【レポート】河村隆一、COTTON CLUBで初披露した新たな才能「この2組は本当に素晴らしい」
河村隆一が6月19日、21日、23日、25日の4日間、COTTON CLUBにて<Ryuichi Kawamura Live2022 at COTTON CLUB>を開催中だ。生の歌声や息づかいを至近距離で体感できるプレミアムなジャズクラブ公演は1日2ステージ計8公演で開催されるもの。その最終公演前日となる24日に行われたショーケース公演が、<Ryuichi Kawamura Presents NRS Showcase Live 2022 COTTON CLUB>となる。
◆<Ryuichi Kawamura Presents NRS Showcase Live 2022> 画像
“NRS Showcase Live”と題された同公演は、音楽業界におけるプロ集団として高いクオリティと“ホンモノ”というカテゴリにこだわり、新しいエンターテイメントを創造する会社=NRSによるショーケース。NRSのパートナーを務めるのはホンモノを体現し続けるアーティスト河村隆一だ。
そして開催された<Ryuichi Kawamura Presents NRS Showcase Live 2022 COTTON CLUB>には、ミュージカルでも活躍中のArata(Vo, G)を中心としたロックバンドOffshore、オペラやミュージカル出演ほかシンガーソングライターとしての経歴を持つ女性ボーカリストhkr、といった河村隆一に見出された新たな才能を有する2組に加え、NRSのプロジェクトリーダー&プロデューサーである河村隆一自身が登場。それぞれのステージやセッションなど約1時間10分の熱演を繰り広げた。BARKSでは後日改めて同公演の詳細レポートをお届けするが、ここではOffshoreとhkrを中心とした速報をお届けしたい。結論から言えば、この日、すべてのステージにサポートキーボードとして参加したTourbillonのメンバーであり、河村隆一の懐刀である葉山拓亮の「彼らは後々、絶対に日本を代表するアーティストになると思います」というコメントを実証する一日となった。
東京・丸の内にあるCOTTON CLUBは、ジャズ、ポップス、ロックなどさまざまなアーティストが出演するライブレストランだ。お酒や食事を堪能しながら、ゆったりと演奏が楽しめるオトナな空間は、ステージを180度取り囲むようにテーブル席が配置されており、例えば後方席からでもギターアンプの銘柄が肉眼で確認できるほどの近さ。アーティストの表情や呼吸の機微をダイレクトに、身近に感じられる。
▲Offshore
定刻通り、その客席の中を通ってステージへ登場したのは、Offshoreの4人と葉山拓亮だ。和音のスライドによる軽快なギターサウンドから幕を開けた彼らのステージはポップで馴染みやすいが、演奏開始わずか数秒で剥き出しになったのは、バンドとしての演奏力の高さ。キレ味鋭い佐倉なる(Dr)のハイハットワーク、緩急の効いた優月.(B/ Support)のベースライン、躍動するKAI(G)のカッティングがサウンドをグルーヴさせる。加えて、この日披露された「このまま遠くまで」「色彩」「We are meant to be together」はシティポップを土台としながらも、ファンクやソウル、オルタナティヴなど様々な音楽的要素を含み、そのサウンドカラーが万華鏡のように変化するなど、驚きと新鮮さに溢れている。
そしてArataのボーカルは強くしなやかなバンドサウンドに乗って自在だ。注目すべきは、正確無比なピッチとリズムを持ちながら、艶やかで伸びやかといった河村隆一直系とも言えるスタイルにある。「NRS所属後初のステージが、この素敵なCOTTON CLUBです」とはArataのMCでの一言だが、その初々しさや親しみやすさとは裏腹に、Offshoreが生み出すサウンドは限りなく力強く多彩だと感じさせるステージだった。
▲hkr
「僕たちOffshoreは、本日これからhkrさんや河村隆一さんのバックを務めるという大仕事がありまして。メンバーみんな、そのことで頭がいっぱいだよね」とMCで明かされていたように、Arataの呼び込みで本日の2組目、hkrがステージに登場した。真っ赤なドレスに身を包んだ彼女は、ゴスペルやジャズを背景に持つ音大声楽科卒業のメゾソプラノ。前述したようにオペラやミュージカルへの出演経験ほか、すでにアーティストのバックコーラスやシンガーソングライターとしても活動しており、その実力の高さはステージ上のパフォーマンスを観れば一目瞭然だった。
