【インタビュー】新山詩織が語る、5年半ぶり作品『I’m Here』と再始動「素直な自分のまま歌っていけたら」
■とにかくたくさんライブをしていけたら
■回を重ねるごとに成長していけるはず
──「ミルクティー」も12月のライブで披露された曲ですが、こちらはオーガニックで温かい、メロウな曲になりましたね。
新山:「New」と「ミルクティー」はライブ前まで形がなかったので(笑)、ライブからアルバムに繋がった感じですね。もともと「ミルクティー」は制作時期がクリスマスに近かったから、温まる曲ができらいいなって作ったものでした。はじめこの曲を作るときに、ディレクターさんから「新山詩織ならではのラブソングを作ってみるのはどうか?」という提案があって。確かに今まであるようでなかったから、書いてみたいなというので始まって。
──そして出てきたのが、最初の“I love you”という言葉。
新山:メロディができてから歌詞を乗せたんですけど、その“I love you”もできたメロディを聴いているうちに自然と出てきたもので、バッチリ合ったのがこの言葉だったんです。そこからこの曲の歌詞はスラーっと一気に書けましたね。冬、路地裏で丸まっている猫を自分にたとえて書いてみた感じで(笑)。
──『I’m Here』=“ここにいるよ”というアルバムのタイトルにも通じる、とてもフレンドリーで寄り添うような曲になりました。
新山:そうですね。一対一というか。ファンの人に向けた気持ちもこもっていて、どんな時もあなたのそばに、耳元にちゃんといるよ、歌っているよということを歌詞に込めているので。リリースの時期は春で暖かくなっちゃうんですけど、冬の時期や、それこそ寒くなったときにふと思い出して聴いて、一息つけるようなそんな曲になってくれたらいいなって思います。
──ちなみに、最初に「ラブソングを」という提案があった時は、どう思ったんですか?
新山:「難しいです」って答えた記憶がありますね(笑)。でもラブソングだからと言って、恋とか愛とかだけじゃないよなと思って。単純に自分の家族や友だちとか、大好きな人たちのそばにずっといたいし、ずっといてほしいし。その気持ちを自分なりにラブソングという形にした曲ですね。
──きっと今だからこそ描ける心境というか、リラックスしている今だから見える景色や感じる温かさがあったんだろうなという感覚があります。
新山:そうですね。自分に余裕がないと、周りのちょっとした優しさだったり助けてくれている部分が、意外と見えなかったりするので。それがこの曲を書いていた時もそうだし、歌っている時も頭にぽんぽんと浮かんでくる感じがありましたね。
──そして驚きだったのが「帰り道」で。シューゲイザー的な轟音ギターサウンドのアレンジです。
新山:「帰り道」と「Do you love me?」は、管梓さん(For Tracy Hyde / AprilBlue)にアレンジしてもらったんですけど、もともと管さんがシューゲイザーに詳しいというか、バンドのメンバーの方でもあるので。この「帰り道」は活動休止する前、スタッフさんやマネジャーさんに「一旦、音楽から離れたいです」という思いを伝えた日の帰りにできた曲だったんです。その時の複雑な気持ちだったり、自分なりの覚悟だったり、そういう言葉になかなか表せない部分を管さんのアレンジで表現してもらえたなっていうのはありました。
──こんな轟音になるくらいの、いろんな感情がない交ぜだったんですね。
新山:自分の思いを伝えたからには、これから自分でしっかり歩いていかなきゃっていうのと、どれだけの人に見守られながら支えられながら、やってきていたんだろうっていう──それは決して後悔ではないんですけど、自ら離れるという部分で本当に言葉では表せないような感じがあって。一言一言、できるなら言いたくないけど、言わないと伝わらないことっていろんな場面であると思うんです。その時は、帰りの電車の中で携帯のメモにバーっと書いて。その時の自分の感情がそのまま、かなりリアルに入っていると思います。
──そのリアルで赤裸々な心情が曲になって、その思いを聴かれる怖さっていうのはなかったですか?
新山:最初は、誰かに聴いてもらうという考えがなかったと思います。自分で作って自分で聴いて、ひとつの形としてここに置いておこう、くらいの感じで。でも今回アルバムを作るにあたって、いろんなデモを聴き直した時に、やっぱりこの曲は出したいな、出したほうがいいかもしれないって。すごく大事な1曲になりました。
──そうした大事な1曲として、アレンジを管さんにお願いしようと思ったのは?
