【ライブレポート】「the GazettEらしくライブができるということを証明できたツアーだったと思います」

the GazettEの最新アルバム『MASS』がリリースされたのは、2021年5月26日だった。コロナ禍が起こってから配信も含めて一切のライブ活動を休止していた彼らだけに『MASS』をフォローするライブはないものと思われたが、メンバー達はリリースタイミングに捉われることなくアルバムツアーを行うことを決断。リリースからおよそ1年後となる今年の5月13日から7月14日にかけて、＜the GazettE LIVE TOUR2022 -MASS- / PHASE 01-COUNT "DECEM"＞と銘打った全国ツアーが開催された。

◆ライブ写真

3年ぶりのthe GazettEの全国ツアー、さらに『MASS』はより生々しいバンド感を打ち出したアルバムということもあり、全国のファンが同ツアーに大きな期待を寄せたことは想像に難くない。今回のツアーは全公演満員となり、3年のブランクを経てもthe GazettEが絶大な動員力を誇っていることを実感させた。同時に、それは彼らが各地で観応えのあるライブを披露したことの証ともいえる。

そんな＜the GazettE LIVE TOUR2022 -MASS- / PHASE 01-COUNT "DECEM"＞のファイナル公演が7月14日に、東京の中野サンプラザホールで行なわれた。ウィークデーの開催に加えて、the GazettEのライブということで当日は雨だったが、中野サンプラザホールには場内を埋め尽くすオーディエンスが集結。開演前の場内は笑顔とざわめきに溢れ、華やいだ空気に包まれていた。


オープニングSEの「COUNT-10」が流れ、ステージにメンバー達が姿を現す。客席が騒然となる中、葵が奏でるダークなアルペジオが鳴り響き、ライブはパワフルな「BLINDING HOPE」から始まった。眩いオーラを発しながら抑揚を効かせた歌声を聴かせるRUKI。華麗なステージングとエモーショナルなギターソロで魅了する麗。クールな表情でソリッドなギターワークを展開する姿が印象的な葵。1曲目から激しくヘッドバンギングをして、重厚にウネるベースサウンドを轟かせるREITA。全身全霊という言葉が似つかわしいドラミングで、スケールの大きなリズムを紡いでいく戒。圧倒的な存在感を湛えた5人が並び立った情景と、激しさとエモさを併せ持った唯一無二のサウンド、熱いリアクションで応えるオーディエンスの姿などが折り重なって、ライブが始まると同時に場内はthe GazettEの作る世界へと一変した。

「ROLLIN'」で場内のボルテージをさらに引き上げた後、続く「GUSH」のイントロで麗のギターの音が出ないというアクシデントが発生。仕切り直して曲を始めたがイントロが合わずに、RUKIが演奏をストップさせた。シラケたムードになるどころか客席は大いに湧いて、場内の熱気は一層高まる。緊張感を纏ったライブを常に行っているバンドだからこそ思わぬハプニングを喜ぶオーディエンスの気持ちはわかるし、3度目の正直となった「GUSH」はもちろん、その後の「INCUBUS」や「HOLD」「NOX」といったナンバーを“ビシッ！”と聴かせたのはさすがの一言。長年に亘って様々な環境で無数のライブを行い、多くのアクシデントを経験してきたバンドならではの凄みを感じさせた。


ハードに突き進むライブ前半を経て、中盤では暗い世界観の「Bath Room」や「濁」、宇宙を想起させる壮大なスケール感を放つ「THE PALE」といったスローチューンが続けて届けられた。the GazettEはヘヴィ＆アグレッシブなバンドというイメージを持たれがちだが、エモーショナルな側面を持っていることは彼らの大きな魅力であり、ファンもそれを深く愛している。今回のライブでもこういった曲の惹き込み力は絶大で、ライブを通して激しさを見せるオーディエンスもこのときばかりは静まり返り、the GazettEが描き出す深遠な世界に浸っている姿が印象的だった。

