【インタビュー前編】TENSONG、“眠らない街で夢を見るんだ”という強い思いが込められたデジタルシングル「東京イリュージョン」
“聴いた人それぞれに寄り添うことができる、十人十色の音楽を届けたい“というコンセプトを掲げて活動している、ヴォーカル、ギター、DJの3人組ユニットTENSONG。彼らが8月4日に、2022年4作目のデジタルシングル「東京イリュージョン」をリリースした。この楽曲は音楽活動を本格化するために大分から上京したメンバーの感情から生まれており、“眠らない街で夢を見るんだ”という強い思いが込められている。ジャンルにとらわれない音楽性も歌詞表現もさらに洗練され、東京に身を移したからこそのステップアップを感じられる楽曲に仕上がった。上京から約半年、彼らはどんな思いを抱えて音楽と向き合っているのだろうか。メンバー3人に訊いた。
■上京して“これからも音楽をやりたい”という気持ちが勝るから
■「東京イリュージョン」という曲が生まれたんだと思います
――TENSONGの皆さんは、音楽に専念するために2022年3月に上京なさったそうですね。東京での暮らしはいかがですか?
たか坊(Vo):東京に行く心の準備はしていたつもりだったんですけど、慣れない生活が続いています。どこに行くにしろ乗り換えが多かったり(笑)、僕は地元の福岡の友達にもなかなか会えない寂しさもあったり。
拓まん(G):僕は高校卒業まで京都に住んでいたんですけど、それなりに都会の京都でも、東京みたいなせわしなさはないんです。やっぱり東京は忙しい街なんだなと思いますね。
アルフィ(DJ):僕は生まれも育ちも大分なのもあって、温泉に入るのが日常で。だから温泉のない生活がちょっと厳しいですね(苦笑)。
▲Vo. たか坊
――福岡出身のたか坊さん、京都出身の拓まんさん、大分出身のアルフィさんが、大分の大学で出会って結成されたのがTENSONG。大分には良い思い出がたくさんありそうですね。
アルフィ:家から3分も歩けば友達の家があるので、街の思い出は友達との思い出なんですよね。買い物に行けば必ず誰かしらに会うし。
拓まん:別府の至るところに思い出があります。卒業するときに思い出の聖地巡りをしてそれを動画にしたんですけど、完成した映像を観て、たか坊は泣いてました(笑)。
たか坊:それだけ大事な思い出が詰まってるんだから、そりゃ泣くでしょう!(笑) それぞれに地元はあるけど、TENSONGのホームタウンは大分。僕らが遊び仲間として出会って、3人で音楽を始めるきっかけをくれた街です。大分に行っていなかったら、TENSONGは生まれていないと言い切れます。学業と音楽活動の両立は大変なことも多かったけど、3人で音楽やっている空間がいちばん楽しかったからこそ、それも続けてこれました。
拓まん:大分で学業と音楽を両立できていたからこそ、今こうして上京してるんだと思うしね。
アルフィ:そうだね。大分にはたくさん良い思い出はあるし、“そんなに居心地がいいなら大分で音楽をやればいいんじゃない?”と言われることもあるけれど、東京は刺激が多くて、自分を追い込む場所、成長する場所としていちばん良いと思うんです。大分は居心地が良すぎるからずっとのんびりしちゃう気がしたんですよね。だから上京してきたし、今は東京にいるべきなのかなと思っています。東京の良いところを見つけられるのはこれからなのかな、と思っているところです。
たか坊:……アルフィが自分の意見をこんなにしっかり話しているのを初めて見て、今すごく驚いています。この彼の姿が、東京での成長そのものですね。
▲Gt. 拓まん
――今年4作目となるデジタルシングル「東京イリュージョン」は、音楽活動を本格化するために上京したメンバーの感情から生まれており、“眠らない街で夢を見るんだ”という強い思いが込められているそうですね。東京に移り住んだからこそ生まれてきた気持ちが、歌詞にはしたためられていると。
たか坊:そうですね。やっぱり大分や九州に戻りたい気持ちは、正直あるんです。でもアルフィの言っていたとおり、東京でちゃんと成長していかなきゃいけないという思いも同じくらい強い。どちらの気持ちも本当なんだけど、今は何よりも音楽活動を優先させたいので東京にいるべきだと思うし、東京で頑張っていきたいんですよね。
拓まん:東京が成長できる場所である理由は、コミュニティが広いから出会える人たちが違うことですね。大分は居心地がいいけどコミュニティが狭い。でも東京はその何倍、何十倍、もしかしたら何百倍ぐらい広いし、そのぶんスキルが高い人も多いと感じています。東京で出会う人たちから新しいことが吸収できるし、勉強させてもらっています。みんなが憧れる場所であることを、身をもって実感していますね。
▲DJ. アルフィ
――大学卒業だけでもかなり大きな環境の変化ですし、それに加えて上京ともなると、生活はガラッと変わったと想像します。
たか坊:そうですね。大学を卒業して1週間後に東京へ引っ越して、いきなり自分の生活の軸が全部音楽になったんです。音楽活動のためにいろんな音楽を聴いたり、映画を観に行ったり、感受性を刺激するような行動を日常的に取るようになって。そのなかでふと、この音楽は正しいのか間違っているのか、ジャッジしている自分に気付いたんですよね。正しいとか間違っているとか、そんなものはないのはわかっているはずなのに、そこから拍車が掛かって“今自分がやってる音楽でさえ、これが正解なのか間違いなのかもわかんないな”という思考に陥ってしまって。
――なるほど。ステップアップするとぶつかる壁かもしれません。
たか坊:音楽に正解なんてないと思いつつも、世の中にどう受け止められるのかが怖い。そうすると“本当に僕たちは音楽をやっていていいのか?”や、“そもそも音楽をやるべきだったのか?”みたいなマイナスのことまで考えてしまうことが多々あるんですよね。でも僕らは上京したときの初心を忘れていないし、“これからも音楽をやりたい”という気持ちが勝るから「東京イリュージョン」という曲が生まれたんだと思います。サビに行くまでにマイナスな発言をずっとしているけれど、それでも現実にないものを実現させてやりたいし、叶えたい。そんな僕らの音楽への思いが込められた曲ですね。夢という言葉を使いたくなくて“幻想=イリュージョン”という言葉を使ったんです。
――“夢”という言葉を使わなかった理由は?