新山:いろんな繋がりが繋がってという感じで。一度ライブを見に行かせていただいたんですけど、その時、管さんがギターを弾いている姿とか、思い切りのよさがカッコよくて。あの音の感じを自分の曲に落とし込んだらどうなるんだろう?っていう興味もすごくあったので、お願いしたんです。ある程度曲が決まって、どの曲をアレンジしてもらおうか?となった時に、「帰り道」が一番に出てきて。実際、アレンジされて戻ってきた時は、こんなふうになるんだ!?っていう。自分でもデモを作っていて、ドラム、ベース、アコギ、エレキを入れて、もっとテンポもゆっくりで、淡々とした曲だったんですけど、それが見事に生まれ変わりました。絶対に自分では出せないようなサウンドで今回歌えたのが、すごく新鮮で。
──このサウンドとのマッチングは考えたこともなかったし、意外でした。でもすごく似合うんだなって。
新山:ありがとうございます。私はもともとシューゲイザー──マイブラとかオルタナ系の音楽も好きで聴いていたんですけど、実際にいざ自分が歌うってなると、どうなるんだろう?っていうのはあったんです。だけど管さんは、自分の声を大事にしてアレンジを作ってくださったので。いい部分を消さずに、ちゃんと真ん中に歌があって、音で周りからしっかり包み込んでくれているような感じのアレンジにしてくださって。感謝しかないですね。
──こういう曲ができたことでまた、次の新しい曲へのヒントにもなりそうですね。
新山:もっとエレキをガンガンに鳴らして作ってみてもいいんだなっていうのはありました。やっぱりひとりで作っているとアコースティックの音が基本になってしまって。似たり寄ったりになってしまうようなところもあったんです。だけど、これくらい弾き鳴らす曲も、今後自分で作りたいなっていうのはありますね。
──「Do you love me?」も同じく管さんとのアレンジですね。こちらはとてもミニマルな音作りになっています。
新山:この曲はもともとデモがあって、それも「帰り道」と同じでもうちょっとゆっくりしていたんです。そのデモの雰囲気はなるべく残したいというリクエストを私から出していたので、そこを軸にアレンジしてくださった感じですね。ちょっと浮遊感のある感じになりました。ボーカルのリバーブは深めにかけていて、部屋の中でギターを爪弾いているというか。素朴な感じはそのまま出したかったので、あまり音を足したりせず、シンプルにできたらいいなと思っていました。
──イメージするのは、すごく広い空間にひとりでぽつんとギターを弾いている感じで。でも決して寂しくはなくて、どこか懐かしいところから静かに問いかけて、呼びかけている。そんな感覚があります。
新山:周りには誰もいない感じですね。コロナ禍になってからできた曲でもあるので、いろんな人と環境的な距離感というのができてしまった。会いたいけど会えない、連絡をするのもどうなんだろう?とか考えちゃうというか。曲としては、恋愛的ではあるけれど、そこだけじゃなくて、会社の同僚だったり友だちだったり、家族だったり、身近な人に向けて歌っている曲みたいな感じですね。一番身近な曲になっているんじゃないかなって思います。曲自体もそんなに長くなくて、ひとまとまりになっている感じなので、先行配信楽曲として最初にリリースをしたんですけど。自分が一番好きな曲なので、響いてくれたら嬉しいですね。
──それぞれの曲で、今の新山さんの音楽というものがナチュラルに、温かにパッケージできたというミニアルバムですね。
新山:そうですね。6曲、自分が最初に作っていたデモからそのまま形にできたような感じで。そこにバンドメンバーとか、管さんのアレンジで色をつけてもらって。淡々と内にこもっていたものが開けた感じになれた。今、世の中が大変だからこそ、聴いた時に一息ついてもらえたらいいなというか。これから新生活をスタートする人もたくさんいると思うので。そういう人たちに向けて、頑張るぞっていうきっかけにこの1枚がなってくれたらいいなと思います。
──こうしてセルフプロデュースで一枚作品を作って、見えてきたこの先のこともありますか。
新山:この先は、今までどおり曲は作りながらも、とにかくライブをたくさんしていけたらいいなと思っています。それこそアコースティックライブとか、バンドでのライブとか。4月のツアーは東名阪の3ヵ所で、今後はいろんな場所に足を運んで歌ってという時間を作れたらいいなと思っています。昨年12月にライブをやって、そうだこの感じだ!という感覚が蘇ってきて、4月からツアーが始まる。回数を重ねるごとに、また自分も成長していけるはず。いろんな場所に行って、歌って、曲も作って──イメージ的にはあまり決め込みすぎずに、その時の素直な自分のまま歌っていけたらいいのかなって思っています。
取材・文◎吉羽さおり
■4thミニアルバム『I’m Here』
JBCZ-9131 ¥3,600(税抜 / 特典DVD付)
特典DVD:昨年12月に行われた再始動後初の貴重なライブからの1曲、レコーディング時のドキュメンタリー映像、撮り下ろしのインタビュー&スタジオ弾き語りライブ等を収録予定。
▼CD収録曲
1. Smile for you
2. New
3. ミルクティー
4. 帰り道
5. ワンルーム
6. Do you love me?
全作詞作曲:新山詩織
■ミニアルバム発売記念ツアー<新山詩織 live 2022 ~New~>
4月23日(土) 大阪・ESAKA MUSE
4月24日(日) 愛知・ボトムラインCafe
▼サポートメンバー
小野塚晃(Key)
森光奏太(B)
上原俊亮(Dr)
イシイトモキ(G)
■関連リンク
◆新山詩織 オフィシャルTwitter
◆新山詩織 オフィシャルInstagram
◆新山詩織 オフィシャルYouTubeチャンネル
◆新山詩織 オフィシャルFCサイト
◆インタビュー【2】へ戻る
◆インタビュー【1】へ戻る
この記事の関連情報
【対談】新山詩織 × Ran、共鳴と刺激を返信し合った2つのコラボ作完成「今の自分から昔の自分に向けて」
【ライブレポート】新山詩織、恒例のデビュー記念日公演に未来「何がどうあれ前に進んでいかなきゃいけない」
新山詩織 × Maica_n、3ヵ所6公演のインストアツアー<二人は何者?>を8月開催
【ライブレポート】新山詩織、ツアー<何者 ~十年十色~>ファイナルで「皆さんの声、レスポンスが欲しい」
【インタビュー】新山詩織、10周年記念アルバムに強い意志「自分との戦いというか、吹っ切れた感もあります」
新山詩織、10周年記念アルバム『何者 〜十年十色〜』を7月発売+東名阪ツアー開催も
ビーイング所属アーティストを中心としたイベント<B All Light>始動、新山詩織、山崎あおい、Maica_n、Ranが出演
【ライブレポート】新山詩織、デビュー10周年記念公演で「感謝しきれないくらいのありがとう」
【レポート】新山詩織、ツアーファイナルで10周年記念ライブ<My Roots>開催を発表