【インタビュー】町あかり、4年ぶりのアルバム『総天然色痛快音楽』完成「音楽にアンテナを張ってない人に届くのが理想です」

■私としては、誰にも理解されない突飛なものは違う

──このアルバムは「素敵なご時世」という曲で始まりますが、そういう意味でもこの“ご時世”という言葉が生きてきますね。

町あかり：そうですね。これはずっとそうかもしれませんが、“ご時世”って結構マイナスな感じの言い方で使うことが多いじゃないですか。でも、いい面もあるんじゃないかと思っていて。例えば多様性についてみんなで考えていこうよっていう雰囲気が盛り上がっていることも、昔はなかったすごくいいことですよね。いい面もいっぱいあるんだから、そこも見ていこうよって気持ちがちょっと込められていたりもします。でもほんと、ご時世っていう言葉いっぱい聞きましたよね。「こんなご時世だから、そのうちね」みたいな使い方。

──それを逆手に取った曲もありましたね（笑）。

町あかり：「いい加減気付けよ」ですね（笑）。これはかなり個人的な内容ですけど（笑）。

──町さんの曲はいわゆる「あるあるネタ」ではないのに、ものすごく共感できるんですよね。作詞する時のこだわりとか、言葉を発する時に大切にしていることはありますか？

町あかり：そう言ってもらえるとすごく嬉しいです。こういう歌、こういう言葉を使った歌、こういうテーマの歌ってよくあるよね、みたいなものを作っても意味ないよなと思っているので。さっきの絵本の話もそうですが、子供の頃からオリジナルのキャラクターを作って、オリジナルのお話で“自分ワールド”を作っていたように、こんな単語を使った曲って他にないよねとか、こんなテーマで書いた歌ってそういえばなかったよねみたいな曲が作りたいから「その切り口はなかったな」みたいなものを頑張って見つけてきて、テーマにしているんです。そこは得意なのかなとも思うし。

──なかったんだけど共感できる、というのがすごいところだなと思うんですよね。

町あかり：みんななんとなく考えているけど、言語化してないことって結構あるじゃないですか。そういうものを、考えていて見つけたりするとメモしますよね。めちゃめちゃ突飛なことをやればそれはそれで誰とも被らないかもしれないけど、私としては、誰にも理解されない突飛なものは違うなと思うんです。単純に「変わったもの」で終わっちゃうから。今は音楽が好きとか、面白いものが好きってアンテナを張ってくれている人が私の音楽を評価してくださっている状況だと思うんですけど、最終的には幼稚園や保育園のレクリエーションで流れてるとか、どこかの老人ホームでいいよねって言われてるとか、音楽に対してアンテナを張ってない人たちのところに届くことをすごく理想としているんです。だからそのバランスっていう部分を大切にしてるし、一番頑張っているところかもしれないですね。

──ちなみに、ものづくりとか表現するという点において、どなたか憧れの方はいらっしゃいますか？

町あかり：たまにそういう質問をいただくんですが、ミュージシャンの方にそういう感じがあまりないんです。たくさんいろんな曲を作られているという点では筒美京平先生を尊敬してますし、桑田佳祐さんも好きですけど、そっちよりも例えば、さかなクンの方にシンパシーを感じて憧れたりしてるんですよね。好きなものを突き詰めていて。あとはさくらももこさん。エッセーやアニメ、漫画とか大好きなんです。

──人間そのものが作品のようなお二方ですね。

町あかり：そういう方に、すごく憧れます。

──「町あかり」として今後どんなものが発信されるのか、ますます楽しみになってきました。今回のアルバムは24曲というボリューミーな内容になっていますが、作り終えてもなお、創作の意欲もアイデアも尽きないんでしょうね。

町あかり：そうですね。テーマは日々テレビを見ていても、ぼーっと本を読んでいても、散歩していてもいっぱい出てくるので、いっぱいメモしてます。今回はアレンジの面でサリー久保田さんや加納エミリさんともご一緒したんですけど、いろんな方にお願いをするということは、自分の中にはないものだったり、それ以上のものに発展させてもらえたりして面白いなと思いました。その分、今後は自分でもやってみたいなって、そういう気持ちにもさせてもらえた気がします。

──では最後になりますが、今後の夢や活動のビジョンを聞かせてください。

町あかり：とにかく1人でも多くの人に歌を聴いてもらいたいという夢があります。あとは今、配信で英語の歌詞の歌にもチャレンジしたりしているので、日本国内、日本語だけじゃなく、ワールドワイドにいろんな人との出会いがあるといいなと思っています。そこは身近な目標ですね。

取材・文：山田邦子

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