【インタビュー】新山詩織が語る、5年半ぶり作品『I’m Here』と再始動「素直な自分のまま歌っていけたら」

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■休止前と、休止中と、再始動してから
■3つの場所からの曲が入っているんです

──再び音楽をやろうという、きっかけになったことはありましたか?

新山:また学校の話になってしまうんですが、学校で音楽に触れる機会もあって。自分から話さなくても、クラスメイトに音楽好きな子がたくさんいたんです。家族や友だちもそうですけど、新しく出会う人がみんな音楽が好きな人ばかりで(笑)。自分がちょっと距離を置いたとしても、音楽好きな人が集まってくるというか、音楽好きな人がそばにいて。そこにまた私も引っ張られてという状況がずっとあったんですね。きっとこれは、自分が音楽が好きだから同じような気持ちの人たちと集まっているんだな、一緒にいるんだなと、ふと思って。そこから、作っていた曲も誰かに聴いてもらえたらいいよな、嬉しいよなっていうのが沸々と湧き出てきて。そのタイミングで、スタッフさんと久しぶりに会う機会があって、いろいろお話をして。「また活動再開するのはどうか」というお話をいただいたんです。

──それはいつぐらいの話ですか?

新山:2021年2月とか3月あたりですね。

──2021年4月にInstagramで新曲「Smile for you」のアカペラ動画が公開されて、再始動が発表されましたが、その直前くらいの話ですね。

新山:アカペラの動画が4月に上がったので。その2ヵ月前くらいから話をしていたんだと思います。わりとすぐでしたね(笑)。

──もう一回、自分の名前で音楽活動をしていくということで、何かこれまでとの違いはありますか?

新山:再始動前から知ってくれていた方ももちろんいるけれど、今回の再始動で初めて知る方もたくさんいると思うので。以前の新山詩織と、再始動した新山詩織を、どういうふうに見せていけたらいいんだろうなとか、まだ試行錯誤しているというか。今回はそのなかでの1作目になるので。この作品を通して、聴いてくれた人たちから、いい部分だったり悪い部分だったりをいろいろ吸収して、また新しい形にしていけたらいいなという気持ちでいます。


──その再始動の1作目となるミニアルバム『I’m Here』はセルフプロデュース作品となって。これまでの歌を大事にしながらも、新鮮な輝きに満ちた6曲が収録されました。どういった作品にしたいと思っていましたか?

新山:最初は、活動休止中に溜めていた曲を形にできたらいいなというところから始まったんですけど。新しい環境に自分からいったということもあったので、その時々での出来事や経験を旅に喩えて一枚にしてみるのはどうか?というところから始まりました。その結果、活動休止中だけじゃなくて、休止する前と、休止中と、再始動してからという3つの場所からの曲が入っているんです。

──休止前の曲というと、どのあたりですか?

新山:「ワンルーム」「Smile for you」は以前からあった曲なんです。「ワンルーム」は20歳になってひとり暮らしを始めた時にできた曲で、弾き語りで録音していたデモだけがあったんです。やっと今回形にして、出すときがきたんだなって。

──「ワンルーム」は弾き語りだけでもドラマティックになりそうな曲だと思いますが、アコギとともにメロディと呼応するように入っているエレキギターがとてもいいですね。アレンジとしてはどう考えていきましたか?

新山:実はこのエレキを弾いてくれたのはディレクターさんなんです。最初はギターじゃなくてピアノとアコギでやるのはどうだろう?って話していたんですけど、再始動1枚目となるし、新しい形でやってみるのはどうか?ということでアコギとエレキのギター2本での形になったんです。これはやっていて自分でも新鮮でした。今回のエレキは、私のリクエストでギブソンのES-335というスモーキーな音の出るセミアコを使ってもらったんです。あのギターの音がすごく大好きで。「ワンルーム」の小さな部屋の中で弾いている感じというイメージを、ES-335が出してくれるんじゃないかなと思って。

──温かいけれど、どこか切なさも感じるようなサウンド空間になっていますね。アルバム全体としても、コーラスなどにさりげないディテールもたくさんあって、ミニマルな音だけど芳醇です。そのなかでも「Smile for you」は、シンプルでとても強い曲になりました。こちらも以前からあった曲なんですね。

