくて来たくて、しょうがなかったです。やっと来れました。最後まで楽しんでいってください」と寺岡シトーン。大きな拍手が起こる。ここで寺岡シトーンは自分の名前にまつわる秘密を披露する。

「僕のお母さんが大学生の時にこのあたりに旅行に来て、『呼人』という駅の名前を気に入って、それを僕の名前にしたそうです。なので、今日は“よひと”じゃなくて“よびと”と呼んでください」。呼人(よびと)は北見から石北本線で8つ目の駅で、近くには網走湖がある。まさか名前の秘密を明かされるとは思っていなかった観客は、驚きの笑顔を浮かべる。バンドと北見はカーリングだけでなく、こんな深いつながりがあったとは! こうしてステージと客席は一気に打ち解けたのだった。

▲寺岡シトーン(東京 NHKホール公演の様子)

楽しさとスリルとユーモアがミックスされたシトーンズのライブは、北見という特別な場所のパワーを得て、これまでのライブとはひと味もふた味も違う盛り上がりをみせる。凄かったのは「マホーのペン」だった。超スローテンポのブルースを、キングシトーンが魂を込めて歌う。それを寺岡シトーンのエレキピアノが優しく包む。さらにはトータスシトーンがマウスハープ(ブルースハーモニカ)のソロでムードを高める。日本のバンド・ミュージックの至宝たちだからこそ表現できる、最高の演奏となった。

最新アルバム『Tumbling Ice 』の曲を中心にライブは進む。途中、最新企画アルバム『Road to 老後 CM王への道』のコーナーがはさみ込まれる。この企画はコロナ禍で大変な思いをしている自営業者を、CMソングを勝手に作ることで応援するという奇想天外なもの。まずはパン屋さんを想定した「パンのうた」。「このへんは小麦がたくさん穫れるんじゃないの」と浜崎シトーン。コミカルな歌に会場が和む。続いては焼肉屋さんを対象にした「焼肉soul」。実は北見は焼肉とホルモンの聖地でもあり、「焼肉Soul」を北見厳寒焼き肉祭りで使わせてもらいたいという市の担当者からの要望に対して寺岡シトーンが自らCDを届けに行ったという経緯があるので、またまた会場が盛り上がる。 

そしてシトーンズ名物“その場で曲作り”のコーナーへ。これはくじ引きでCMソングのテーマと曲を作る順番を決め、6人が即興で仕上げるという前代未聞のコーナーだ。この日のテーマは「花屋」。ボサノヴァタッチのムーディーな曲が笑いの中で作られていく。会場も爆笑を惜しまない。これはもうライブというより、大喜利だ。あっという間に仕上がった曲に、キングシトーンが名付けた曲名は「お菊」。これには会場、大爆笑。

▲キングシトーン(東京 NHKホール公演の様子)

ここからはエンディングに向かって怒涛の演奏が繰り広げられる。頑張る宅配ドライバーを歌った「天地無用の幸せを」では、斉藤シトーンがボーカルにドラムに大活躍。「ドゥー・ザ・イエローモンキー」では寺岡シトーンのヘフナー・ベースがうなる。そして北京オリンピック銀メダルのロコ・ソラーレの応援歌「ソラーレ」は、さすがご当地での演奏に会場中が踊り出す。すでに名曲の呼び声高いナンバーは、もしかすると北見の人々にとって永遠のスタンダード・ナンバーになるのかもしれない。ライブは堂々たるラブソング「それは愛なんだぜ!」で一度終了。

▲斉藤シトーン(東京 NHKホール公演の様子)

本編の熱を引き継いで、アンコールも超ド級の盛り上がりになる。ビートの効いたブルース・ロックの「夢見心地あとの祭り」では奥田シトーンが迫力のドラムソロを決める。面白かったのは次の展開だった。メンバーがそれぞれ自分のヒット曲を歌いたがる。斉藤シトーンが「歩いて帰ろう」を歌えば、寺岡シトーンはジュンスカの「歩いていこう」を歌う。「俺も」「俺も」と皆が続き、笑いと混乱の最後はトータスシトーンの「ガッツだぜ!!」。文句なしのパフォーマンスに、場内は(声なしで)大合唱になった。 

▲トータスシトーン(東京 NHKホール公演の様子)

締めくくりはメンバー全員が歌って踊る「涙はふかない」。まるでドリフの「いい湯だな(ビバノン・ロック)」のような清涼感が会場を満たす。オーディエンス全員が思い切りの笑顔になる。歌あり笑いあり、バラエティショーのような、2年越しの“夢のライブ”は幕を閉じたのだった。

