【インタビュー】町あかり、4年ぶりのアルバム『総天然色痛快音楽』完成「音楽にアンテナを張ってない人に届くのが理想です」
■世の中を見て書く、それがヒットするってすごく素敵
──では平成生まれの町さんが、昭和歌謡を知ったきっかけは何だったんですか?
町あかり:子供時代は、リアルタイムでヒットしていた曲にも音楽自体にもあまり興味がなかったんです。自分は音楽とか好きじゃないんだなって小学生の頃は思っていたんですが、中学生になって、テレビのスペシャルライブみたいな番組でサザンオールスターズの「勝手にシンドバット」を聴いて、めちゃめちゃハマりました。サザンオールスターズも歴史が長いですから、昭和歌謡の一部と言ってもいいかなと私は思ってるんですけど。そこから、もしかすると昔のものを探ってみたら私の心にヒットするかもと思って、キャンディーズとか、そういうところからネットで調べ始めたんです。
──高校1年生でギャランティーク和恵さんにデモテープを送られたわけですから、わりとすぐ曲作りも始められたんですね。
町あかり:もともと絵を描くのが好きで、小学生の頃から絵本を作ったりするのが好きだったんですね。自分のオリジナルキャラクターを作って、登場人物みんなオリジナルで、画用紙を切ってまとめて冊子みたいにして、学校でみんなに見てもらったりしてたんです。
──小学生の頃から!
町あかり:はい。自分が作ったものを見て「面白い」とか「このキャラはこうだね」とか言ってもらうのがすごく好きだったから、音楽もその延長っていう感じでした。あまりこういうテーマで作ってないよなみたいなネタを探してきて、そこから自分で作った曲を「みんな聴いて」って。音楽が好きになった時点で、曲作ってみたら面白いかもなって自然と思うようになっていました。
──楽器は何かやっていたんですか?
町あかり:全然やってなかったんですが、鼻歌でも作れるしと思って(笑)。ギターは、コードを押さえられるようにちょっとだけ練習しました。それくらいでも曲は作れるから、デモテープ作って、それこそ和恵さんに送りつけたり(笑)。高校生の時は、いろんなレコード会社や個人のレーベルにも送ってましたね。
──ここまでご自身で曲作りをやってきて、何か変化のようなものは感じてますか?
町あかり:そんなに変わってないと思います。歌謡曲も掘れば掘るほど面白いものが出てくるし、いろんな交流の中で知る面白い曲も増える中で、ジャンルとか方向性はかなり多岐に渡ったかなとは思いますけど。
──今回のアルバム『総天然色痛快音楽』の楽曲も、ジャンルの幅広さに驚きました。
町あかり:いろんな曲が入っていて、すごくカラフルなアルバムになりました。これまでいっぱい書いてきた中から厳選した24曲なんですが、結果的には、ここ1年半以内に書いた曲が多くなりましたね。このご時世を感じられるような要素もあったりするかもしれませんが、いろんな立場のいろんな存在の人たちが出てくる曲がいっぱい入っています。例えば「医者に止められてます」がどこかの界隈でバズってるとか、この曲がなぜか2丁目で流行ってるとか、この曲が保育園で流行ってるとか、そういうチャンスを持ってる曲がいっぱい入っているアルバム。その中で「この曲、自分にフィットするな」みたいな曲があると嬉しいなと思っていて。きっと、あなたにも刺さる曲があるんじゃないかなって思っています。
──ここ1年半というと、楽曲制作はまさにコロナ禍ということですね。「動画投稿御殿」というパンクな曲もありますが、世の中の状況が滲み出ている歌詞も多いなと思いました。
町あかり:絶対に滲み出ていると思います。私が特に感じるのは「MINITSUMA」。寂しい思いしてたりする人いっぱいいるんじゃないかなって、自分も含めてですが、人ごとじゃないよなってことが結構あったからこそ出来た曲なんです。
──「Come Back To Me セロトニン」も、共感する人が多そうですよね。
町あかり:だと思います。これも今だから出来た曲ですね。
──大きな意味で言うと「地球のお背中流します」も、世界の現状が反映している歌詞かなと。
町あかり:本当に、コロナ前だったら生まれなかった曲だと思います。この曲、結構最後の方に作ったので本当に最近感じたことが滲み出た歌ですね。でも、それってすごく嬉しくて。歌謡曲もそうだと思うんですよ。阿久悠先生も新聞の記事をスクラップして、世の中の状況とか流行を見ながら(ピンクレディーの)「UFO」とかいろんな曲を書いて来られたそうなんですが、世の中を見て書く、それがヒットするってすごく素敵だと思うんですよね。自分もそうだけど、何年後かに聴いてその時代のことがわかったりするのはすごく素敵だと思うことのひとつなので、この曲も何十年後かに聴いた時「あぁ、あの時期っぽいね」みたいな感じになると面白いなと思うんですよね。歌として。
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