新山:「Smile for you」は歌詞だけずっと手元にあって。そこから以前の活動中にアカペラでメロディをつけていて、それだけ録っておいた感じだったんです。再始動するとなった時に、きっかけとなるような曲を作ったりはしていたんですけど。この「Smile for you」をスタッフさんに聴いてもらったら、「これがいいんじゃないか」ということで、最初に出すことになりました。これもギターとか何か音を足したほうがいいのかなって話をしていたんですけど、元のアカペラの感じに今まであったようでなかった、新しさがあったので。そこを残しつつアレンジしようという。ピアノと歌だけという編成でなるべく音数を減らした曲ですね。

──レコーディングでは、ピアノと一緒に歌も録っている感じですかね。このピアノと歌との呼吸感が臨場感があって、美しい1曲です。

新山:和久井(沙良)さんのピアノ演奏を前に私も一緒に歌うという、セッションのような感じでレコーディングをしたので、すごい緊張感があったんですけど(笑)。和久井さんのピアノが本当にすごくて──「すごい」しか言ってないくらいだったんですけど(笑)。和久井さんは全身を使って鍵盤を弾かれる方なので、それを目の前にして、歌っていても思わずピアノを聴き入っちゃうというか。一回だけレコーディングの前にプリプロというか、どんな感じがいいかなっていう話も兼ねて音合わせをしたんですけど。2、3回目くらいで、こんな感じどうかなって言ったのがもうほぼ形になっていて。それをそのまま当日レコーディングするという感じで、ふたりでせーのでスタートした感じでした。


──「Smile for you」は友人のことを歌った曲だということですが、とてもシンプルでストレートだからこそ、きっと聴いている人が自分にとって大事な人やものや関係性など、いろんなイメージを広げられる曲かなと思います。

新山:幼稚園からの親友がいて、その親友に向けて書いた歌詞だったんですけど。今改めて自分で聴くと、まさに自分が音楽に対して思っていることとか、そういう気持ちにもなるなって思いましたね。

──続いての「New」は、北欧ポップスのようなキラキラ感があります。

新山:この曲はわりと制作に時間がかかっていて、やっとできた1曲なんです。再始動して初めて制作に入ったのが、この曲で。一緒に制作したスタッフさんふたりと作っていたんですけど。最初はピアノとメロディを考えながらできた曲なんです。再始動して初めての曲ということで、とにかく新しい感じを込められたらいいなというところから始まって。それが、ランニングをしているときの自分と繋がった。走っているときのあの感じをそのまま曲にできたらいいなっていうのもあって。タイトル通りとにかく新しく、でも変に着飾ったりせずにシンプルにという感じでしたね。

──この「New」も2021年12月のライブで披露していましたね。

新山:最初に披露したのが12月のライブだったんですけど。それまでちゃんとした形が定まっていなくて。それでもライブでひとつの形としてみんなに披露したという感じだったので。いざアルバムに収録するとなった時に、どんな形がいいんだろう?って話し合った結果、やっぱりライブの時のあの疾走感というか、タンタンタンと走っている感じをそのまま入れたいなって。ライブのメンバープラス、初めましてだったんですが、パーカッションの山下あすかさんに参加していただきました。

──その疾走感がドラムじゃなくてパーカッションで、というのが面白いですね。

新山:パーカッションの音を間近で聴くことがこれまであまりなかったので、レコーディングがすごく楽しかったですね。ビートもスネアとかじゃなくて、バスドラだけっていう。あとは細かい音がたくさん入っていて。風じゃないですけど、自然な音みたいなものを上手に入れてくださって。外を走っている時の自分が見ている景色というか、空気感がそのまま形になったんじゃないかなって思います。

──新しいものを込められたらということですが、歌詞についてはどうですか?

新山:歌詞はギリギリまで書けなかったんです。メロディはできたものの、本当にシンプルなメロディになったので。言葉をはめてもはめても、なかなかうまくはまらなくて。夜な夜な、ひとりでああだこうだとやりながら考えていました。結局たどり着いたのは、シンプルな、単純な言葉で。最初はこんなに単純な言葉でいいのか?って、自分で自分に心配になっちゃって書き換えたりもしたんですけど。やっぱりこれでいいのかなというところに行き着いて。思いのままサーっと書いて歌ってみたら、いちばんメロディに合ったのがこの歌詞だったんです。

──素直な気持ちがいちばんピタッとはまるものなんですね。

新山:そうですね。変に考えすぎたりとか、こうしたらもっとよく聞こえるんじゃないかとか、多分いらない考えを消したほうが、素直な言葉が出てくるんだなっていうのは、この曲の歌詞を書いていたときに思いましたね。

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