【ライブレポート】the GazettE、ファンと完成させるアルバム『MASS』

2021年5月26日に最新アルバム『MASS』をリリースし、さらにコロナ禍を受けて休止していたライブ活動を同年9月から再開させたthe GazettE。今年3月10日に国立代々木競技場 第一体育館で行われた20周年記念公演を経て、彼らが『MASS』を携えた全国ツアー＜the GazettE LIVE TOUR2022 -MASS- / PHASE 01-COUNT "DECEM"＞を5月13日にスタートさせた。

◆ライブ写真

休止開けのライブが東京、名古屋、大阪のみの公演だったこともあり、今回のツアーで3年（もしくはそれ以上の期間）ぶりにthe GazettEのライブを体感するファンは多いだろう。また、コロナ禍によりアルバムツアーを断念せざるを得なかったアーティストも多い中、タイミングの遅れなどに捉われることなく『MASS』をフォローするツアーを行うことを決意したthe GazettEには大きな拍手を贈りたい。


ツアー初日を飾るライブは5月13日に埼玉県の羽生市産業文化ホールで開催。当日は生憎の雨模様だったが会場は満席となり、ファンがthe GazettEを待ちわびていたことを感じさせる中でのライブとなった。そして、the GazettEは期待を裏切ることのない、素晴らしいライブで楽しませてくれた。

オープニングSEとして使用された「COUNT-10」が流れる中メンバー達がステージに姿を表し、ライブは『MASS』同様「BLIDING HOPE」で幕を開けて「ROLLIN’」に移る流れからスタート。鮮やかな光芒に彩られたステージにメンバー5人が並び立った姿に目を奪われずにいられないし、タイトさとうねりを併せ持った爆音も心地よさに溢れている。ファンも1曲目からヘッドバンギングや手拍子、ジャンプなど息の合ったリアクションを見せ、場内のボルテージは一気に高まった。


その後も勢いを保ったままラウドなサウンドとRUKI（Vo）のエモーショナルなボーカルの取り合わせ活かした「NOX」や狂騒感を放つ「HOLD」、パワフル＆キャッチーな「裏切る舌」などを相次いでプレイ。圧倒的なヘヴィネスと抒情性を巧みに融合させるthe GazettEならではのテイストにさらなる磨きがかかった『MASS』の収録曲のライブ映えは抜群で、強く心に響いてくる。そんな独自のエモーションを淀みなく表現する演奏力の高さもさすがの一言で、ツアー初日とは思えない鉄壁のアンサンブルやボーカルのピッチの良さ、秀でた表現力などが印象的だった。

ライブ中盤では陰鬱な雰囲気の「Bath Room」やダークなスローチューンの「濁」、翳りを帯びた「THE PALE」などが届けられた。こういったナンバーでは彼らの強靭な“惹き込み力”に加えて、スケールの大きさが光る。特に「THE PALE」はそれが顕著で、羽生市産業文化ホールは比較的コンパクトな会場だったが、広大な空間でthe GazettEのライブを観ているような感覚を味わうことができた。この辺りも彼らのライブが“非日常感の極致”と称される所以のひとつといえるだろう。


麗（G）と葵（G）が1曲通してアコースティックギターを奏でる「MOMENT」で、これまでとは一味異なる“染みるthe GazettE”を披露した後、RUKIのMCが入った。

「今日、初日なんですよ。ツアー初日っていうのも本当に久しぶりな感じだと思いません？　＜NINTH TOUR＞をやってから3年越しなんです。ホールツアーというのは本当に久しぶりで、やっとだなという感じがして感激しています。箱（ライブハウス）も、デカいところも好きだけど、こういうふうにみんなの顔が見えて、みんなが暴れているのを見れて最高だよ。明日もあるけど、今日上っ面のノリはやめてくださいね。みんなのパワーをこの目に焼きつけて帰るので、よろしくお願いします」

RUKIの言葉と、それに応えて客席から湧き起こる熱い拍手からthe GazettEとファンの双方が今回のツアーが始まったことを心の底から喜んでいることが強く伝わってきた。


高速で突進する「BARBARIAN」から始まったライブ後半では「FRENZY」や「TWO OF A KIND」「UGLY」といったハードチューンが畳みかけるように演奏された。ステージ上を行き来して、客席に煽りを入れながら情熱的な歌声を聴かせるRUKI。内面の感情を露わにした熱いステージングとフレキシブルなギタープレイのマッチングが印象的な麗。シックな雰囲気を漂わせながらソリッドなギター・ワークを展開する葵。ミステリアス＆アグレッシブなオーラを発する姿と重厚なベースサウンドで魅了するREITA（B）。ライブ終盤に入っても全くパワーダウンすることなくカロリーの高いテクニカルなドラミングを全力で叩く戒（D）。キャリアを重ねたミュージシャンならではの貫禄と、昔と変わることのない攻撃性を兼ね備えた現在の彼らは本当に魅力的な存在といえる。

気持ちを駆り立てられる瞬間の連続にファンのボルテージがさらに高まる中、本編の締め括りとして「LAST SONG」をプレイ。the GazettEとファンが放出する膨大なエネルギーが溶け合い、場内は怒涛の盛り上がりを見せた。


3年ぶりの全国ツアーを最良といえる形でスタートさせたthe GazettE。初日といえども非常に完成度の高いライブをしてみせたのはさすがといえる。20年にわたって様々な環境でライブを行ってきたバンドならではの底力が遺憾なく発揮されていることを、随所で感じることができた。

また、彼らは初日が良かったからといって慢心することなく、ツアーを通してストイックに磨きをかけていくバンドであり、RUKIがアンコールで語った「アルバムを作っても、それが完成形じゃねぇなと思う。お前らの暴れる姿や今は出せないけど、いつか出せるようになったときの大声、視線だったりといった1つ1つが『MASS』というアルバムに宿って、1つの完成形になる」という言葉も事実。その2つが相まって、今回のツアーのライブが本数を追うごとに一層魅力を増していくことは確実といえる。

それこそファイナルが圧巻のライブになることは間違いないので、大いに期待したい。

取材・文◎村上孝之
写真◎Keiko Tanabe