  ◆  ◆  ◆

北見から1週間後、ツアーは最終日(9月8日)を迎える。場所は東京・NHKホール。ここでもオーディエンスは期待に胸を膨らませてカーリングシトーンズを待っていた。

例のブラシでスウィープしながらメンバーがステージに登場すると、声なき大歓声が上がる。奥田シトーンと斉藤シトーンのリズムセクションが軽快なグルーヴを繰り出す「デスペラーダー」で幕を開けると、「スべり知らずシラズ」では寺岡シトーンが右手を上げて会場を煽る。「俺たちのトラベリン」では浜崎シトーンの渋い声に、キングシトーンが高い声のハーモニーをつけてコーラスワークを引き締める。斉藤シトーンは「出会いたい」でスリリングなギターワークを披露。絶好調のスタート・ダッシュを決めたのだった。

▲奥田シトーン(東京 NHKホール公演の様子)

『Road to 老後 CM王への道』コーナーでは、北見とは別のセットリストが用意されていた。浜崎シトーンと斉藤シトーンの地元・宇都宮名物の餃子をテーマにした「ネバーエンディング・ギョーザ」と、ホームセンターがテーマの「あなたの手」を歌う。そういえば斉藤シトーンが「ちょっと自慢していいかな。このギター、自分で作ったの」とMCで言っていたが、彼もホームセンターに相当お世話になっているようだ。

そうして即興曲作りのコーナーへ。この日のテーマは「コーヒー」で、焙煎とパイセンをひっかけた歌詞で会場の笑いを誘っていた。ちなみに北見のライブ後、トータスシトーンは「即興コーナーが終わると、プールから上がったときみたいに身体が重い」と笑顔でボヤいていた。バンドマン的反射神経を要求されるこのコーナーは、まさにこのバンドにしかできない“音楽遊び”で、メンバーも観客も全力で楽しんでいたのが印象的だった。

▲浜崎シトーン(東京 NHKホール公演の様子)

この日の後半のハイライトは「ちぃ~な」。R&B風のリフレインに乗せて短いギャグを連発するのだが、浜崎シトーンが“ちぃ~な”のような謎の言葉ですべてを吹き飛ばすという曲。浜崎シトーンの奇々怪々な叫びはダントツに面白く、まさにファイナルにふさわしい芸達者ぶりを発揮していた。

<カーリングシトーンズLive Tour 2022“Tumbling Ice”~シト目みに行こう!>は初日に寺岡シトーンが体調不良で欠席するというアクシデントがあったものの、無事に終えることができた。そのファイナルは全体に演奏もギャグも洗練されていて、北見とは異なる魅力があった。見応えのある北見、聴き応えのある東京といったところか。何よりカーリングシトーンズがナマモノ=本物のバンドであることを痛感させてくれるツアーだった。だからこそ次の活動が待ち遠しいと、早くも思ったのだった。

▲カーリングシトーンズ(東京 NHKホール公演の様子)

▲カーリングシトーンズ(東京 NHKホール公演の様子)

文:平山雄一
資料提供:ドリーミュージック
撮影:平野タカシ

<カーリングシトーンズLive Tour 2022 ”Tumbling Ice“〜シト目みに行こう!>

8月19日(金) 栃木 宇都宮市文化会館
8月29日(月) 宮城 仙台サンプラザホール
9月1日(木) 北海道 北見市民会館(大ホール)
9月7日(水) 東京 NHKホール
9月8日(木) 東京 NHKホール

アルバム『Tumbling Ice』

2022年7月20日(水) Release
バンド初の映画主題歌として話題となったムロツヨシ初主演作・映画「マイ・ダディ」の主題歌「それは愛なんだぜ!」含む全12曲収録。
初回限定盤には、MVやメイキング映像が収録されたDVD付

01. デスペラーダー
02. オイ!
03. それは愛なんだぜ!
04. 反射
05. ドゥー・ザ・イエローモンキー
06. 天地無用の幸せを
07. ウッドストック
08. カリフォルニア
09. AB/CD
10. カーリングシトーンズのテーマ スベりたいな
11. ソラーレ
12. ちぃ~な

初回限定盤 / 紙ジャケット仕様 (CD+DVD) [4,950円(税込) MUCD-8166/7]
通常盤 (CD)  [3,300円(税込) MUCD-1486]

<DVD>
01. Music Video『オイ!』
02. Music Video『それは愛なんだぜ!』
03. Music Video『ソラーレ』
04. Music Video『それは愛なんだぜ!』メイキング映像
05. 『Tumbling Ice』アーティスト写真撮影メイキング映像
06. Music Video『ソラーレ』メイキング映像

企画アルバム『Road to 老後 CM王への道』

2022年8月17日(水) Release
全9種のショップ別テーマソングがYouTube動画とライブから誕生し
それらを新たにレコーディングしバンドサウンドを以って完成させたカーリングシトーンズ初の企画アルバム!

01. パンのうた
02. 焼肉soul
03. あなたの手
04. ネバーエンディング・ギョーザ
05. そこのけサイクリング
06. スポーツ用品店~足は左から~
07. LA・LA・LA RAMEN SONG
08. 大サビエブリデイ
09. カレーの衆

2,750円(税込)MUCD1485


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