この日演奏されたビートルズのカバーにしてソウルの女王アレサ・フランクリン・バージョンの「Let It Be」「Eleanor Rigby」、そして「My Song」の3曲は、hkrのキャパシティの広さをアピールするに充分なもの。透き通る声質と伸びやかに突き抜ける発声を響かせた「Let It Be」、圧倒的なパワーで会場を震わせた「Eleanor Rigby」、感情をなぞるようにエモーショナルでソウルフルなバラード「My Song」。驚異的なダイナミックレンジの広さをあますところなく見せつけ、客席を魅了し圧倒した。以前のインタビューで河村隆一は「音域的にも、艶の部分でも、昔から女性ボーカルの声が好き」と語っていたが、その理想系のひとつがhkrなのかもしれない。そう感じさせる非の打ち所のないステージとなった。
▲河村隆一
「3組目は、本日の主催者でもあります河村隆一さんです」とのhkrの紹介で登場した河村隆一は開口一番「どうでした? みんなのステージは?」と問いかけ、盛大な拍手を持って客席に迎えられた。そのまま続けられたトークでは、Offshore、hkrとの出会いや個々の音楽的魅力が河村隆一の言葉で届けられる場面も。それらは後に公開する詳細レポートでお伝えするが、「自分よりも若い世代の人たちの中に、“いい歌うたってるな”と思える人って、ちょっと偉そうかもしれないですけど、なかなかないんです。この2組は本当に素晴らしいアーティスト。葉山くんにもお手伝いしてもらって、これからアルバムを作ります」と、NRSのプロジェクトリーダー&プロデューサーとしてバックアップしていくことを約束した一幕もあった。
「見上げてごらん夜の星を」「ムーンリバー」「ゴッドファーザー 〜愛のテーマ〜」が届けられた河村隆一のステージは、囁くように歌うウィスパーな発声から、身体全体を共鳴させて圧倒するパワフルなシャウト、倍音を含ませながら響かせるローボイスまで変幻自在。ピッチもリズムの正確さも、ダイナミクスも桁違い。声帯にできた静脈瘤除去手術のための充電期間を経て、これまでなかった歌唱法すら見出したかのようなボーカルは安定を見せ、圧巻の歌声を響かせてステージを後にした。
迎えたアンコールはOffshorによる「青の約束」から。続いては出演者全員がステージ上に集合。河村隆一から語られた「滑り出しとしてはいいんじゃないですか。これから2組にはいいアルバムを作ってもらいたいと思ってるし、ライヴも充実させていけたらいいなと思ってます」という言葉はショーケースの大成功を意味していた。また、「現在は、紛争も戦争もある。出口は見えてるとはいえコロナからもまだ完全に脱したわけではない。どこに向かっていったらいいんだろうという閉塞感がある時代に僕らは生きています。みなさんに少しでも元気というか、光というか、温もりというか。3人のボーカルでみなさんにお伝えできたらいいなと思っています」とラストナンバー「上を向いて歩こう」を全員でセッション。<Ryuichi Kawamura Presents NRS Showcase Live 2022 COTTON CLUB>は、新たな才能を称賛する大きな拍手が会場を支配して幕を閉じた。
取材・文◎梶原靖夫 (BARKS編集長)
撮影◎山下深礼
■<Ryuichi Kawamura Presents NRS Showcase Live 2022>06.24@COTTON CLUB セットリスト
01. このまま遠くまで
02. 色彩
03. We are meant to be together
【hkr】
01. Let It Be
02. Eleanor Rigby
03. My Song
【河村隆一】
01. 見上げてごらん夜の星を
02. ムーンリバー
03. ゴッドファーザー 〜愛のテーマ〜
▼encore
en1. 青の約束 (Offshor)
en2. 上を向いて歩こう(セッション)
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