麗と葵によるアコースティックギターのアンサンブルを活かして今までのthe GazettEとはまた違った抒情性を創出する「MOMENT」を聴かせた後、RUKIが「楽しんでる？」と挨拶。「ツアーファイナルですけど、いつもね、1本1本俺らは変わらずにやっているから。いつでも死ぬ気でいくからさ、死ぬ気でこいよ。難しいことは考えなくていいからさ、楽しむことだけ考えろよ！　やれんのか、中野！　いけるか！　かかってこい！」というRUKIのアジテーションに続いて、ライブは後半に入っていった。


再びアグレッシブモードにシフトしたthe GazettEは、ハイボルテージに疾走する「BARBARIAN」や「FRENZY」、アグレッシブな「ABHOR GOD」などを畳みかけるようにプレイ。ステージ全体を使って激しいパフォーマンスを行い、爽快感を伴ったハードネスを炸裂させるメンバー達とヘッドバンギングや折り畳み、ジャンプといったフィジカルなリアクションを繰り返すオーディエンス。場内の熱気はどんどん高まっていき、本編のラストを飾った「LAST SONG」ではツアーファイナルにふさわしい圧巻の盛り上がりを見せた。

3年ぶりの全国ツアーを、最良の形で締め括ったthe GazettE。今回のツアーでは初日のライブを観る機会に恵まれて、そのときにもライブの完成度の高さに圧倒されたことを覚えている。ライブというものはツアーを通して進化していくわけだが、今回のツアーはもはやその成果はあまり感じられないのではないかと思うほどの仕上がりだった。だが、そこはthe GazettE。アンサンブルやバンドとしての表現力、メンバーそれぞれの魅せ方などにさらなる磨きがかかって、ファイナル公演は絶対的な説得力に満ちたライブになっていた。


もうひとつ、今回のツアーは凝ったステージセットや派手なギミックなどを用いることなく、純粋に音楽とメンバー達のライブパフォーマンス、そしてライティングで魅せるスタイルだったことも印象的だった。いわゆる“昔ながら”のアプローチでオーディエンスを満足させたのは実に見事。この辺りからもthe GazettEがより魅力を増したことがうかがえる。

アンコールのMCでRUKIは「こういう状況下（コロナ禍）なのはいまだに変わらないけど、それでもね、いろんな地方にいってきたよ。いろんなところで、沢山パワーを貰ってきた。音楽というものはどこでもできるもので、やろうと思えば環境に拘わらずできるけど、the GazettEのライブというものはやっぱりみんながいないと成り立たないと思う。だから、ツアーとか、ライブを一切やってこなかった、この状況下になってからね。今回のツアーはライブというものは何も変わらなくて、この熱というものは声が出せなかろうが関係ない。そして、どんな状況下であろうがthe GazettEらしくライブができるということを証明できたツアーだったと思います」と語ったが、それを実現できたのは彼らが音楽に対して妥協することがなく、メンバー全員が常にプレイヤーとしてさらなる高みを目指しているからこそといえる。


＜the GazettE LIVE TOUR2022 -MASS- / PHASE 01-COUNT "DECEM"＞は中野サンプラザホール公演で終わりを告げたが、終演後には今年の9月に結成20周年を記念したファンクラブ限定ライブ『HERESY LIMITED LIVE 2022 -HETERODOXY-』、バンド史上初のFC MEETING『20TH ANNIVERSARY FC MEETING -異端総會-』が東京・大阪で2Days開催、さらに10月から12月にかけて＜PHASE 02-"The Unknown"＞と銘打ったツアーを行うことがアナウンスされた。今回のツアーが素晴らしいものだっただけに、今後のthe GazettEの動向も本当に楽しみだ。

取材・文◎村上孝之
写真◎Kyoka Uemizo, Yoshihiro Mori




◆the GazettE オフィシャルサイト