たか坊:夢を持っている人も持っていない人もいるし、“自分は夢を持っている”と思っている人も、それが本当に“夢”なのかどうかわからないと思うんですよ。僕は幼稚園の頃パイロットになりたかったけど、結局なっていない。じゃあこれは夢を叶えられなかったかというと、また少し違うと思うんですよね。だからいちばん大切にするべきものは、今でしかないと思うんです。僕らは1年前のことを覚えていないし、1年後どうなるかわからないけれど、今を変えられる人は過去も未来も変えられる――そういう裏メッセージもちらつかせています。
――今を変えられれば、過去も未来も変えられる。たしかにそれはイリュージョンみたいですね。
たか坊:だからこそ“輝き続けたい”という意味でサビに《Stay Gold》という言葉を使いましたね。ありのままの自分で輝き続けたいし、自分のありのままを書きたかったから《My Life Song》という言葉を使ったし。自分たちの今の要素をどんどん入れて作っていきました。
――“自分たちの今の要素を入れる”というのは、これまでも一貫しているのではないでしょうか。リリースした楽曲をリリース順に並べて聴いていくと、観ている景色が広がっていることが如実にわかるので、成長が刻まれていると感じます。
たか坊:主に歌詞を書いているのが自分だからかな。いつも拓まんとアルフィも添削をしてくれているので、自分たちベースで曲を作っちゃってるのかなあとは思います。
――ご自身の気持ちが素直に綴られているのと同時に、いろんな立場の人にフィットする切り口だとも思います。夢という言葉を使わないことや、“答えは見つからなくてもいい。探し続けることが大事”というメッセージは、夢を持っていない人を置き去りにしない。
たか坊:人って絶対的な答えを求めちゃうんですよね。もしかしたら選択した物事には正解不正解があるかもしれない。でも探し続けることが大事だから、導き出した答えが正解でも不正解でもどっちでもいいんですよね。だから「東京イリュージョン」も、気持ちがプラスな人にも、マイナスな人にもフィットすると思うんです。あと、「東京イリュージョン」はずっと《死ぬまでずっと探してるんだ》と歌っているけれど、Dメロで《誰もがなんとなく抱えてる無名の悩みも/最後まで満たされることない》と歌っているんですよね。
――そうですね。
たか坊:なんで今自分こんなに悩んでるんだろう、こんなにもやもやしてるんだろう? みたいな悩みって、誰もが抱えると思うんです。悩みばかり抱えていると心はまったく満たされないし、心が満たされていてももっともっとと求めてしまうから、結局人間は満たされることはないんですよね。だからあの歌詞の後に《それもきっと/答えだと信じて》と続けることで、“満たされる状態を追い求めている自分自身が答えなんだよ”とはっきりと伝えたかった。そしたら背中を押せるんじゃないかなと思ったんです。
――おっしゃっていただいたその思考は、以前から持っていたのでしょうか?
たか坊:この曲の歌詞を書いていた頃の自分を、そのまま投影したのがこのDメロですね。この曲をリリースする前はずっと“ほんとにこれでいいのかな? この歌詞でいいのかな?”と思っていて、そのたびに拓まんに“これでいいのかな”と吐露して……の繰り返しで。そのなかでたどり着いた答えがこれだった。だから僕は、自分なりに答えを出しているんですよね。
――「東京イリュージョン」には、たか坊さんが苦悩のなかで導き出したその答えが軸として存在から、どんな立場の人も置いてけぼりにしない曲になったのかもしれませんね。
たか坊:僕らの世代は、夢を持っていない人も多いんですよ。僕自身も音楽をこの3人でやっていきたいと思うまでは、“英語を学んでいるなら英語を使った仕事ができたらいいな”くらいの感覚だったから。
拓まん:でも僕ら世代は、やりたいことがたくさんある子は多いと思うんですよ。SNSを通じていろいろな情報が入ってくるから、仕事にしても趣味にしても、やり方がわかるんですよね。だからチャレンジもしやすくて。でもやりたいことはたくさんあっても“どれが将来の夢なの?”と訊かれてしまうとわからない。ひとつに絞れない子は多い気がします。
――なるほど。夢をひとつに絞れない苦悩、夢を叶えられない苦悩など、「東京イリュージョン」は日々を生きる人の苦悩に訴えかけるものがあるんだろうなと。
たか坊:そもそも夢って見るものであって、叶えなきゃいけないものではないと思うんですよね。夢を叶えることが正解とされているけど、寝ているときに見る夢みたいに、幻想の世界でいいと思うんです。夢のなかで理想の自分を思い描くだけでも、全然いいんじゃないかな。それこそ夢を叶えることが目的になって、夢を見ようとしない人も多いと思うんですよ。 死ぬまで夢を見続けるのも素敵なことですよね。
取材・文:沖さやこ
※アルバムインタビューの後半は後日公開予定
ライブ・イベント情報
2022.10.8 Sat. 9 Sun. 10 Mon.
※TENSONGの出演 : 2022.10.9 Sun.
■イベントオフィシャルサイト
https://minamiwheel.jp/
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